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雑記ノート


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2015.11.23 360版"BioShock"

"SOMA"のレビューを書いた際に"BioShock"の話題を出しましたが、肝心の"BioShock"のレビューが雑記に無かったので掲載することに。
 このレビューは2008年に書いたもので、当時このサイトにあった「ゲームれびゅ」のコーナーに掲載したもの。
 改めて思い返すと、"SOMA"に欲しかったのは、このゲームにある演出の見事さだったのですよね。まあ、開発メーカーとしての規模が違いすぎるので、単純に比較するのもかわいそうかもしれませんけど、後発なんだから頑張って欲しいという気もする。


『バイオショック』は、海底に作られた都市「ラプチャー」を舞台に、遺伝子操作の副作用で精神異常を来した住人を倒しながら探索を進める、一人称視点のアクションアドベンチャー。
 元々はアメリカの2K GAMESがパソコン用に開発したソフト。本作はXbox360版をスパイクがローカライズして発売している。

 言語は、日本語字幕のオリジナル音声と、日本語吹き替えの二種類が選べる(註・Steam版は日本語なし。日本語字幕MODはあるらしい)。吹き替えは相当気を遣って行われているようで、比べてみても雰囲気を損なうような感じはなかった。お好みで選べばいいが、ラプチャー内で流れている放送など、細かいセリフには字幕が出ないので、英語が聞き取れない人は、初回プレイは日本語吹き替えでやるといいだろう。

 1960年というレトロな時代設定と、海底都市というファンタジックな設定が奇妙に混ざり合い、独特の空間を作り出しているのが特徴。ホラーっぽい演出も多々あるが、敵の多くは大声でわけのわからないことを呟きながら徘徊しているため突然襲われる恐怖はあまりなく、むしろ意外とコミカルだったりする。

 ゲーム内容は、洋ゲーではおなじみのオウンビュー・アクションアドベンチャー。荒廃した海底都市を探索する。
 この手のダンジョン探索型ゲームにしては珍しくお金の概念があって、自販機で回復アイテムや弾薬を購入することができる。また、ほとんどの場所には後で戻ることが可能。つまり、アイテムが枯渇して詰むこともなく、取り忘れたアイテムを取り直すため、最初からやり直さなければならないことも非常に少ない。つまり、場所が限定されたアクションRPGのような感じのゲームである。
 武器は接近武器のレンチ、銃器の他、EVE(このゲームでの魔法力)を消費して「プラスミド」という超能力を操ることができる。
 プラスミドは、たとえば水に電撃を放てば水に浸かっている敵を全員感電死させることができたり、油が流れ出ているところに火を放ったりといった応用が可能。時にはそういった応用的使用法が、ゲーム進行上必要になってくる場合もある。

 操作系統に大きな問題はないが、EVE回復とハッキングが同じボタンのため、たまに誤操作して無駄にEVE回復アイテムを使ってしまうことがあるのが不満点ではある。慣れれば問題ないのだが、慣れた頃にはお金が持ちきれないほどあって、もはや回復アイテムをケチる必要がないという(笑)
 銃器の照準が合わせにくいのも難点ではあるが、接近武器のレンチ、照準をきっちり合わせる必要のないグレネード、ショットガンなど、使い勝手のいい武器が多くあるので、それほど問題にはならない。

 難易度は、死んでも蘇生槽からすぐさま復活するので絶対詰まない。あまり優雅とは言えないが、どんな強敵でも殴っては殺されを繰り返すことで、弾薬やアイテムを消費せずに倒すことが可能。この手のゲームが下手でも安心してプレイできるようになっている。蘇生槽の使用はコンフィグでON/OFFの切り替えが可能なので、ぬるいと思うならOFFにするといい。なお、蘇生槽を使用することによるペナルティはない(アメリカ版では、ダウンロードコンテンツを追加することにより、難易度ハード、蘇生槽不使用で実績が付くらしい)。
 蘇生槽のことを考慮しない場合、序盤は様々なものが不足しているためそれなりに難しめだが、武器、金、超能力、調査(このゲームではカメラで撮影することで敵を調査でき、それによって新たな能力を獲得したり、敵に与えるダメージを大きくしたりできる。一種のレベルアップ)が整ってくるに従って、ずいぶん楽になる。序盤を丁寧に進めていけば、中盤頃にはほぼ危険な状態に陥ることが無くなる。

 ストーリーは一本道(エンディングは進め方によって数種類あるらしい)。プレーヤーが選択する余地はあまりない上、それほど寄り道できる要素もなく、やり込み要素もあまりないので、初回プレイで丁寧に探索してしまうと、もうやることがなくなってしまう。つまり、純粋にゲームとして楽しめる要素は少ない。
 むしろこれは純粋なゲームではなく、映画の世界を体験するようなゲームだと言える。シームレスに進行するストーリー、壁に書かれた文字、館内放送、徘徊する敵のセリフなど、様々な形でこの世界の情報の断片を伝えてくれる情報密度の濃さ、ストーリー上違和感がなく、かつ難易度を抑えてストレス無くゲーム進行ができるように配慮されたシステム周りと、あらゆる点が海底都市ラプチャーの世界にどっぷり浸れるように作られているのがわかる。

 その他、注目すべき点はローディングの少なさ。マップが入れ替わる大きな場所移動をする際にそこそこ長いローディングが入るのだが、それ以外では一切ロードによるタイムラグが起きないようになっている。イベント発生時にもロード硬直なし。また、途中にカメラ切り替わりやムービーの挿入もなし(テレビ画面に映像が映されたり、というのはある。わざと見ないというあまのじゃくプレイも可)。全てが一人称視点の通常画面で進行する。プレイしている最中は当たり前のように感じるが、改めて振り返ると何気によくできた仕様である。こういった配慮は嬉しいところ。


 純粋なゲームとして考えると少し物足りない感はあるが、ストーリーや映像、音楽といったものを総合的に楽しむ「映画的ゲーム」としては非常に優れた作品。
 画期的だと謳っているわけでもなく、派手な要素は何もないが、かつての『Dの食卓』や、あるいは近年の『ファイナル・ファンタジー』シリーズ等が目指したインタラクティブ・ムービー型の、ひとつの完成形ではないだろうか。

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2015.11.23 Steam版"SOMA"

[2018.1.4 追記]
 去年の暮れに、"SOMA"にセーフモードが追加されました。敵が直接的な攻撃を仕掛けてこなくなるモードです。怖がらせはするのですが、ぶん殴ってきたりはしない。
 敵の存在はこのゲームにとっては鬱陶しいだけで、かえってホラー要素を削ぎ、ゲームのテンポを悪くしていました。そのため、非公式の「敵が襲ってこなくなるMOD」も作られたようですが、ついに公式でも似たようなモードが追加されたわけです。

 現在、セーフモードの追加されたバージョンに日本語化MODは対応しておらず、「ノーマルモード」と「セーフモード」の選択画面で文字が表示されません。どっちを選んだのかさっぱりわからなくなる。
 対応策としては、日本語化MODのconfig/base-english.langをメモ帳で開き、

<Entry Name="Back">[u25147] [u12427]</Entry>

 の行の後ろに以下を追加して保存します。

<Entry Name="GameMode">GAME MODE:</Entry>
<Entry Name="NormalMode">NORMAL</Entry>
<Entry Name="ExplorationMode">SAFE</Entry>
<Entry Name="StartGame">START GAME</Entry>

 というわけで、セーフモードでプレイしてみたのですが、敵が攻撃してこなくなると怖くなくなるんじゃないかと思えますけど、実際はそんなことはなく、むしろホラー度が増しているように感じました。
 というのは、人は生死がかかっていると、生死に関わる重要な部分に意識が集中するものなのですよね。たとえば敵が近くにいるときに出るノイズにしても、以前だと「敵が近くにいるという警報」であり「操作を邪魔する鬱陶しいもの」でしかありませんでした。しかし、死なないとなると、ノイズはかえって怖くなります。

 これからこのゲームをプレイするなら、私はセーフモードでプレイするのをすすめます。ヌルゲーモードでなんかプレイしたくないぜと考える人もいるでしょうけど、敵に襲われるという中途半端なゲーム性なんかない方が、このゲームはずっと面白くなりますし、ホラーとしても上質になります。
 あと、従来だと、怪物がいてろくに探索できない箇所もあったので、そういう場所で、怪物と一緒にゆっくり滞在するのもオツというものです。……正直、いくら無害とはいえ、怪物がうろつく場所に長居するのは精神的ダメージがでかいです。

 なお、以下の文章はセーフモードのない時のものなので、現バージョンとは多少話にズレがあります。
[追記終わり]

 Steam版"SOMA"をプレイ。

 このゲームを開発したFrictional Gamesはホラーゲーを手掛けているメーカーで、2010年発売の"Amnesia: The Dark Descent"はクソ怖いと評判です。そして、ホラーゲーが苦手な私は、本来ならこのメーカーと関わることは無かったはずです。
 しかし、"The Talos Principle"をプレイした人にとって、このタイトル名は気になるんですよね(作中に"SOMA"という単語が登場する)。
 調べてみると、そんなに怖くないということだったので、プレイすることに。

 ローカライズについては、公式には日本語音声、日本語字幕はありませんが、日本語字幕MODが出回っています。

 とりあえず最初に懸念していた、怖すぎるんじゃないかという点については杞憂でした。"BioShock"とか"Fallout 3"がプレイできるなら問題ないレベルです。逆に、怖さを期待してプレイするのは止した方がいいでしょう。怖くないわけじゃないですけど、"Fallout 3"で低レベル時にデスクローに追っかけられる類の怖さで、ホラー特有の怖さはあまりないです。
 このゲームはホラーというよりは、グロテスクと表現した方が適切な気がします。日本語で言う「グロ」の意味ではなく、「奇怪」などと訳される意味でのグロテスクです。

 ゲームとしては、謎の施設から脱出するという、古典的な脱出ゲームの一種だと考えていいでしょう。脱出ゲームとしての難易度は低め。ときおり、うろついている敵を回避したり、逃げながら進む必要がありますが、アクションに要する難易度も低いです。
 ゲームボリュームは7時間前後。リプレイ性はないと考えていいです。

 シナリオについては、ネタバレしないと何も言えないので詳しくは後述しますが、私のように"The Talos Principle"との関連を期待して、このゲームをプレイしようかどうか考えている人がいるのであれば、期待しない方がいいと言っておきます。

 感想としては、このゲームは重大な欠点があるわけではなく、無難に良くできてはいるのですが、特に見どころもない、という印象でした。うまくやれば素晴らしいゲームになりそうな素材だと思うのですが、展開や演出がイマイチなせいで、うまく活かせていないのです。

 先が読めない展開のおかげで、中盤までは緊張感やスリルがあって面白く感じるのですけど、中盤でこの作品の筋書きがほぼ読めてしまうネタバレがあって、それ以降は似たような展開や冗長な展開が続くためにダレてきます。うっとうしいのが、主人公はネタバレについてはっきり説明を受けたにも関わらず、なぜか理解しないんですよね(笑) で、いちいちぎゃーぎゃー言うのですけど、お前、それさっき説明受けたじゃんかと。主人公がバカなせいで、中盤以降、ストーリーの展開が止まってしまい、非常につまらなくなります。

 怪物については、特に凝った演出があるわけではなく、特定の地点に行くとうろついているだけだったりします。基本的にはステルスゲーの警備員みたいなもの。警備をかいくぐるという意味での怖さやスリルはありますけど、ホラーらしい怖さは特にないです。
 このゲームの特徴的な演出として、怪物が近くにいるとノイズが走るのですが、目障りなだけであんまり怖い演出とは言えません。
 あと、わりと致命的なのが、怪物と初お目見えするとき、イベントで怪物に殴り倒されること。人間は未知の物事の方がより恐怖に感じるもので、怪物に捕まったら何をされるかわからないから怖いわけです。なのに、初っぱなから殴り倒されたら、それ以後耐性がついて、あまり怖くなくなるんですよね([2018.1.8 追記]これはどうやら強制イベントではなく、単に私がマヌケだから出会い頭にぶん殴られただけだったらしい)。
 なお、怪物にはそれぞれ設定があるみたいなのですが、実際にゲームプレイしていると、そんなことはほとんどわからなくて、どの怪物もプレーヤーにとっては「怪物」でしかありません。あの辺の演出は、もっと改良の余地があったはずです。

 脱出ゲームとしての演出は、一部の謎解きはゲーム内容とも合致していて面白いのですけど、大半は、いちいち壊れている機械を修理したり、乗り物に乗ったら故障したりというワンパターンで、やっていてうんざりします。「また機械が壊れているのかよ。また修理かよ。もういいよ」という気分になってくる。
 あと、カギを入手したりしたときに「これであの開かない扉を開けられるかも」といった高揚感がなくて、要するに探索して楽しいレベルデザインじゃないのも残念なところです。ゲームクリアのために通りがかるだけ。せっかく謎の研究所をうろつくんだから、ゲーム本編と関係ない部屋とかも探索する喜びとかがあってもいいと思うのですけど、そういう遊びが少なくて、やっていて味気ないものがあります。
 また、このゲームの特徴として、海底を歩いて移動するシーンがあるのですが、超絶につまらんです。最初のひとつふたつくらいは、シナリオとの絡みで必然性がありますし、いいんですけど、無駄に頻繁に歩かされて、しかも無駄に長いんですよね。"BioShock"くらい水表現に独特のこだわりがあるとかなら楽しかったかもしれませんけど、別にそういうこともないですし。

 ……とまあ、いろいろ文句はあるのですが、2980円のゲームの内容としては、悪くないとは思います。価格が上がってもいいから、もっと丁寧に作って欲しかったとは思うんですけどね。
 ただ、私がこのゲームをイマイチだと感じたのは、"The Talos Principle"を先にプレイしたからかもしれません。こちらが先だったらもっとストーリーを楽しめたのかも。ただ、そもそもアレをプレイしたからこそ"SOMA"にも興味を持ったわけなのですが。


 ……以下はネタバレありの話。


 私がこのゲームで最も優れていると思ったアイデアは、脳スキャンを受けたら謎の施設にいた、という、序盤の展開です。最初、プレーヤーはこれが現実か、仮想現実なのかがわからないんですよね。まあ、プレーヤーにとってはどっちにしてもゲームの中の出来事に過ぎないとは言えるのですけど、それでも、主人公の置かれている状況をリアルと取るかシミュレーションと取るかによって、プレイ感に差が出てくるところではあります。
 このシチュエーションで最後まで引っ張った方がこのゲームはより興味深かったと私は思うのですけど、わりと早い段階でネタバレがあり、すごく残念な気持ちになりました。
 たとえば、自分のコピーを作ってコピー元を置き去りにする(殺す)イベントにしても、あれがリアルな出来事かシミュレーションの中の出来事か、わからない状況で行う方が良かったと思うのです。そうすれば、プレーヤーによっては「どうせ仮想現実の中の出来事だし、置き去りにしちゃえ/殺しちゃえ」とか安易な選択をして、後ですんごい後味の悪さを覚えるとか、そういうことが起こりえたと思うんですよね。
 つまり、このゲームは、プレーヤーに「悪事」を行わせる展開になっていて、それがこのゲームの「ホラー」たるゆえんのひとつとなっているわけですけど、仮想現実だと錯覚させておけば、プレーヤーは気軽にその悪を実行できるはずなのです。で、あとで現実でした、とバラした方が、ダメージが大きいんじゃないかと私は思うわけです。

 また、このゲームの最大の問題点は、WAUが何なのかをゲーム中でもっとわかりやすく演出しなかったことだと思います。
 WAUは人類を保全するためのシステムで、ストラクチャーゲルを介して人間やロボットを自身のネットワークに接続して管理するわけですけど、つまり、WAUは別に人間をゾンビ化したいとか、殺したいわけじゃなくて、あれはあれで人間を救おうとしているのですよね。
 シータでWAUの怪物にはり倒されてぐちゃぐちゃされるイベントがありましたけど、あの時わりと幸せな幻覚を見てましたよね。つまりWAUに保全されると、見た目は酷いことになりますけど、本人はわりと幸せなわけです。
 つまり、位置付けとしては"Portal"のGLaDOSや"The Talos Principle"のエロヒム、あるいはこの手の元祖である『2001年宇宙の旅』のHAL 9000に近い存在で、このゲームのシナリオにとって、かなり重要なキャラクターとなりうるはずなのです。
 しかし、その辺の演出をうまく処理できていないため、たいがいのプレーヤーは、プレイしていてあれが何だかわからないはずなんですよね。私もプレイ中は全くわけがわからず、ただ単に敵という認識しか無かったですし。
 WAUが何なのか、ということをプレーヤーがもっとちゃんと理解できるようにシナリオを練っておけば、道中でWAUに繋がれたロボットや人間を殺すのがいいのかどうか、WAUを殺すべきかどうか、Arkが本当に人間を救う唯一の道なのかとか、いろいろ考える幅が増えて、このゲームが提示するテーマもより深い物になったはずですし、WAUの怪物との対峙も、単なる鬼ごっこに留まらないものになったと思うのですけど、せっかく面白い設定を作っていながら、そこを全然生かしていないんですよね。そこがとても残念です。WAU側に付くルートとかがあっても良かった気がするんですけどね。

 また、もしホラーということをむやみに意識せず、設定を重視してゲームデザインを考えるなら、WAUの怪物と接触したときに幸せなノイズが入るようにして、ゲームオーバー時にはトロントに戻れるとか、そういう演出にした方が良かったと思います。
 ゲームオーバー時には例の脳スキャンの部屋に戻れて、夢だったのか、みたいな感じになり、そのまま研究所を出たらゲームオーバー(バッド? エンディング)、再び脳スキャンを受けたらゲーム再開とか。
 そうすると怖くなくなってしまいますし、むしろプレーヤーによってはわざとWAUに捕まりたくなったりするでしょうけど(それはそれでいいと思うんですが。キモい敵に殺されたくなるゲームなんて変態的で斬新ではある)、このゲームはすでにホラーじゃないですし、むしろ、ホラー要素を無理矢理突っ込もうとしてダメになっていると思うんですよね。

 また、WAUとの鬼ごっこの難易度をもっと上げて(その代わり明確なゲームオーバーを無くすなどして)、WAUと関わる回数が増えることで、ゲーム本編には影響しない範囲で異常を来すとか、そういう演出があっても良かったと思います。
 あと、せっかく設定上、主人公はコピーし放題なんですから、死んだら別の主人公から再プレイ、ということにすれば良かったんじゃないかな? と私は思います。「死んだら生き返らない」となれば、怪物との鬼ごっこももうちょっと緊張感が出たと思うのですが。

 とにかくこのゲームは、WAUがただの気持ち悪い敵にしか見えず、ろくにシナリオにも関わってこないのが残念すぎるんですよ。そもそも主人公はヘルス回復時にWAUのお世話になっているわけですし、WAUに徐々に浸食されていくみたいな演出があるべきだったはずなのです。そして、WAUを殺す選択をするときに、プレーヤーにもっと躊躇させて欲しかった。腕を食われるかどうかなどというつまらないレベルの問題ではなく、もっと高次の葛藤が欲しかったのです。

 機械が故障したり、はしごが落ちたりといったつまらない展開とか、どうでもいい海底の移動シーンとか、いまいち盛り上がりに欠ける敵との鬼ごっことか、他にもいろいろ問題はありますけど、WAUさえうまく展開や演出に絡めていたら、そんな欠点なんか吹っ飛ぶくらい、このゲームは素晴らしかったはずです。本当に残念。

"The Talos Principle"とも関わってくる、人間とは何か? というテーマですが、これに関しては"The Talos Principle"の方がうまくやっていると思います。"The Talos Principle"のネタバレになるのであまり詳しく書けないですが。
 そもそも"SOMA"の登場人物達には大した哲学がないですし、そのうえ主人公には記憶力もないせいで、せっかくの哲学的テーマを掘り下げられてないんですよね。プレーヤーが選択する余地もないですし。
 プレーヤーが選べるのは、本編の進行とは何の関係もない、時折出てくる殺すか殺さないかの選択ですけど、あれも演出等の不足のせいで、プレーヤーを葛藤させるほど難しい課題を投げかけ切れてないです。

 あと、人格を複製したら、オリジナルの人格はコピー元に宿るのか、コピー先に宿るのか、といった、SFらしいテーマが投げかけられていますが、そんなものは考えるまでもないことのはずなんですよね。コイントスで決まるとか、コピー元を殺したらコピー先がオリジナルになるとかいう考えがオカルトに過ぎないのはわかりきったことです。ゲーム中にプレーヤーキャラが複製先の主人公に移動するのは展開上の都合であって、コイントスで偶然決まったわけではもちろんないです。プレーヤーキャラがオリジナルサイモンのまま移動しなかったら、このゲームが何一つ進行しませんからね。

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2015.11.1 マクドナルドがたまごバーガーを売る

 こんばんは。ジャンクフード評論家の涼格です。みなさんはジャンクフード、ガツガツ食べてますか?

 ほんの一ヶ月前、私は、マクドナルドはたまごバーガーを売れとほざいておりました。これはエッグマックマフィンが朝だけの販売になった日からずっと言い続けていたことで、しかしそれから結局何十年も売らなかったわけですから、あの時書いたときも、全く期待していませんでした。
 しかし、どうしたことでしょう。なんと、今年10月下旬から、マクドナルドがエッグチーズバーガー200円を販売することになったじゃありませんか。

 私が思うに、おそらくマクドナルドは、本気で経営が苦しいのでしょう。たまごバーガーを売らなければならないほどに追い込まれたということです。
 だいたい、期間限定商品がたまごダブルマックなのに、それに重ねてでもエッグチーズバーガーを投入してきた節操なしなあたりからも、マクドナルドの必死さが覗えるでしょう。というか、そうなる前にとっとと売っとけば良かったのにと思うのですけどね。

 建前上、言った側から要望が叶ってしまったわけで、それなら食べに行かないわけにもいくまいという、よくわからん義理を立てて、エッグチーズバーガーを食べに行きました。

 どうでもいいことですが、私は飲食店で、滞りなく華麗に注文をすることに脅迫的観念を抱いております。マクドナルドがメニューを撤廃したとき、ものすごく嫌だったのもこれで、せっかく華麗に「マックシェイクのバニラをひとつ」とキメても、「当店では扱っておりません」と言われて「あーえー、じゃあ何があるんですか?」などと、あたふたしたくなかったのです。
 今回のメニュー刷新で、マクドナルドのメニューはちょっとだけわかりやすくなり(慣れていないせいもあるかもしれませんが、まだわかりにくいと思う)、そもそも公式サイトで下調べしてきているので、注文に関しては全く問題ないだろうと思っていました。
 というわけで、わりと安心して「エッグチーズバーガー、単品でひとつ」と華麗にキメたわけですが、なぜか相手は「は?」という表情をしたのです。
 どういうことなのか。涼格は何かヘマをしたのか? 戦慄の走る中、素早く目の端でメニューを見返して、私はすぐに事態を理解しました。
 なんと、あのたまごバーガー、正式名称は「エグチ」なのです。メニューにもはっきり「エグチ(エッグチーズバーガー)」と書いてあります。なので「エグチ」と呼ばないと、店員がすぐに理解してくれない可能性がある、というわけです。

 よりにもよって、なんで正式名称が「エグチ」なのでしょう。ちっともおいしそうな名前じゃない。だいたいなんで注文時に、公衆の面前で、そんな恥ずかしい言葉を発しなければならないのですか。頼むから「エッグチーズバーガー」と言わせてくれ!

 ……ともかく、無駄に一波瀾あったものの、エグチをひとつ確保し、その場で食することに。
 結局その実態は、チーズバーガーに70円でたまごを追加したもの、と考えて構いません。実際そうでしょう。

 そう考えると、新しくたまごバーガーを作るのではなく、あらゆるバーガーに70円でたまごを追加できるようにした方が良かったような気もします。スライストマトを40円で追加できるようになりましたけど、あれと同じように、トッピングにたまごを選べるようにするのです。そうしたら、チキンクリスプにたまごを追加できたりして、結構おいしかったような気がするのですが。

 というのは、チーズバーガーにたまごを追加したエグチは、たまごが引き立つように味付けや具が工夫されているわけではないので、たまごを食いたいたまごフリークにはちと物足りないのですよね。
 月見バーガーは使っているソースやバンズによるものなのか、たまごを主役に据えたバランスがかなりいいんですけど、あれができるなら、エグチでもそれをやって欲しかった気がする。というか、月見バーガーを「たまごマック」と名前を変えて売るか、エッグマックマフィンを昼も売るというわけにはいかないのかね。せっかくある正解をなぜ活かさないのか。

 昼でも通年たまごバーガーがマクドナルドで食べられるようになったこと自体は歓迎するところです。たまごバーガーのあるファーストキッチンは店舗があまりなく、気軽に食べに行けないですからね。
 しかし結局、本気でたまごのバーガーが食べたいなら、朝にエッグマックマフィンを食べた方がいい気はしますね。

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2015.10.15 HDDの不調と換装

 HDDの調子が悪いので換装することに。
 私のパソコンでは、OSはSSDに入れて、大きいソフトやテンポラリなどはHDDを使うようにしています。そのHDDがどうも調子が悪く、不良セクタがあるのに、それを不良セクタと認識しないようで、そこにアクセスする度に処理が遅くなったり電源が落ちたりするのです。
 Windowsが不良セクタを認識しない場合でも、それを処理できるソフトがあって、それを使って問題解決を試みたのですが、そのソフトによってS.M.A.R.T.上では不良セクタは代替処理済みになったものの、結局不良セクタにアクセスしてしまう問題は解決しませんでした。仕方ないのでHDDを交換することに。

 壊れたのはHGST HDS721010DLE630 1.0TBで、購入したのはWDC WD20EZRZ 2.0TB。Western DigitalのHDDは久しぶりです。以前に購入したのは容量120GBで、長いこと起動ドライブとして活躍し、今でも使えます。
 壊れたHDDは3年ほど使用したもので、HDDの寿命としてはちょい短い程度ですが、なんとなく、そもそもこのHDDはハズレで、今回の問題は初期不良だったような気がします。たまたまいままで、最初からあった回復不能の不良セクタにアクセスしなかっただけのような気がする。

 新しく買ったHDDには引っ越しソフトのAcronis True Imageが付属していたので、せっかくだからこれでクローンを作ることしたのですが、このソフトがどうも変な挙動をして、再起動時にドライブレターがおかしくなり、Windowsが起動しなくなってしまいました。本来Cを割り当てるべきドライブにHが割り当てられ、その他のHDDドライブも全部ぐちゃくぢゃ。

 こういう時は起動ディスク(Windows10をダウンロードしてアップデートしている場合は、その際にISOイメージやUSBフラッシュドライブ用データとして起動ディスクを作成できる。今回はUSBフラッシュドライブで作成していた)からDOSプロンプトを呼び出して、diskpartを使ってドライブレターを修正すればいいわけですが、いくら修正しても、起動時に間違ったボリュームに再「修正」されてしまい、一向に問題が解決しません。

 しかもなぜだかBIOSまで起動しなくなり、電源を入れても真っ暗なままという状況に。
 こういう場合、マザーボードがお亡くなりになった、という可能性もあるにはあるのですが、たいがいはボタン電池の電池切れや、電源を入切しすぎてマザーボードに電気が溜まっていることなどが考えられます。
 というわけで、一旦パソコンの電源スイッチを切り、電源コードを抜き、ボタン電池を外してしばらく放電した後、一応新品のボタン電池を入れて電源を入れ直すと、この問題は解決しました。

 とりあえず真っ暗で何もできない状態は解消したので、改めて問題解決を試みたわけですが、diskpart上でlist volumeと打ち、毎回Cが割り当てられてしまうボリュームの正体はそもそも何なのかと確認してみると、どうもAcronis True Imageが一時的に作ったパーティションのようでした。そこを起動ドライブとして使って実作業を行い、元通りにしてから再起動……するはずが、何かの弾みで処理がおかしくなった模様。
 というわけで、そのパーティションを削除して、本来のドライブレターに修正。それから起動ディスクの自動回復を試みて、それでようやく復帰しました。

 こんなことだったら、よくわからないソフトなんか使わないで、最初からDOSプロンプト上で手作業すれば良かったような気がする。

 余計な手間はかかりましたが、HDDそのものは問題なく動いています。前のHDDの回転数は7200rpmで、今回導入したのは5400に落ちているのですが、転送速度は今のHDDの方が少し速いです。

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2015.10.13「Windows10」

 Windows8.1をWindows10にアップグレードしました。一応予約とやらをしていたのですが、2ヶ月待っても何の音沙汰もないので、結局通知を待たずに自分でプログラムを落とすことに。……本当に予約していたら通知が来るのだろうか。

 アップグレード自体はかなり簡単で、ユーザーの方でやるのは、本当にアップグレードするかと、ライセンス条項に同意するくらい。アップグレード後も、ほとんどのソフトやデバイスはそのまま使えます。結構古いオーディオインターフェースであるUA-4FXも、アップグレード時に自動的に対応ドライバを落として適応させているようです。なので、印象としてはWin8.1から8.2にした、みたいな気軽さです。

 唯一問題だったのはATOK2013で、Windowsアプリ上でかな入力を行おうとすると、ひらがなが入力できません(ローマ字入力なら問題ない)。この問題はATOK2015ではすでに修正されているそうで、つまり、この不具合を直そうと思ったら、最新版を購入する以外に手はないようです。ただまあ、私はアプリでひらがなを打つ機会がない……というか、アプリ自体ほとんど使わないので、全然問題ない不具合ではありますが。

 インターフェースもほとんど変更なし。細かくはいろいろ変わっていますが、基本的な使い勝手はWin8.1と大差ないです。スタートメニューなど、8.1ではタブレットで使うことを前提にしていた仕様のいくつかが、デスクトップで使いやすいようになったくらいでしょうか。

 気になったのは、画像データや音楽データの関連付けが、デフォルトではWindowsアプリの「フォト」や"Grooveミュージック"などになっているのですが、これらが一瞬起動してすぐに終了してしまい、まともに使えない点です。
 どうせこんなアプリは使わず、普段使っているソフトに関連付けし直すので構わないのですが、デフォルトのアプリがまともに動かないのはWindowsらしいと言えます。
 調べてみると、原因や対策がいろいろあるみたいですが、面倒ですし、だいたい使わないソフトを使えるようにしても意味がないので、放置します。

 あと問題なのは、アクションセンターの通知で「Win10を人に勧めたいかどうか」など、アンケートが届くことがあるのがうっとうしいくらいでしょうか。その余計な通知のせいで勧めたくなくなるんですけど。

 結局、9を飛ばしてWin10になったほどの新しさは全く感じられず、むしろWin8.2と言った方がしっくり来るような印象でしたが、OSのインターフェース等をころころ変えられても困るので、新しさなどない方がむしろいいでしょう。

[2015.10.22 追記]
 起動時にエラーが出て再起動する不具合が度々起こりましたが、これはWindows8の頃からある、「高速起動」なる「便利」機能が起こす不具合です。Windowsはたまに再起動しないと、だんだん挙動がおかしくなるものなのですが、この「高速起動」がオンになっていると、シャットダウンしても再起動の処理をせず、結果的に次に起動したときの処理で不具合を起こし、再起動とエラーログの吐き出し等で、かえって起動時間がかかってしまうという素敵機能なのです。
 コントロールパネルの「電源オプション」→「電源ボタンの動作を設定する」で、「現在利用可能でない設定を変更します」を押すと、「高速スタートアップを有効にする(推奨)」のチェックをオン/オフにできるようになります。(推奨)されていますが、こんなものはオフにしましょう。どうせ今どきのパソコンは、こんな機能が無くてもかなり早く立ち上がります。

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2015.9.16「マクドナルドの時間制限ルール」

 こんばんは。ジャンクフード評論家の涼格です。みなさんはジャンクフード、ガツガツ食べてますか? 私は、今年の2月にモスバーガーに行って以来ご無沙汰でした。ダメじゃん評論家。

 そんな評論家が久々にマクドナルドに行きました。お目当てはもちろん月見バーガーです。マクドナルドは儲けが減って困っているらしいですが、それなら月見バーガーを通年販売するか、昔のようにエッグマックマフィンを昼も販売するかすりゃいいのにといつも思っています。

 最近、飲み物にプラスチックが混入した事件があったので、客は少なくなっているのかと思いきや、休日の夜ということもあり、意外と混んでいました。特になぜかドライブスルーが多くて、店員はドライブスルーの客を捌くのに忙しくて、店内でのオーダーはしばしば待たされる状況でした。
 少なくとも私は、待たされることは構いません。従業員の仕事っぷりを観察して暇を潰せるからです。評論家ですから。

 そんなわけでいろいろじっくり観察できる時間があったわけですが、ふと、今まで見たことのないモニターが、ドライブスルーの窓口の上にあるのを見つけました。なにやら数字がカウントされていて、その隣には"30%"などとパーセンテージが表示されている。
 そこはポテト揚げ機のそばでもあったので、揚げる時間をカウントしているのかな? と思っていたのですが、どうやらそうでもなく、しばらく見ていると、どうやらドライブスルーの客を捌くまでにかかった時間をカウントしているようだとわかりました。
 下の数字はオーダーを取るまでにかかった時間で、上の数字はオーダーから商品を渡すまでにかかった時間。数字は最初緑なのですが、120秒を超過すると赤くなり、右のパーセンテージが増える模様。つまり"30%"というのは制限時間を超過した割合、というわけです。

 経営戦略を考える上で、接客時間を記録するのは必要なことだと思いますが、全てのオーダーを一律120秒以内に捌くのを目標にするのはどうなんだろうと、疑問に感じました。
 ハンバーガーとコーヒーしか頼まないようなケチな客は、さっさと捌いてさっさと帰っていただく方がいいでしょうけど、たくさん買ってくれる客は必然的にオーダーにも提供にも時間がかかるわけですから、より時間をかけてもいいと思うのです。だいたいマクドナルドって、客単価が安いから困っていたはずで、金になる客にじっくり時間をかけられるように努力した方がいいように思うのですけど。
 なので、こういうシステムを導入するなら、秒数あたり何円売り上げるかで目標設定してディスプレイした方がいいような気がします。……まあ、露骨なんで、客に見える位置には表示しない方がいいですけど。

 殺伐とした接客が感じ悪いから、マクドナルドの客は減ったのだと私は思うので(少なくとも私はそうだった。もちろん原因はそれだけじゃないですけど)、あまり制限時間で店員を急がせない方がいいと思うのですけど、まだこんなことやってたんですね。

 だいたい、ドライブスルーに120秒制限を設けているせいで、店員がみんなドライブスルーの方に全力を尽くしてしまい、店内のオーダーが完全に後回しになっているんですけど、それはいいのかね。接客の店員が2人いるんだから、本来ならドライブスルーと店内で分担すりゃいいのに、2人ともドライブスルーに行っていて片手間に店内の客を捌いているわけですよ。それじゃ本末転倒な気がする。
 私が眺めていたカウントを合計すると、私がカウンターに立ってから、オーダーを取ってもらえるまでに4分以上かかった計算になりますが、さすがに客を4分も放置するのはマズイと思われます。注文を取ってから商品が提供されるまで待つならともかく、無人のカウンターで注文も取ってもらえず突っ立っているのは、なかなか侘しいもんがありますし、ないがしろにされている感じがありますからね。私はいいんですけど。
 店員をもう1人増やせばいいわけですが、今のマクドナルドにその余裕はないのでしょう。

 面白いものが見られたのは良かったですけど、なんだかいろいろ大変そうだなあと思いました。

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2015.9.14「2020年東京オリンピックのエンブレムのこと」

 ネット検索を使っていると、「上級国民」なる言葉を見つける。なんじゃそりゃと思って調べてみると、2020年の東京オリンピックのエンブレムがベルギーの劇場のエンブレムと酷似しているなどの問題があって、結局、一度決定したエンブレムの使用を撤回するという決断を下したそうなのです。それについての会見で、責任者が「デザイン界では、このデザインはオリジナルだと理解されるが、一般国民に理解してもらうのは難しい」などと発言したところ、それが「自分達は上級国民だと言いたいのか」と解釈されて、それを受けて、どこぞのまとめサイトが「デザイン界」の部分を「上級国民」に置き換えて見出しを付け、にわかに流行したのだとか。

 私はオリンピックに興味がない上、ニュースをなるべく観ないようにしているので、この話題については全然知りませんでした。
 興味のない大会のエンブレムがどうなろうが知ったことじゃないですが、ざっと調べてみました。なかなか複雑な問題ですね。

 そもそも問題の発端となったベルギーの劇場のロゴについては、相手が商標登録をしていないため、訴訟を起こされても負けることはなく、問題ないだろうとオリンピックの運営側は判断したようです。
 しかしその後、エンブレムを手掛けたデザイナーの仕事の中から、サントリーの景品のトートバッグのデザインに盗用疑惑が持ち上がり、そのうちいくつかはデザイナー本人が盗用を認めることに。さらに、エンブレムの「原案」として提示したものがヤン・チヒョルト展のポスターのロゴ等と酷似していたこと、そして、エンブレムの展開例として使用した写真に無断使用が発覚したことなどから、エンブレムのイメージが著しく損なわれ、継続して使用することは難しいと判断して、取り下げを決定したようです。

 つまり、エンブレムそのものには問題はないと組織委員会は判断したのですが、デザイナーの他の仕事に問題があったためにエンブレムの使用を取り下げる事態に発展した、というわけです。

 私がこの件について感じるのは、オリンピックなどというドス黒くも巨大な興行を運営する組織のくせに、五輪組織委員会は報道対策がなってない、ということです。ろくな打ち合わせもなく、みんな好き勝手なことを言うから自滅したように見える。

 まず、最初の劇場ロゴについては、そもそも相手は商標を取っていないのですから、もっと余裕をかましておけばよかったと思うのです。「類似したデザインが見つかったことは遺憾ですが、件のロゴは商標を取っていないため、権利上は問題ないと判断しております」とだけ説明すれば良かったのです。パクったかどうかなんか、そもそも問題ですらない。だって商標取ってないんですから。
 もちろん、疑惑がある以上は、デザイナーが自ら盗作はしていないと宣誓する必要はありますけど、それを実証しようと細かい説明をする必要は全くありませんでした。そもそもパクっていないことを実証するのはほぼ不可能ですから(発表時期から考えて絶対にあり得ないなど、よほど確たる証拠がない限りは難しく、相手の方が先に発表されている今回の場合はほぼ不可能だといえる)。それがなぜか過剰反応し、パクリではないことを熱心に説明するから「あんなに必死になっているのは怪しい」と思われるのです。しかも、その説明の過程で原案が別のロゴに似ているという理由で修正されていたことなど、余計に疑惑を生じさせるようなことを暴露するという自滅ぶり。実際、いろいろ後ろめたいことがあるから、ああいう過剰反応に繋がったのでしょう。

 そして、一度決めたエンブレムを撤回するという決断については、愚策としか言いようがありません。世界規模のドス黒い興行のエンブレムを、そう軽々しく取り替えるべきではありません。責任者が全員首を吊っても責任を取りきれないくらい影響が大きすぎる。
 エンブレムがはっきりと盗作と確定したとか、権利上問題が発生したとか、どうしようもない理由があるなら、まあ、組織委員会の解体と引き替えに撤回するしかないでしょうけど、エンブレムそのものは権利上問題ないのに、デザイナーの素性が怪しいとか、国民からの評判が悪いとか、その程度の理由でエンブレムを差し替えるなどということはあってはなりません。せいぜいデザイナーから賞金を取り上げ、契約違反があるなら違反金を払わせて、責任者をクビにするだけで良かったのに、なぜ最悪な決断を下すのか。しかも、撤回会見での、あの責任者のヘラヘラした調子はなんなのですか。いくらなんでも無責任すぎる。
([2015.9.17 追記]これを書いたときには知らなかったのですが、エンブレムを発表したその日には、すでにリエージュ劇場のロゴが酷似しているという情報があがっていたのですね。であれば、その時点で即刻使用を差し止めて審議するか、撤回するべきだったでしょう。盗作かどうか、商標を取っているかどうかという問題以前に、あれだけ酷似する意匠が存在すること自体が後々問題になることは目に見えているからです。この件に関してはネットやマスコミが叩きすぎだという意見もありますけど、野火をほったらかしているからこうなるわけで、同情の余地はないですね。もちろん、デザイナー個人に嫌がらせしたりするのはどうあれ許されない行為ですけど、この事態は予測できたはずですから、自業自得だとも言えます)

 ……とまあ、一応怒ってみましたけど、実際のところオリンピックなんかどうでもいいし、それで誰が甘い汁を吸おうが、キャリアを失おうが、どうでもいいので、勝手にちゃらんぽらんな運営をして自滅しておけばいいんじゃないかと思いますけどね。


 ところで、私は今回初めてあのエンブレムを見たのですが、その感想としては、何にもありませんでした。良くも悪くもない。
 美術館かデザイン会社のロゴっぽくて、オリンピックっぽくない感じはしましたし、シンプルそうなわりにごちゃごちゃとバランスが悪い感じがして、どうなのかな、とは思いましたが、そもそもオリンピックのエンブレムって、結構ダサいのとか無難なのが多いんですよ。なんで、別にこれでもいいかなあという感じではありました。どうせ興味ないし。
 ただ、展開例のフォントデザイン等は勘弁して欲しかったですけどね。あれは酷い。フォントとして美しくないし、嫌な感じにカラフルで気持ち悪い。モジュール化して展開できるのがあのエンブレムのウリだそうなのですけど、できれば展開しないでいただきたいとは思いました(笑)

 ちなみに、オリンピックのエンブレムの中で好きなのは68年メキシコのです。これが好きで今回のエンブレムがダメなのはなぜなんだよ! と言われそうですけど、だって、今回のはシンプルじゃないんですよ。色数も多いし、コンセプトも詰め込みすぎ。モジュール化とグリッドシステムにこだわりすぎて、エンブレム単体としての良さを損なっているように感じる。
 だいたい、あのシステムを採用すると、エンブレムが"T"の形態を取っていることに、さほど意味がなくなってしまうのですよね。むしろ、せっかくモジュール化したものを固定することで、意味の押し売りをしているように感じられてしまう。
 あのコンセプトを重視するのだったら、何の文字も絵も形作っていない、バラバラ状態のパーツを並べて(展開例でそんな感じのやつがありましたが)、これで各自、好きな文字や形を作ってください、みんなで作るオリンピック、みたいなものの方がまだ良かった気がする。
 しかし、オリンピックのエンブレムの性質を考えると、その普遍性をみんなに広く提供するわけにはいかないので、結局、積み木を目の前に見せつけながら「これで遊ぶなら金払ってください」と言われているようで、腹が立つわけです。

 話が逸れましたが、メキシコのは、単純な線の組み合わせだけで、あれだけとんがったデザインに仕上げているからいいと思うのです。当時どういう反応だったか知りませんけど、ヒッピーだけ喜んで、一般には結構嫌われていたような気がする(笑)
 時代性なのか、メキシコのに影響を受けたのか、メキシコ以降、似たようなコンセプトのエンブレムが続きましたけど、ミュンヘンはオリンピックのエンブレムである必然性が無くなっていますし、その他は親しみやすい無難な感じになっていてつまらんのですよね。

[2015.9.15 追記]
 ところで、実際デザイナーは盗作したのか、という点についてですが。事実は本人にしかわからないので、盗作したとも、してないとも私は断言できませんが、そもそもあのエンブレムは、オリンピックで使用するには問題があるのではないかとは思います。

 あのエンブレムは、単純な図形にパーツ化して、その組み合わせで様々な形が作れるように設計されています。ということは、組み合わせ次第でいろんなものを模倣することができるシステムだとも言えるわけです。つまり、あのシステムを使えば、ヤン・チヒョルトの"T"に似たものも、リエージュ劇場のロゴに似たものも作れるのです。

 私はデザイナーが盗作したというよりは、あのシステムには脆弱性があるのだと思います。いろんなものを形作ることができるシステムであるが故に、あのシステムを利用して作ったものは、何かに似てしまうのです。よっぽど複雑かつ妙な配置にすれば別ですけど、9分割グリッドに律儀に並べていますからね。

 あのエンブレムがもし、金や利権などと縁の無い仕事であったなら、全然問題なかったと思います。僕が作った積み木で遊んでね、ということで、みんなで楽しくやれたと思うのです。
 しかしオリンピックは金や利権や政治や思想が絡むわけで、悪用されやすいシステムは様々な問題を生じさせるのです。
 また、せっかく普遍性のある楽しいシステムを作っても、オリンピックのエンブレムではその楽しさは逆効果なのですよね。先にも書いたように「これで遊びたきゃ金払え」という、ものすごい嫌味になってしまう。このエンブレムが妙に嫌われる理由のひとつはこれだと思います。はっきりとそれに気付いている人は多くないかもしれませんが、潜在的にそういうメッセージを受け取っているのでしょう。

 オリンピックの仕事でこのような脆弱なエンブレムを作るところを見ると、このデザイナーは間抜けかお人好しで、政治、思想、法的な問題に無頓着なところがあるのでしょう。
 あまり利権に関わらない、学生気分でやれるような、人間味のある小さな仕事には向いているでしょうけど、大きな仕事には向いていないのかもしれません。人柄はいいけど、肝心なところでは信用して起用できない感じがする。……あのエンブレムを分析して言っているだけで、実際のところは知りませんけど。

[2015.9.28 追記]
 安保法案が成立すれば、オリンピックのエンブレムなんか、みんなどうでもよくなるわけですから、どうせ初動で失敗したのであれば、いっそもっとぐずぐずして先延ばしにすれば、エンブレムを撤回せずに済んだような気がします。

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2015.9.1「"0"の意味が読みで変化する?」

 母親が突然、「ゼロとれいの違いを知っているか?」と訊いてきました。「同じだ」と答えると、間違っていると言い、「れい」は少しあることを意味し、「ゼロ」は何もないことを意味するのだと言いました。だから、天気予報では「ゼロパーセント」とは言わず「れいパーセント」と言い、テストの成績でも「れいてん」とは言うけど「ゼロてん」とは言わないと。

 どこで仕入れた知識か知りませんけど、なんでこんな馬鹿な話がまかり通っているのでしょう。ちょっと考えたら、"0"の意味が読み方で変化するなんてあり得ないことくらい、すぐわかると思うのですけど。

"0"と表記される数は何もないことを意味します。これは世界共通です。"0"は世界各国でいろんな読み方をされていますけど、それが数字を意味する限りにおいて、読みが変わることで意味が変わることはありません。もし日本語読みの「れい」と英語読みの"zero"で"0"の概念が変わるのだとしたら、日本の数の概念は世界のルールから逸脱していることになります。

 天気予報では降水確率を10%刻みで表記し、5%未満の場合は"0%"と表記するという便宜上のルールがあるから、"0%"と表記しても実際には「5%未満」を意味することになりますけど、だから"0%"を「れいパーセント」と呼ばなければならない、「ゼロパーセント」と呼ぶと間違っている、と言い出すとおかしなことになります。
 天気予報の"0%"が厳密な意味で0%でないのは、事前にそのように定義されているからであり、読み方によって変化するわけではありません。英語圏だったら"0%"は"zero percent"と読みますし、それが日本の「れいパーセント」と意味が異なるなんてことは、あってはならないでしょう。

 だいたい、天気予報やテストで"0"を「れい」と読むのは、単に"0"の日本語読みが「れい」だからに過ぎません。もし本当にNHKや日本の気象学会が「"0"を『れい』と読むと『少しある』ことを意味し、『ゼロ』と読むと『空っぽ』を意味する」などと主張しているのであれば、彼らはどうかしています。

 どうせこんなことを言い出したのはどこかのテレビ番組なんでしょうけど、勝手な思い込みで変なルールをさも常識であるかのように吹聴するのはやめてもらいたいものです。


 余談ですが、「零細」「零落」などの「零」には"0"の意味はなく、「ゼロ」とも読みません。この漢字はもともと「(神意によって)静かに降る雨」を意味し、そこから転じて「落ちる」とか「落ちぶれる」とか「はした」などの意味が付加されるようになりました。
 中国に"0"の概念が輸入された際、その数の漢字表記として「零」を使うようになりましたが(実際、どういういきさつで"0"を「零」と表記すると決めたかは、私も知らないですけど。どちらかというと「無」とか「空」とかの方がニュアンスは近いですし)、もともとの「零」とは用法が異なり、同じ表記ではあるものの、全く別の意味を持つ言葉だと考えた方がいいです。もともとの「零」と数字表記としての「零」は全く別物なのです。
 だからたとえば「零度」と書いてあるからといって、「すこしばかり度数がある」などと解釈するのは、たいがいの場合間違っている、というわけです。テレビだかなんだかでわけのわからない「常識」を吹聴した人も、おそらくこの辺で勘違いをしているのでしょう。確かに漢字の「零」には「少しばかり」という意味がありますけど、"0"に「少しばかり」なんて意味はないということは、ちょっと考えればわかることだと思うのですけどね。

[2015.9.4]
 ネットで調べてみると、この馬鹿な話は少なくとも2006年には出回っていた説のようです。そして最近、林修の出演する番組で取り上げられ、おそらくそれが母親の耳にも入ったのでしょう。塾講師が数学に関することでウソを広めるのは無責任だと思いますがね。

 では、実際のところ、NHKや気象庁は、「"0"を『れい』と読むと『少しある』の意味になる」などと考えているのでしょうか。

 この説については、実際に調査しているサイトがありました。

http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000154146
(レファレンス協同データベース)

 また、NHKによる「ゼロ」と「レイ」の読みの違いによる見解もありました。

https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/term/103.html
(NHK放送文化研究所)

 こちらは降水確率ではなく、電話番号の読み上げの話ですが、"0"を「ゼロ」と「レイ」で読み分ける際の、NHKとしての基準の話。和語、漢語の文脈の中で突然外来語の「ゼロ」を使うと違和感があるから、基本的には漢語読みの「レイ」を使うが、特に「無い」ことを強調したい場合には「ゼロ」と読むこともある、としています。
 ここで重要なのは「ゼロ」と読むときの例ですが、「事故ゼロ」「海抜ゼロメートル」「欠席者ゼロ」とあります。降水確率の話が本当なら、「海抜ゼロメートル」は「海抜レイメートル」と読むべきでしょう。海抜とは平均海面を基準にしていますから、"0m"と言っても常に厳密な意味で"0m"ではないからです。

 以上から、NHKも気象庁も、「"0"は読みによって意味が変化する」という見解は持っていない、ということが確認できます。そりゃそうでしょうけど。

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2015.8.21 Steam版"The Talos Principle"

DLC "Road to Gehenna"のレビューはこちら。

 Steamで"The Talos Principle"をプレイ。
 このゲームについては全然知らなくて、Steamストアの割引セールの中に入っていたのを見てデモをプレイし、気に入ったので購入しました。

 内容は一人称視点のパズルゲーで、プレイヤーは各所に散らばるパズルチェンバーをある程度好きな順序でクリアしていき、テトリスのブロックみたいなのを集めていきます。で、そのテトリスブロックがロックされたドアの鍵となっており、それを集めることで行ける場所が増えていく、といった感じです。
 テトリスとは別に星も各所に散らばっていて、これはクリアに必須なアイテムではなく、より難しいパズルに挑戦したい人向けです。

 私の印象としては、このゲームは、『ワンダと巨像』からアクション要素を削って、代わりに"Portal"っぽくして哲学議論を突っ込んだ、といったように感じました。パズルゲーにしてはやや広いフィールドを歩き回りながらパズルをこなしていく感じは、結構『ワンダと巨像』に近いと思うのですよね。で、実際のパズルは"Portal"っぽい。ポータルガンは出てこないですけど。

 パズルの難易度は少し高めで、"Portal"よりは難しく、"Braid"や"Limbo"とはほぼ同格ですが、アクション操作を必要としない分、若干易しく感じます。じっくりと考えて理詰めでクリアできる内容で、ヒントの出し方が素晴らしく(本当に行き詰まった場合、回数有限でヒントがもらえるみたいですが、それは未使用でクリアしました。ここでいうヒントとは、状況をよく観察したら解法が見えてくるようになっている、といった意味合いです)、手強いですが上質です。ひとつひとつのパズルは短いもので、やり直しの負担が少ないのもいいところ。
 星探しについては頭を使わされる内容で、かなり難易度は高いです。とはいえ、30個ある星のうち、27個はある程度在処が明かされており、所在不明の3つも比較的見つけやすい場所にあります。そのため"Braid"の星探しなどのように、「そもそもどこにあるかわからなくて無意味にフィールドを歩き回る」といったことはほとんどなく、理不尽さはないです。とはいえ、自力で星を全部集められなかったというレビューもよく見かけるので、ある程度この手のパズルゲームに慣れている人向けの上級ミッションと考えた方がいいでしょう。星が集めきれなくても、ゲーム本編にはさほど影響ありません。

 特徴的なのはストーリー展開の仕方で、基本的に一本道のくせに、プレーヤーの選択意志でストーリーが展開しているかのように見せている点です。
 それは、各所に散らばっているパソコンによるもので、このパソコンを起動すると、ゲームの進行につれて、謎の相手とチャットできるようになるのです。で、何を話すのかというと、存在論や道徳の概念など、要するに哲学の議論だという。
 選択式で相手の問いに答えていくのですが、相手はプレーヤーの選択肢を覚えていて、それを踏まえて議論をふっかけてくるのです。

 このパソコンでのやりとりは、ゲームの本質的な進行とは何も関係ないはずなのですが、これのおかげで、一本道なはずのゲーム展開が、プレーヤーの選択の結果として現状があるかのように錯覚させる役割を果たしているのです。なかなか独特で面白い。
 また、このやりとりの中では、プレーヤーが人間であることを証明する必要があったりするのですけど、これはなかなか面白い仕掛けだと思います。このゲームをプレイするのはたぶん人間だろうと思われますが、ゲーム中でプレーヤーが演じる役割はAIなわけです。このゲームをプレイしていると、だんだん自分が人間であることを疑わしく感じてくることでしょう(笑)

"Portal"はあらゆる意味で完璧なゲームで、あれと比べてしまうと、"The Talos Principle"はいろいろと不備もあります。歩き回れる範囲がバズルゲームとしてはやや広すぎて散漫ですし、ストーリーや全体の雰囲気も、内容のありきたりさに比べると気取り過ぎな印象です。しかし、その欠陥を含めて、このゲームは優れた一本だと言えるでしょう。研ぎ澄まされていないからこその良さというのもあるわけです。


 ……以下はネタバレありの話。

 購入前にSteamのレビューを読んだところ、星集めは自力クリアが難しいとあったので、それで"Braid"の星集めほどの理不尽さを覚悟していたのですが、想定していた難易度に比べると、ずっと易しかったです。各チェンバーに何個星があるか明記されていますし、星のほとんどは見える位置にありますし、時計やスフィンクスなどはあからさまに怪しく、そこにあるとすぐわかりますし。

 どこに問題があるかがわかっていれば、そこに集中しさえすればいいのでだいぶ楽です。チェンバー内に星があるとわかっていれば、消去法で在処を特定できますから。あるかないかわからないのにチェンバー内をさまよう地獄に比べればずっと楽。結局30個とも自力で取れました。

 しかし、A-3という序盤で、ゲーム内だけでは完結しない時計の謎解きがあったのは意表を突かれましたが。さんざんチェンバー内を歩き回っても何時何分なのかわからなかったので、もしやと思ってスマホをかざしても、反応しなくて(笑)
 それで「さすがにリアルにスマホをかざすような謎解きじゃないのか」と思い直し、またうろうろさまよったのですが、行き詰まってQRコードをじっと眺めているうち、「向きを変えたら読み取れるんじゃないのか」と思いついたわけですが。読み取れさえすればあとは簡単で、二桁の数字の羅列がASCIIなのは一目瞭然なので、平文に変換して解読完了です。
 しかしまさか、ゲーム中にプレイヤーキャラがあのQRコードだけ読み取れない理由が、現実世界のスマホでも読み取れない理由と同じだとはね。
 この時計の謎を解いている最中、ずっと頭にあったのは『ワイルドアームズ』の時計の仕掛けやデ・レ・メタリカで、つまり、そこまで複雑な謎解きではなく、どこかにはっきりと何時何分に合わせるべきか明記されているだろうと当たりを付けていました。あの経験があったからこそ自力で解けたような気もするので、以前に似たような謎を解いたことがない人にとっては、あれは結構キツイのかもしれません。

 実は、一番謎解きに時間がかかったのはA-5の「箱二つ」のフェンス越しに見えている星で、電源の線が延びていることまでは気付いていながら、入り口側面の反対側にスイッチがあるということに全然思い至らなかったのです。それでずーっと、どうブロックを積み上げたらフェンスを超えられるのかとか、隣のチェンバーから侵入できないかとか、地雷に箱を乗せたら壁を越えられないかとか、そんなことばかり考えていた。
 結局、この時考えたアイデアの多くは、もっと後のチェンバーで活かされることになり、おかげですごく楽にクリアできたので結果オーライだったとも言えますが。

 さて、それで、星なのですが。実は、初回クリア時には29個しか集まっておらず、最後の一個の所在が不明なまま、塔の高いところまで登ってしまいました(Cの使徒の世界のところにある、恋人の像の謎解きだろうと当たりは付けていて、実際そうだったのですが、後回しにしているうちに塔を登り切ってしまっていた)。
 星が足りないからどうせ6階で足止めだろうと思っていたら、なぜかラストっぽい展開になって、バッドエンドになるんじゃないかと冷や冷やしながらプレイしつづける羽目に。しかし結局、なんかいい感じで終わったので、「結局6階ってなんなんだ?」と疑問に思ったのでした。

 でまあ、ほどなく最後の1つを集めて6階に行ったのですが……下るのかよ(笑) ああ、そういえばエロヒムは「登るな」と言ってたよなーとか、星に関するヒントを出していたのはエロヒムの使徒だったよなーとか、いろいろ考えさせられました。
 謎解きにハマりすぎると、目的を見失ってパズルの世界の住人になってしまうんだなーという、なかなか含蓄の深いというか皮肉というか、そんなエンディングでした。しかしまあ、パズルを全制覇した人がヘルパーになるというのは理に適っているとは言えますけどね。
 余談ですが、6階の扉を開けるパズルの完成型が美しくて、私はエンディングムービーとか演出などよりも、そっちで感動しました(笑) 余談ついでに言うと、塔を登るときのブロックが赤いのもいい演出でしたね。ストーリー展開やエロヒムの言葉などよりも、ブロックが赤いという、たったそれだけの演出の方が効果絶大だという。

 蛇とのやりとりは、最初はわりと適当だったのですが、途中からだんだん本気になってきました。「実存主義以降に人間の存在について議論する意味があるのかよ。だいたい俺達は人間じゃねえだろ!」とか「なぜ議論上で使用する重要な言葉の定義について共通理解を取ってから議論を進められないのかね。俺の言ってる『夢』の意味を、お前は間違えて解釈してるだろ。というかわざと悪意に捉えてないか?」とか、だんだんヒートアップしてきて、本編のパズルがどうでも良くなってきたりとか(笑)
 私は道徳に普遍性なんかないと主張したはずなのに、普遍性があると言ったように解釈されていて、とても不満でした。……まあそもそも、相手の用意した選択肢を使ってしかこちらの意見を主張できない時点で、こっちが不利なのは明らかなわけで、どうもアンフェアだと思えてならないのですが、まあ、たかだかゲームで本気になりすぎでしょう。

 ストーリーについては、あまりにひねりが無くて、かえってびっくりしました。あれほど何か裏がありそうな、思わせぶりな雰囲気がムンムンしているのに、結局見たままその通りだったとは。塔に登っている最中に「そうだ。塔の頂上には出口がある。だけど行かないでっ」などとエロヒムが告白した瞬間は、このゲームで唯一吹き出しました。なんでそんなに正直なんですかあなたは。
 あれだけでっかくて怪しい建物があって、「登っちゃダメ」とか言っているのだから、誰でもあれが出口なんだろうと思うはずですが、あまりにもあからさますぎて、本当に素直に出口なのか、かえって疑わしいんですよね。何か裏があるんだろうと。なのに、本当に出口ですとゲームマスター本人から説明された日には、あまりに正直すぎてめまいがしました(笑)
 そのついでに言うと、「永遠の命」も本当にしごくそのままの意味でびっくりしましたね。「ご褒美にケーキをあげます」と同じ類いのものかと思っていたら、本当に言葉通りの意味で、しかも本当にそれを与えてくれるという。GLaDOSとは真逆で、エロヒムはウソを付かないんですよね。
"Portal"の実験施設は、最初から変態企業がイカレた理由で作った施設だったので、無人化しようとしまいと、GLaDOSが正常だろうと狂っていようと危険なことに変わりなかったわけですが、この作品のプログラムは悪意や狂気によって組まれたものではないですからね。

 まあ、あからさまに存在する塔に「登るな」というのが、禁断の果実のオマージュだというのはわかるので、意図的にひねくれていないのはわかりますし、それでいいと思うのですが。

[2015.8.23 追記]
 実績が解除されていないことから、見つけていない端末があることに気付いたので、ひととおり歩き直してみたのですが、その際、読めないQRコードをもうひとつ見つけました。C-6の入り口付近の、葉っぱが絡みついているコードで、この葉っぱがマインクラフトの剣で斬り払うことができるのですね。初回プレイ時に剣は見つけたのですが、葉っぱに隠れたQRコードは見落としており、まさかあの剣に使い道があるとは思っていませんでした。
 このQRコードもそのままでは読み取れず、回転してスマホで読み込む必要がありますが、一見、単なるお遊び要素であるコレが、実は時計の謎解きのヒントになっているという。
 ところであの、マインクラフトの剣が落ちているところのパズルですが、どうも私は初回プレイでは、変な解き方をしていたみたいです。本来なら印章のある最後の扉は青ビームで開けて、ジャマーで地雷を無力化するみたいなのですが、私はジャマーで扉を開けつつ、そのジャマーの配置を工夫し、遮蔽物にして地雷が反応しないようにして攻略しました。ずいぶんアクロバティックな解き方をしなきゃいけないんだなあと思っていたのですが、ちゃんとスマートな解法があったのですね(笑)

 なお、見落としていた端末は、わかりにくいところにあるような隠し端末でもなんでもなく、B1の予備端末でした。星の場所がすぐわかったので、ちゃんと隅々まで歩き回っていなかった。

 あと、今回の各地の再訪問で、B-2の月のギミックを見つけました。よく見ると月にコネクタが設置されていて、ビームが照射できるようになっているのです。あの月は最初見たときから"Portal2"を彷彿とさせてはいたのですが、まさか本当に"Portal2"絡みのイースターエッグがあるとは。
 B-2は妙にイースターエッグが多くて、星のある場所の反対側にはベッドがあって「電気羊の夢」を見られますし、「人類初飛行」の外壁には望遠鏡があって、近くに落ちているカギを拾ってから、ファンを使ってうまいこと外壁に飛び乗ると、望遠鏡を使うことができます(この望遠鏡で覗くと、月のコネクタや、ギミックを発動させた後の月をよく観察することができる)。
 この他にもいくつかイースターエッグらしきものは見かけましたが(開発者の部屋?とか、スフィンクスの正面にある、せっかく見つけても結局入れない隠し扉とか)、この様子だと見つけていないのがもっとありそう。

[2015.8.31 追記]
 一度「永遠の門」をくぐって蛇とのチャットをやり直してみましたが、どうも重大な分岐をするのは最後の方だけで、途中は何を選んでもさして影響ないみたいですね。
 チャットは本編のゲーム進行には何の影響も無く、全然チャットしなくても塔に登ってクリアできます。ただ、一応蛇とのやりとりもマルチエンディングになっていて、それぞれで実績が解除されるようになっています。
 プレイしているとなかなかムカつく蛇ですが、最後のチャットの選択肢で特定の条件を満たすと逆に質問攻めにしていじめることができるようになります。具体的にどうすればいいのかはよくわかりませんでしたけど、蛇の主張を認める選択をせず、かつ、部分的にこちらの過ちを認めるような選択肢を選んだときに限り、質問攻めにして逆襲する選択肢が登場するようです。

 あと、周回ついでに情報も整理してみましたけど、QRコードで主要に登場する@(D0G、 "%§&$§/$&(#()")、Samsara、Sheep(The shepherd)はすべて1w/Faithの子孫で、その1w/Faithは「心に悪意があるヘビが入ることを許した」ことでプログラムが終了しているのですよね。もともとアーカイブとソーマ/タロスは別個のプログラムだったみたいですが、アーカイブから蛇が生まれて、それがソーマ/タロスプログラムに影響を与えて、プレーヤーのようなAIが生まれるきっかけをもたらしたっぽいですね。これはおそらく、禁断の果実のオマージュでしょう。1w/Faithはアダムとイブなのですね。ミルトンライブラリの「ミルトン」は『失楽園』を連想させますし。
 @はエロヒムの目的から逸れて、名所巡りに没頭した後、不具合を起こして終了。D0Gはアーカイブの蛇に影響されすぎて虚無主義の疑心暗鬼に陥り(@の時に感動していたものにいちいち「意味がない」などと否定的なことを書いている)、最終的にフィールドの外に出て自殺(C-5「光陰矢のごとし」の外にエピタフがある)、%§&$§/$&(#()はこの世界から逃げだそうとした挙げ句におかしくなってしまった様子。
 SamsaraとSheepは、ゲームをプレイしていれば自然と役割は見えてきますが、興味深いのは、Sheepは蛇を怒らせた(つまり、「蛇を黙らせる」実績を獲得した)っぽいのですよね。D0Gに対して「君はアーカイブを真剣に捉えすぎている」とも言っていますし、ミルトンとは対立関係にあるよう。

[2015.9.4 追記]
 このゲームの哲学的議題について言及しているレビューを見かけなかったので、せっかくなので少し書いておきます。このゲームで一番本気になった瞬間でもありますし(笑)

"The Talos Principle"の蛇とのチャットでは、選択肢次第でいろいろな哲学的議題が出されますが、そのひとつにトロッコ問題の変形があります。
 トロッコ問題とは、ある人が線路の切り替え器の前にいて、そこから線路が二股に分かれており、一方には5人、もう一方には1人が線路の上で動けずにいる。で、そこにトロッコがやってくる。切り替えなければ5人が死に、切り替えたら1人が死ぬ。で、その人が「切り替えないで5人を見殺しにすること」「切り替えて1人を殺すこと」は、それぞれ道徳的に見て許されるか(この際、法的問題は無視し、また、他の手段は取れないものとする)、という質問です。
 これは一般的には、一種の心理テストのように扱われていますが、もともとはそういう類いのものではなく、そもそも人間はどういう基準で道徳的判断を下しているのか、ということを考えるためのものです。
 つまり、たいがいの人は、こういう状況で1人を殺して5人を救うのは「やむを得ない(許される)」と感じます。しかし、1人の健康な人を殺して臓器を取り出し、その臓器で5人を救うのは「許されない」と感じます。同じ1人を殺して5人を救う行為なのに、状況によってなぜ感じ方が変わるのか、ということを学問的に考えるための思考実験であり、誰かの道徳観をテストするためのものや、何が正解かを問うものではありません。どうすればこの場合正解なのか、ということを問題にしているのではなく、なぜ人はそう感じるのか、という思考プロセスを分析するための手段であり、人間の道徳観は、功利主義や義務論で簡単に片付けられるような問題ではない、ということを示すためのものでもあります。

 もちろん、蛇の出題は学問的な目的での思考実験ではなく、プレーヤーを批判するためだけにこの質問を仕掛けてきます。私が蛇相手に本気になった理由はこの辺にあります。哲学的な問題の本質を、議論に勝つために歪めている。

 蛇からの出題は、あの世界からの脱出口があって、みんなで脱出しようとしているけど、一人が移動に失敗して、そのせいで全員が危機にさらされている。で、その一人を殺すボタンがあるんだけど、それを押すかどうか、という質問です(いまいちよくわからんですが、脱出プログラム実行中に一人がバグって、そのせいでプログラムが正常に走らず、下手すると全員消滅してしまう危険があるとか、そういうことだろうと解釈している)。

 この状況はもともとのトロッコ問題からはだいぶ発展したもので、プレーヤーは脱出を指導するリーダーで、その脱出作戦の遂行中に一人が足手まといになっている、というものです。
 こういう場合、リーダーは作戦を完遂する義務と責任があり、個人的な道徳観よりも、社会的責任からの観点の方が重要になります。というわけで、たいがいの人は社会的責任や義務感から、1人を殺すことを「やむを得ない」と判断するでしょう。
 これはこれで問題で、人が国家や組織から大量虐殺を命じられたとき、意外と平気で行ってしまえるのは、道徳観よりも社会的責任や義務感の方が勝るからなのですが、もちろん蛇は、そんな問題に踏み込むわけでもなく、単に「プレーヤーの道徳観はいい加減だ」と批判してくるだけです。

 まあおそらく、この蛇が前提としているのはカントの義務論信奉者であり、つまり普遍的な道徳感があると考えている人に対する批判なのでしょうけど、私は普遍的道徳なんか存在しないと考えているのだから、そこを批判されても困るんですよね。ちゃんと「普遍的道徳は存在しない」という選択肢を選んでいるはずなのに、どうも蛇にはわかっていただけない。……たぶんこのアーカイブには構造主義以降の哲学は含まれていないのだろう(笑)
 人間の道徳観に一貫性がないように見えるのは、単に観察者が一貫性を見出していないに過ぎませんし、そもそも一貫性があることが良いとも言えないわけです。
 で、本来のトロッコ問題は、その一貫性がないように見える道徳観に理論を見出そうとするためのもので、それを使って私の道徳観を批判しようとしたって、そんなの意味がないのです。もともと正しさを考える問題じゃないのですから。

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2015.7.21「『火花』が芥川賞を受賞する」

 又吉直樹の「火花」が芥川賞を受賞したというニュースは、久々に文学の話題で興味を惹いたものでした。
 この作品は読んだことがないのですが、芥川賞を受賞する前から知っていた作品ではありました。というのは、芸人の書いた小説が文芸誌に掲載されて、その文芸誌がめちゃくちゃ売れたらしい、という噂を聞いていたからです。

 文芸誌なんてのは、お高くとまってちっとも売れない雑誌の代表格みたいなものですが、高尚を気取るのもいいですけど、やっぱりある程度売れることも考えるべきじゃないのかなと、余計なお世話なことを常々思っていたのです。そんな折に「火花」が掲載されて雑誌が売れたという話を聞いたので、いいことなんじゃないかなと思っていました。読んでないので作品のデキは知りませんけど、文芸誌は変な作品は載せないでしょうから、そこそこまとまっているのだろうと推測していました。

 あと、ピース又吉というと、彼が勧める文庫本、みたいな企画が何回かあって、そのラインナップを見ていると、結構まともだったのですよね。単に有名どころだけでなく、それなりに文学をやっていないと知らないような作品も挙げていましたし。

 ただ、「火花」については、なんとなく古くさそうな作品っぽい気がして、敬遠していたのですね。どうやら私小説っぽい内容みたいですし、「純」の字が似合いそうなカビ臭い日本文学作品なんじゃないかと思えて、読まなかったのです。

 でまあ、そうしたカビ臭い「純」文学が芥川賞を受賞するのは、全く珍しいことではありません。――数年前までだったら。

 石原慎太郎が審査員を務めていた頃までの芥川賞だったら、「火花」が受賞したと聞いても何とも思わなかったはずです。しかし今の審査員には奥泉光がいるんですよね。もし彼が高く評価したのであれば読む価値がありそうです。
 しかし一方で、政治的理由で「火花」が受賞した可能性もあります。というのは、確か記憶によると、あの作品を掲載したのは『文學界』で、『文學界』は文藝春秋が発刊しているのです。で、芥川賞を主催しているのもここ。となると、雑誌の売り上げに貢献しまくった作品が受賞するのは自然なことと言えるでしょう。その場合、私があの作品を読む必要はなくなります。

 今のところ、図書館に行ってまで選評を調べる気はないですし、どっちにしろ『火花』は貸し出し中でしょう。気長にネットで情報が流れるのを待ってます。

 ところで、ネットで調べた感じだと、このことは結構大きな話題になっているみたいですね。古舘伊知郎や岡村隆史が余計なことを言ったとか、Amazonのレビューが大変なことになっているとか。
 文学の権威が崩壊した現在、芸人が文学小説を書いて文学賞を受賞したってどうってことないと思うのですけど、未だに文学に権威を求める人が多いのには驚きました。小説なんかありがたがってもしょうがないのですけどね。

[2015.8.12 追記]
 審査員の評価を確認しました。「火花」に対する奥泉の評価はほぼ予想通りでしたし、他の審査員の評価からも、古風で、新人らしい野蛮さのない作品のようだと思われます。読まなくていいと判断。

[2015.8.17 追記]
 受賞前からすでに単行本が売れまくっていた芥川賞受賞作品は珍しいかもしれません。
 芥川賞は文学の活性化や本を売るための宣伝として設けられた賞で、無名の新人を発掘して売り出そうとする傾向があります。それを考えると、又吉にとっては芥川賞なんか、特に必要なかったとも言えるかもしれませんし、厳密には候補から除外されるべき作品だったともいえます。とはいえ、あれだけ雑誌をたくさん売ってくれた恩がある以上は、主催としては候補から外すなんてことはできなかったでしょうけど。それに、半期に2人まで受賞できるわけですから、大人の事情で一人くらい受賞したってどうってことないとも言えます。世間では無駄に高尚な賞だと勘違いされていますが、本来あんなのはお祭りみたいなものですからね。

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2015.5.17「SRS-X33入手」

 ソニーのBluetooth対応ワイヤレススピーカー、SRS-X33を入手しました。もともと親が買ったもので、使いこなせなかったらしく、引き取ったのです。

 私は外で音楽を聴くことはなく、あったとしても車の中だけなので、この手のスピーカーはさほど必要としていません。家ではヤマハのMSP5を使っていますし。とはいえ、どこでもワイヤレスで音を鳴らせるスピーカーは何かと便利ではあります。

 ともあれ、スピーカーにとって最も重要なのは音質なので、さっそく鳴らしてみることに。なお、後述しますが、Bluetooth接続すると音質が変化するので、以下のスピーカーの出音に関する話は、パソコンのオーディオインターフェース、UA-4FXとSRS-X33を有線接続して、Windows Media PlayerでCDを再生した際の出音についてです。

 高さ6.5cm、幅18.5cm(500mlのペットボトルサイズ)の10W+10W(+パッシブラジエーターx2)という小さなスピーカーで、どの程度の音が出るのかは興味がありましたが、意外とまともでした。小さいわりには音の出方がしっかりしています。
 ただ、左右のスピーカーの位置が近すぎるためか、若干音の広がりが足りない感じはあります。また、置き場所に対しては神経質です。置き方が悪いと、音が籠もって聞こえたり、低音が嫌な感じに響いたり、気持ち悪い定位感になったりすることも。
 パッシブラジエーターによる重低音の出力には好みがあり、変にブーストされている感じがして好まない人もいるかもしれません。特にサブウーファーを使わない人はそう感じるでしょう。私もあまり好きではないですが、そこまで強調されているわけではなく、なかなか良好なバランスです。むしろ小さいスピーカーのわりにはかなり自然に重低音を出していて、結構驚きです。
 SOUNDボタンをオンにすると音質や定位感を補正してくれますが、曲や使用環境によっては逆効果になることもあるので、使い分けが必要です。出音に問題を感じたときに切り替えたら改善されるかもしれないボタン、といった感じで捉えた方がいいでしょう。

 普通のスピーカーなら、音質についての話は以上でおしまいですが、Bluetooth対応のスピーカーの場合は、もう少し込み入ったことになります。
 Bluetoothで音楽データをやりとりする際、音楽データはA2DPというプロファイルに従って処理されます。実際どうするかというと、音楽データを一旦デコードし、エンコードし直してから送信します。その際に音質が変化するのです。
 SRS-X33の場合、A2DPで使えるコーデックはSBC、AAC、LDACの3つ。SBCはA2DPに対応してさえいれば必ず使えるのですが、音質があまり良くありません(以前は低ビットレートで圧縮する機器が多かったため音質が良くないとされていたが、最近は最大ビットレートで圧縮する機器が増えたことで音質は改善されてきたらしい)。AACやLDACは高音質なコーデックですが、送信側のA2DPが対応していない場合があります。LDACはソニーが開発した新方式で、現状では一部のウォークマンのみ対応。AACは主にiPhoneが対応しています。
 注意すべき点は、プレーヤー自身がAAC形式に対応しているかどうかは関係ない点です。再生、録音の際にAAC形式が使えても、A2DPがAAC形式に対応していなければ、SBC形式で圧縮してしまうのです。

 私が使っているスマホはSH-01Fで、A2DPのコーデックはSBCとaptXのみ対応です。つまり、BluetoothでSRS-X33と接続すると、楽曲データはSBC形式で圧縮されることになります。圧縮を避けるには有線接続する方法がありますが、その場合はスマホのしょぼいアンプを通すことで音質が劣化します。となると気になるのは、スマホとの有線接続とSBC形式での無線接続と、どっちがマシなのか、ということ。というわけで実際にやってみましたが、圧倒的に無線接続の方が音質がいいです。
 世間では評判の悪いSBC形式ですが、私が聴いた感じでは、全然問題の無い音質が保たれているようでした。一部の曲でハイハットやシンバル、スネアの高音部が潰れて聞き苦しくなったりしましたが、ほとんどの曲は問題なく再生されるため、特別AACやLDACにこだわる必要もないかな、と思います。 もちろん、UA-4FXと有線接続してCD音源で聴くのと比べたら違いは明らかで、全体にざらつきのある音質になりますが、聞き比べたりしなければ、そこまで問題があるように感じる人は少ないんじゃないでしょうか。

 また、SBC形式の特性なのか、別の要因なのかはわかりませんが、無線接続した場合の音は、元の音質と比べると、全体に厚みを増したような、補正されたものになっていました。特に重低音がブーストされているのは誰でも聞き比べやすいのではないかと思います。原音に忠実な感じではなくなりますが、問題になることはほぼないように思います。むしろ補正された音の方がいいように聞こえる人も多いでしょう。

[2015.5.21 追記]
 家電屋に行く機会があったので、aptX対応のSRS-X5とSH-01F、LDAC対応の新型ウォークマンとSRS-X33の音質を確認してみました。
 まず、SRS-X33では高音が潰れた楽曲を、SRS-X5にて、SBCとaptXで聴いてみました。SBCだとやはり高音が潰れ、aptXでは問題なく再生されました。ついでに新型のSRS-X55の音も確認しましたが、こちらはaptX対応ではないため、SBCでエンコードされ、高音部が潰れます。Androidユーザーは旧型機の方がよりいい音質で聴けるという、謎なことに。今回のX33は引き取ったものなので選ぶ余地がなかったわけですが、もし私が自分でBluetoothスピーカーを買うのだとしたら、aptX対応のX5を買ったろうと思います。

 次に、ウォークマンとSRS-X33をLDACで聴くことに。こちらは自分の楽曲を使うことができないので単純な比較はできませんが、SBCやパソコンとの有線接続と比べて、音質がそこまで向上しているような感じはしませんでした。そもそもスピーカーのパフォーマンス以上の音は出せませんしね。高音が潰れるということがないのはいいのですけど。X33の音質が大きく向上するようなら新型Aシリーズを買うことも検討していたのですけど、これならわざわざ買う必要はないです。

 ついでに、ハイレゾ音源+ハイレゾウォークマン+ハイレゾヘッドホンという組み合わせでの試聴もできたので聴いてみましたけど……MP3の198kbpsや256kbpsクラスの音と比べて、とりわけ違いがあるようには感じませんでした。だいたい外で聴くなら、今回試聴した環境のように周囲に雑音があったりするわけですし、家で聴くならそこそこの音質の音源とモニターヘッドホンやモニタースピーカーで充分のような。
 ただまあ、今回試聴したハイレゾ音源対応の楽曲が、そもそもハイレゾの音質を必要としているのか、という問題もあると思うのですけどね。そもそもハイレゾ音質が必要な曲って、あるのだろうか。

[2015.6.1 追記]
 高音が潰れた楽曲についてですが、MP3の128kbpsでエンコードされたデータでした。このデータはそのまま聴く分には音は潰れないのですが、SRS-X33の無線接続ではSBC形式で再エンコードするわけで、その際に低ビットレートの音源だと劣化が激しくなるのかもしれません。
 そこで、256kbpsでエンコードしたデータと差し替えてみたところ、音の潰れはなくなりました。また、音質自体も向上し、SOUNDボタンを押したときの音質補正も、高ビットレートの方がきれいにかかるような気がします。
 Bluetooth接続で音楽を聴く際は、高ビットレートの音源を用意した方がいいようです。

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2015.1.20「ホームページ・ビルダーの動作が重い」

 タイトル通りですが、ホームページ・ビルダーを2001から19に変えて後、妙に動作が重いなあ、と思うことが多々ありました。
 私は基本的に、ネタの種(2005年もの。まだ使ってる)で文章を書いてからビルダーにペーストしているのですが、ビルダーで直接文章を修正する際、打った文字の表示が遅かったり、カーソルが思うように移動してくれなかったりと、いろいろ不具合があったのです。
 もともとはボールペンのページを更新しているときによくあったことで、あれは1ページに情報を詰め込んでいるので、ある程度仕方ないと思っていました。
 しかし、この雑記のページを修正する際にも同じことが起きたので、これは変だと思いました。いくらなんでもこのページが重いのはおかしいでしょう。まだ2つしか記事がないですし。
 そこで、ネットで情報を調べてみると、どうやらビジュアルサイトビューとかいう機能が悪さをしている可能性があるのだとか。その名の通り、ビジュアル的にサイト構造を表示する機能のようですが、ページ数が増えてくると重くなってくるそうです。そもそも利用したことのない機能なのですが、利用してなくても勝手に動作するのですね。

 ツール→オプション→ビジュアルサイトビューで、展開レベル「エラーのあるページまで展開」のチェックを外すことで、私の場合は動作が軽くなりました。それでもまだ重い人は、いっそ階層1、表示しない設定にすればいいだろうと思います。どうせほぼ使わない機能でしょうから。

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2015.1.11 Steam版"Borderlands: the pre-sequel"

[2015.1.24 改稿]
 とりあえず全キャラで1周し、Claptrapで2周目クリアしたので、全体を書き直します。

"Borderlands: the pre-sequel"をプレイ。
 今作は前作の前日譚となっており、当時はまだHyperionのエンジニアだったJackが、Pandoraの月にあるVault探しをしようとVaultハンターを雇ったところ、Dahlの軍隊に襲われ、宇宙基地Heliosを奪われます。そのHeliosを奪還するためDahl軍と戦うのが主な内容となっています。
 プレイヤーキャラは4人とも過去に登場したキャラで、内2人は前作ではボスとして登場したキャラとなっています。そしてついに今作では、うるさいゴミ箱(Claptrap)が使えるように。

 基本的なシステムは従来通りですが、月やHelios内部の多くは低重力・真空空間となっており、酸素残量に気を付けながら戦う必要があることと、その酸素を使って2段ジャンプやスラムを行うことができるようになったことが大きな変更点です。
 属性攻撃についても変更があり、スラグ属性がなくなった(当時はスラグ武器が開発されていなかった)代わりに、氷属性が追加されました。氷属性は敵を凍結して動きを封じることが可能で、凍結中の敵を近接攻撃か爆発属性で攻撃すると、ダメージボーナスがあります。また、真空中では延焼効果が起きないため、炎属性の扱いが難しくなりました。

 武器のシステムは従来通りですが、ドロップでレア以上の装備が出現しにくくなっている代わりに、自販機のタイムセールで必ずレア以上の装備が売られるようになりました。相対的に金の価値が上がっています。
 また、グラインダーに装備を3つ投入することで、新しい武器を1つ生成することができるようになりました。同じくラスの装備を3つ投入すると、確率でひとつ上のランクの武器が手に入ることがあります。ムーンストーン(前作でいうイリジウム)を投入すると確実にひとつ上のクラスの装備が手に入るようになりますが、組み合わせによってはムーンストーンを投入できず、ランクアップを確定させられない場合もあります。

 レジェンダリ武器については、ドロップ率は相変わらず低いものの、自販機での入手確率はやや上がっている印象です。紫装備3つをグラインダーに投入することでレジェンダリ装備ができる可能性があり、レジェンダリ3つ投入することで、別のレジェンダリをランダム生成できます。
 また、いらないレジェンダリ2つと紫1つにムーンストーンを投入すると、狙ったレジェンダリを確定で出せます。ただし、一部のレジェンダリ武器(クエストなどで確定で手に入るレジェンダリ武器など)をグラインダーに入れたときはムーンストーンを投入できません。

 その他の部分では、プレイヤーキャラがよく喋るようになっています。前作まではほぼ無言だったため、このシリーズの濃いキャラクター達の中で個性が埋もれがちだったのですが、その点が今作ではある程度改善されています。ただ、スキルの発動時のセリフ等で、イベントのセリフがキャンセルされてちゃんと聞けないことがあったりするので、その点は改善して欲しいところですが。

 ゲームバランスについては、調整が雑な印象を受けます。前作は前半から結構難易度の高いゲームではありましたが、今作は難しいというよりは雑というべきです。

 まず、チュートリアル的な最序盤で、シールドがないのに炎のレーザーを撃ってくる敵が出てきます。延焼すると即死する。せめてシールドが手に入ってから出てくるべきではないかと思うのですが。
 次に、チュートリアルを除くと最初のボスであるDeadliftが、やたらと戦いにくいです。高低差のある複雑な戦場でジャンプ台を使って戦うのですが、Deadliftがぴょんぴょんどこかへ行ってしまってなかなか捕まらない上、誘導性とダメージのでかい雷球を撃ってきますし、捕まえたら捕まえたで、床に電気を通してきたりする。中盤の壁として登場するならともかく、いきなりこれはない。
 また、序盤からコロッシブ属性が弱点の強敵が出てくるのに、前半ではコロッシブ属性の武器が手に入りにくくて無駄に苦戦を強いられたりします。
 しかし、それよりなにより鬱陶しいのは、敵が無駄に多すぎることと、その配置や登場の仕方も変なことです。砦や門みたいなところに敵が多いのはわかるのですが、今作は野良だろうがなんだろうが、とにかく無駄に敵の数が多くなっています。4人プレイを前提にした数なのか知りませんが、それならそれで、ソロなら敵の数が減るなどの調整が欲しいところ。
 あと、敵のスポーン地点から少し離れた位置から敵を一掃して、そこに近づくと、また敵がわらわら沸いてきて囲まれることがあります。前作では、配置された敵を攻撃したら隠れている敵が出てくるようになっており、配置された敵を倒すと、新たに敵が補充されるということはありました。しかし、近付かないと出てこない敵がこんなにたくさん出てくることは無かったはずです。一掃したと思ったらまた同じくらいの数の敵に囲まれたりして、非常に鬱陶しいです。
 その鬱陶しさに輪をかけるのが、ファストトラベルの配置。前作では親切すぎるくらいにこまめに配置されており、無駄な移動はほとんどなかったのですが、今作ではサブクエストなどで頻繁に訪れるところにファストトラベルが無いことがあり、かなり面倒くさい移動を何度も強いられることになります。もちろん敵もわらわら沸く。
 いままでこのシリーズで、移動や雑魚戦が面倒だとか鬱陶しいと感じたことは無かったのですが(障害として厳しいと感じたことはありましたが)、今回は難しいとかそういう問題ではなく、本当にただ鬱陶しいです。サブクエストをこなす気が失せるほどに鬱陶しい。かといって、サブクエストをやらないと敵のレベルに付いていけないので、やらざるを得ないのですが。
 その他細かい点では、武器を十字キーに割り当てられる数がメインストーリーを進めることで増えるのは従来通りで、そもそも序盤で上下2つのみに制限すること自体がナンセンスで、いい加減最初から上下左右4つ持てるようにして欲しいですが(全キャラでプレイするとき面倒くさい)、その増えるタイミングが今作ではおかしく、後半に差し掛からないと3つ目が解放されません。前半のボスがトリッキーで、属性攻撃切り替えや武器持ち替えが重要なのに、ずっと2つに制限されるため非常に戦いにくい。

 クラスについては、前作のDLCで追加されたGaigeのように、どのクラスもスキルの伸ばし方によって戦法が大きく変わる可能性があるようになりました。スキルツリーは1階層浅くなり、最終スキルを取りやすくなっていますが、反面、特定のツリーに特化するとバランスが悪くなるようにもなっており、スキルの取り方が悩ましいようになっています。この辺は面白い改良点だと思います。

 ストーリーについては、今作の主人公格であるAthenaがLilithに捕らえられ、尋問を受けて過去のHelios奪還戦を回想する、という形で語られるのですが、Lilithはその奪還戦に参加しているため、Athenaの話のほとんどはすでに知っている内容のはずです。そのため、なぜ彼女が尋問しているのか、さっぱりわかりません。

 本作は本来、前作のDLC4でTiny TinaやLilithがTRPGして遊んでいる裏で、"2"のプレイヤーキャラがAthenaを尋問していた時の内容だったはずです。ですから、尋問するのは"2"のキャラでなければならないはずです。しかし、なぜか本作では尋問者がLilithに変わっています。そのせいでいろいろとつじつまが合わなくなっているのです。
 なお、2周目では聞き役がLilithからTiny Tinaに変わるのですが、こちらの方がむしろ自然です。

 新キャラも何人か登場し、特に主要なところでは医者(前作で言うDr.Zed)や車屋(前作のScooter、Ellie)が新しくなっていますが、前作までのキャラがあまりにも濃すぎることもあって、印象は薄いです。充分イカれてはいるのですが、イカれた人しか存在しないこの作品の中ではまとも過ぎる(笑) もう少しキャラを際立たせるようなサブクエストなどあったら良かったような気もしますが。ただその分、Jackを初めとした前作から続投しているキャラや、サブクエストで一回限り登場する連中が個性を発揮してはいます。

 総評としては、今までの作品に比べると雑な感じがしますし、シリーズ物のくせに変に退化して面倒になった部分が目立ちますが、まあまあ悪くないゲーム、といったところです。ストーリー的には前作をプレイしていないと付いていけない感じで、そのくせ前作のプレーヤーからしたら、面倒になった部分が鼻につく仕様なので、どの辺を狙っているのかいまいちわからない感じもします。
 このシリーズをプレイしたことがないなら、この作品からよりは無印か"2"の方を勧めますし、"2"のプレイヤーに本作が勧められるかというと、あんまり積極的には勧めたくない感じはあります。
 ただ、買ったら買ったで、それなりに遊べるゲームではあります。従来のNPCやボスが使える番外編くらいに考えるのがいいのではないでしょうか。Claptrapや前作ボス達が使えるだけでも充分、という考えもあるでしょう。
 しかし、いっそのことJackを主役にした完全悪役ゲーにして、プレイヤーキャラからAthenaを削ってJack自身を選べるようにし、ヘリオス戦後、Tassiterを血祭りにして(Merifなんかより、Tassiterをぬっ殺すクエストが欲しかった。こいつが依頼してくるサブクエストがクソ面倒でしたし、言動もムカつくし)Hyperionを掌握後、New Heavenに攻め込んでラスボスはRolandとLilithとか、そこまでやり切った方が良かった気もします。

 以下、各プレイヤーキャラクターについて。

 Athenaは初代のDLCで登場したキャラですが、Xbox360の日本語版ではDLCが発売されなかったので、知らない人も多そうです。本作の語り手となっており、一応主人公ということになるのでしょうけど、Borderlandsシリーズの主人公は使いづらいという伝統を受け継ぎ、なかなかクセの強いキャラになっています。
 剣と盾による接近戦を得意とし、電撃と炎のエレメント攻撃も得意です。また、ヒーラーとしての役割を担うキャラで、CO-OPでは心強いです。ただ、剣にしろ銃撃にしろ、重い一撃を繰り出すことができないため、ソロでは火力不足と弾薬不足に悩まされます。

 アクションスキルのAspisは盾で、構えている間は前面の攻撃を防ぎ、最後にブーメランのように飛ばして敵にダメージを与えます。一対一の状況に強く、一方的に攻撃できるようになりますが、Aspisを構えている間はスコープを使えないという欠点もあります。また、Athenaはアクションスキルのクールダウンを短縮するスキルを持っておらず、クールダウン中をどう凌ぐかが問われます。

 序盤のスキルの振り方ですが、まずはファランクスツリーを伸ばしてヴァンガードを取るのがいいかと思います。アクションスキルを発動することでライフが回復するようになり、何かと便利。その後は、そのままファランクスツリーを伸ばしてユナイテッドフロントを取るか、ケロニックストームツリーを伸ばすか。ユナイテッドフロントはAspis発動中にシールドを回復できるようになるスキルで、ヴァンガードと合わせると強力な回復手段となり得ますが、立ち位置に気をつければAspis発動中は被弾せずに済み、自然とシールドも回復しますから、特に必要ないと考える手もあります。その場合はケロニックストームツリーを伸ばしてギャザリングザテンペストを目指します。

 2周目以降のキャラメイクは、大きく分けて二通りで、ケロニックストームとファランクスツリーの両立を目指して射撃戦主体のキャラメイクにするか、ザイフォスツリーに特化して接近戦主体の戦い方にするかでしょう。

 ザイフォスツリー特化の場合は、ガン=カタ、クラリティオブパーポス、オメガセンシュ、レンド、ティア、ブラッドラッシュと取って、とにかく火力を重視したいところです。オメガセンシュは一見微妙なスキルですが、あるのとないのとでは火力が段違いです。Athenaは火力不足が常に課題となるキャラですから、ダメージアップできるスキルの優先度は他のキャラよりも高いです。
 あとは回復手段として、ヴァンガードかブラッドラストのどちらか、もしくは両方が欲しいところ。ヴァンガードの方が安定してライフを回復できますが、ブラッドラストは敵を2、3体出血させて放置すればかなりの回復力を得られます。倒してしまったら回復しないという点が難しいですが、うまく使えば瀕死状態からの立て直しが容易になります。立ち回りに自信があるならブラッドラストだけでも充分ですが、両方ある方が安定します。
 回復手段を確保したら、今度はケロニックストームツリーを伸ばしてギャザリングザテンペストを取ります。Athenaは剣の威力だけでは敵を倒すほどのダメージを与えられないため、射撃を絡める必要があるわけですが、接近戦でのろのろとリロードするのは致命的です。フューリーオブアリーナでもリロード速度は伸びますが、敵を何体か出血させておく必要があり、いちいち状況を作ってから本命の敵と戦うというのは現実的ではありません。無条件で発動するギャザリングザテンペストの方が有効でしょう。
 なお、3周目になると敵が強すぎて、近接攻撃ではちっともダメージを与えられなくなりますが、それでもブラッドラッシュは、敵に強力なデバフをかける手段として、依然として強力です。

 射撃戦主体の場合、どのツリーの最終スキルも絶対必要、ということがないため、ポイントの振り方の自由度が高いです。多くの人はラスオブゴッデスとZEUSレイジの両立に魅力を感じるでしょうけど、それよりも重要なのはガン=カタとオメガセンシュです。ケロニックストームツリーは、射撃速度やリロード速度を向上し、エメレンタルダメージを増やしてくれますが、射撃ダメージそのものは伸びません。それを補助するためにオメガセンシュは取っておきたいです。


 Nishaは、前作では名前が明かされることなくサブボスとして登場したキャラです。アクションスキルのショーダウンでオートエイム(ちゃんとクリティカルを狙う)&銃の性能が全般にアップするという、攻撃特化型のキャラ。火力強化系のスキルが充実しており、アクションスキルと絡めれば、一瞬で敵を全滅させることも可能。一方で協力プレイ向けのスキル、エレメンタル属性強化スキルはなく、ライフやシールドの回復スキルはクセがあって扱いにくいです。序盤は回復手段の乏しさに苦しみますが、だんだん高火力で敵を瞬殺できるようになり、楽になってきます。
 Nishaの火力源の多くはキルスキルのため、ボス戦ではまず適当にザコを倒し、キルスキルを発動してから本命を狙う、という戦い方になると思われます。
 スキルやMODは無属性の銃、特にJakobs製銃との相性が良くなっていますが、Beamタイプのレーザー銃やフルオート銃とも相性が良く、必ずしも無属性やJakobsにこだわる必要はありません。ただし、Hyperionの銃は撃つ度に照準がブレるために相性は良くありません。

 一周目のスキルの振り方は、まずはボナファイド・グリットを取り、ルースレス→ボトル・オブ・カレッジと取ってライフとシールドの回復手段を得ると楽です。スナップショットは二丁拳銃(ワンフォーイーチ)の際に重要になってくるスキルで、序盤はポイントを振る必要はありません。Lv26になって最終スキルを取れるようになったら、リセットしてどこかのツリー特化に。
 ファン・ザ・ハンマーの最終スキルは常時二丁拳銃になる強力なスキルであるものの、ピストル以外の武器では無意味ですし、また、このスキルを活かすにはスナップショットと併用したいので、一周目はライフルウーマンの特化がいいかと思います。
 ライフルウーマンの最終スキルは、説明文の印象以上に強力なスキルで、特にショーダウン終了時の爆発はダメージが高く、一周目ならたいがいのザコ敵を倒します。つまり、ショーダウン中にとにかく走り回って敵に一発でもダメージを与えておけば、終了時に敵を一掃できることもある。また、ショーダウン中に自分がダウンすると、その時点で起爆するので、それで敵を倒してセカンドウィンドを取れることもよくあります。
 ロー・アンド・オーダーツリーを伸ばすなら、せめてブラッド・オブ・ギルティが取れるようになってからにしたいところ。ブラッド・オブ・ギルティがないと、ダメージを受けるかスラムでしかorderスタックが増えないので、なかなか難しいものがあります。ブラッド・オブ・ギルティを取り、単純に敵を倒せばスタックが得られるようになると、わりと攻防ともに充実してきて、扱いやすくなります。

 2周目以降は、強力なピストルがあればファン・ザ・ハンマーツリー特化、そうでなければ別のツリーを伸ばす、ということでいいでしょう。Jakobsのレジェンダリピストル、Maggieが手に入ったら二丁拳銃で決まり。ファン・ザ・ハンマーツリー特化のNishaは、Maggieさえあれば他の武器は要らないくらい強いです。Maggieがないならファン・ザ・ハンマーツリーにこだわる必要もあまりありません。
 無属性武器のクリティカルに炎ダメージを追加するホットリードは、炎の価値が相対的に下がった本作ではイマイチ魅力的に見えませんが、トゥームストーンと組み合わさったときの火力アップは馬鹿にならず、空気のあるところではものすごい勢いで延焼します。無属性武器で戦うスタイルの場合、シールドは比較的簡単に破れますが、ライフが削りにくいことがままあるので、炎属性を追加しておくのは意外と有効です。特に3周目では重要なスキルになり得ます。

 キャラクターについては、後にJackの彼女となり、"2"のボスとして登場するだけあって、特に後半は悪役っぽい言動が多くなります。このゲームのシナリオ自体がAthenaを基準に作られているので、NishaやWilhelmのキャラクター性と合わない感じがする部分もあるのですよね。本当なら途中でシナリオ分岐すべきだと思うのですが、ゲームの仕様上、それができないのが難点。

 Wilhelmは前作でRoland達から異様に強い強いと怖れられていたわりに、実際出てきたら大したことなかったボスです。前作ではほとんど機械化しておりましたが、今作では人間に近い姿での登場。……"2"よりこの時の方が強い気がする(ただ、あのときJackはWilhelmを捨て駒として使ったみたいなので、実力を発揮できていなかった可能性はある)。

 アクションスキルが(1周目なら)素のままで充分強力なのに加えて、スキルもバランスが良く、火力特化も防御特化もバランス型もお手のもの。あまりにも優秀なスキルが揃っているので、どう育てるか迷ってしまうほど恵まれています。
 他のキャラだと、ある特定のスキルを最大限活かすためにビルドを組むことが多いですが、Wilhelmは特化しようとするとかえって悩ましいことが多く、状況に応じて柔軟に戦えるビルドを目指した方が戦いやすいです。
 基本的には中〜遠距離からの射撃戦を得意としていますが、サイバーコマンドツリーに特化した場合は、近距離戦で敵の攻撃を受けながら暴れるスタイルにもなれます。
 ただ、ライフ回復手段に乏しいという、意外な弱点もあります。基本的にはアクションスキル発動中のSaintによる回復だけが頼りで、ピンチの時に一気に大回復するような手段を持ちません。そのため、調子に乗って押しまくっていたら、いつの間にか死にかけていたということもままあります。
 銃や属性攻撃の得意不得意がなく、特定の武器で劇的に強くなるわけでもなければ、特定の武器がないことで苦戦することもなく、その点では扱いやすいキャラと言えます。一応、レーザー銃やコロッシブ属性との相性がいいですが、そこまで強調されているわけではありません。

 アクションスキルのWolf & Saintは、攻撃役と回復役の飛行型ドローンを召喚し、回復と攻撃を行わせます。前作のGaigeのデストラップほど囮役にはなりませんが、あまり敵から狙われないことが幸いし、特にザコ戦ではWilhelm自身は安全なところに隠れ、Wolfに戦わせるだけでも結構なんとかなったりします。ボス戦ではWolfがやられやすくなるため、さすがにドローン任せではいかなくなりますが。
 Saintの回復能力は、1周目では素のままでも強力ですが、2周目から物足りなくなってきて、ライフが尽きかけたときの緊急回復手段としては使い辛くなってきます。これは、ドレッドノートツリーのエナジャイズを取ることである程度改善します。2周目以降はエナジェイズの5振りはほぼ必須となるでしょう。

 序盤のスキルポイントの振り分けについては、1周目はドレッドノートにポイントを振るほど回復面で困ることはないでしょうから、ハンターキラーツリーに特化しても問題ないと思います。回復面で厳しくなってきたと感じたらポイントを振り直して、エナジャイズを取る。
 2周目以降のキャラビルドについては、ハンターキラーツリーの最終スキル、オメガストライクを取ったらドレッドノートを掘り下げる、というのが一番簡単です。
 サイバーコマンドツリーのスキルは、特に4階層目以降がものすごく強力ですが、このツリーは、火力やシールド回復、ダメージ耐性は大幅に伸びますが、ライフ回復スキルがありません。そのくせ、このツリーの後半のスキルを活かそうとすると前線に出なければならないので、戦い方が難しくなります。劇的にライフを回復する手段のないWilhelmは、敵とは距離を置き、Wolfと連係して戦う方がやりやすいです。とはいえ、ベンジャンスキャノンの暴力的な火力は病みつきになるものがあるのですけどね。
 ドレッドノートツリーの最終スキル、オーバーチャージは、アクションスキル発動時に、自分と周囲の味方に対して強力なバフをかけるもので、特にCOOPでは強力なスキルです。ただ、このスキルを効果的に使おうとすると、アクションスキルを発動してはキャンセルを繰り返すことになり、Wolfの戦闘力をアテにできなくなります。

 キャラ的には、後にJackに付くだけあって、特に終盤の言動は悪役寄りになっていきますが、わりとサバサバしていて最もVaultハンターらしい感じがあります。えらい失礼なインタビューを受けているエコーがあるのですが、インタビュアーを殺すのかと思えばそうでもないあたりが面白いところ。仕事として殺すことに何のためらいもないけど、JackやNishaのように殺しが趣味というわけでもないという。あと、自身のサイボーグ化が趣味なこともあってか、Claptrapに一番優しい(笑)

 Claptrapは、アクションスキルの効果自体がランダム(その多くが前作までのプレイヤーキャラのアクションスキルを模したもの)で、状況に合わせて戦う機転が必要になってきます。また、スキルもクセが強く、デメリットを伴うものが多いため、よく考えてスキルポイントを割り振らないといけません。
 友人のいない孤独なゴミ箱のくせにサポートスキルが充実しており、サポート専門ツリーまでありますが、仲間を巻き込んでデメリットを与えることも多く、厄介者らしい側面もきちんと再現されております。

 エクスプローシブ属性の強化スキル、敵味方巻き込み型のスキル、ダウン時の強化スキルが多いのが特徴で、育ってくるとノヴァを放ち、爆発しまくりながら特攻し、ダウンしては復活する、非常に鬱陶しくしぶとく強いキャラになってきます。ただ、ソロだと勝手に爆発しまくればいいのですが、協力プレイだと結構多くのスキルや攻撃が仲間を巻き込むので、気を付けて運用しないといけないでしょう。
 ロボットゆえに呼吸をする必要が無く、O2キットの使い方に幅が出せる反面、コロッシブ属性でとんでもないダメージを喰らってしまうデメリットも。
 また、多くのスキルにデメリットが付随することから、他のキャラ以上にビルドに合った装備を持っていることがものすごく重要になります。他のキャラでは、ビルドに噛み合っていない武器は強くならないだけで一応使えますが、Claptrapの場合は弱くなってしまうことも多々あるからです。

 アクションスキルは、ランダム(一応状況を考慮する)に様々な効果をもたらします。その多くは前作までのキャラのアクションスキルのコピーです。欲しいときに欲しいスキルが発動するとは限らないのが問題ですが、うまくはまると強力。
 スキルの中には味方を巻き込むものも多く、協力プレー時に仲間に迷惑をかける可能性もありますが、逆に相乗効果をもたらすこともあります。発動時に瞬時にライフが全回復し、発動中もライフが回復するので、スキルの効果そのものには期待せず、緊急回復手段として使う手もあります。

 ツリーは、主にエクスプローシブ属性を強化するブームトラップツリー、サポートスキルが充実しているみんな、愛してる!ツリー、ランダムで何かが強化され、それ以外は弱体化するデフラグトラップツリー。
 全体に、デメリットが付随するスキルが多いのが特徴。また、階層の深いところにあるスキルが必ずしも強力ということもなく、特に最終スキルは一見するとどれも微妙です。ただし、複数のスキルを組み合わせることで、とんでもない威力を発揮するようになっています。

 ブームトラップツリーは、エクスプローシブ属性を中心に、火力を上げるツリー。ただし、このツリーのスキルは、4階層目以降のスキルを取らないと、いまいち効果を実感できません。リロード&エクスプロード、エクスプローシブスタート、ワンラストシングを取ることで、暴力的な火力を発揮できるようになります。

 みんな、愛してる!ツリーは、CO-OP時に効果を発揮するスキルが中心ですが、ソロでもライフ回復やダウン時の性能強化など、防御面を強化するスキルが揃っています。最終スキルのハイタッチは、敵に近接攻撃されてもOK。ハイタッチされなくても発射速度以外の効果は発動するので、ソロでも取る価値はあります。優先順位は低いですが。

 デフラグトラップツリーは、ランダムでバフとデバフが決定する、ものすごく不安定なツリー。ただし、スキルポイントに対する効果としては絶大で、うまく扱うことができれば超強力なツリーでもあります。
 このツリーを真面目に使おうとすると、全種類の武器や属性を用意し、バフに合わせていちいち持ち替えたりする必要があり、いろいろ大変です。
 基本的にこのツリーは伸ばさない方が扱いやすいですが、セーフティーファーストだけ取っておくという手もあります。たった1ポイント振るだけで、射撃ダメージが15%減る代わりに、ライフかシールドを大幅強化し、常時回復し続けるようになります。ただし、このスキルの発動時のセリフは、ストーリー上のClaptrapのセリフをキャンセルしてしまうため、せっかくのストーリー上でのおしゃべりが聞けなくなってしまうかもしれないデメリットもあります。

 一周目のスキルの振り方は、まずはセーフティーファースト。序盤はそもそも射撃ダメージの数値が小さいこともあって大したデメリットもなく、ダウンしづらくなってだいぶ楽です。
 ブームトラップツリーは4階層目が取れるあたりから真価を発揮してくるので、序盤はソロでもみんな、愛してる!ツリーを伸ばした方が有効でしょう。
 Lvが上がり、火力不足に悩まされるようになってきたあたりでスキルを振り直し、セーフティファースト+ブームトラップツリーのリロード&エクスプロード、エクスプローシブスタート、ワンラストシングあたりを取っていきます。
 キルボットを使うにしろ使わないにしろ、Claptrapはシールドのはがれやすいキャラなので、シールドはエピックの高出力Tediore製が是非とも欲しいところです。Tediore製シールドとセーフティーファーストのシールド性能アップが重なると、よほどの攻撃を食らわない限り破られない無敵シールドになります。
 あと、Lvやレア度は低くてもいいので、JakobsかDahlのリロード速度が1.6以下くらいのピストルをひとつ持っておくと、1発撃ってはリロードを繰り返すだけでリロード&エクスプロードとエクスプローシブスタートを発動させることができるようになり、なにかと便利です。

 キャラについては、無印、2では遺憾なく鬱陶しい無能なポンコツっぷりを発揮していたくせに、今作に限っては意外なほどマトモだったりします。プレイヤーキャラということもあってちゃんと戦えるのはもちろん、言動も信じられないほど常識的。サブクエストなどで最も的確なツッコミをするのがこいつだったりします。従来通りポンコツな他のClaptrapも出てくるのですが、それに対してイライラする一幕もあって、なんだか妙な感じ。ただ、ちゃんとみんなから嫌われていて、Jackはもちろん、RolandやAthena達からも「まだ生きてたのか(明らかに死ねば良かったのに的なニュアンス)」とか「(Jackが戦闘用に改造したりせずに)破壊しとけば良かったのに」などと酷い言われようです。今作のマトモっぷりからすれば、あそこまで嫌う理由はないだろと言いたくなりますが、無印のDLC4や"2"のことを思えば、この扱いも仕方のないところ。

[2015.2.5 追記]DLC 熱闘ホロドーム

 若干迷いましたが、シーズンパスも買いました。新キャラについてはもう少し使い込んでから追記するとして、ひとまず「熱闘ホロドーム」について。
 念のため書いておきますが、ホロドームへは、ファストトラベルの一番下にホロドームの項目があるので、そこから飛ぶことで行けます。

 はっきり言えば、このDLCはつまらんです。無駄に広いドームの中で、ひたすら無駄にたくさんの敵と戦うだけ。懐かしの敵が出てきたり、ドーム内の仕掛けが作動するなどのギミックも多少ありますが、期待してはいけません。ボスラッシュとかあったら面白かったんですけどね。Lvキャップ解放用のDLCで、ホロドームはオマケと考えた方がいいです。

 ただ、前作プレイヤーキャラのAxton、GaigeとAthenaとの会話がちょっとだけ入るので、それを聞きつつLv上げする、と考えれば、全くダメとまでは言いません。ただ、"2"のDLCがかなり良かったことを考えると、この内容の薄さはないと思いますがね。

 Axton、GaigeとAthenaとの会話の内容は、主に本作のダイジェスト版です。つまりはHelios奪還戦の話。本編レビューで書きましたけど、本来Athenaの聞き役は、Lilithではなく"2"のキャラでないと変です。つまり、私がこうだったら良かったのに、と思っていたのが、ダイジェスト版とはいえ、そのまんまDLCに入っているのです。なぜ本編でこうしなかったのでしょう? ますますわからん。
 ちなみに、ホロドーム自体は面白くないですが、キャラの会話はなかなか面白いです。ボリュームは少ないですけどね。……なぜ本編でこうしなかったのか(笑) こうなると、本作におけるLilithの存在意義が本当にわからなくなってくる。邪魔でしかない。制作スタッフはLilithが嫌いなのでしょうか。

 なお、台詞や雰囲気などから、ホロドームのラストでAxtonやGaigeと戦えそうな感じがしますが、実際は出てこないので期待しないように。出てきたらそれだけでも1000円分の満足感はあったと思うんですけどね。つまらん。

 個人的には、AxtonとGaigeのセリフが聞けたことと、レベルキャップが解放されたこと、あと、とりあえずレベル上げの場ができたことで、いちおうぎりぎり1000円分の価値を見出しておくことにしました。ただ、他人には勧めません。

[2016.5.10 追記]

 いまさらですが、ようやくDLCキャラでひととおりプレイしたので。

 Jack(影武者)は、自身はスキルを取ってもあんまり強くなりませんが、アクションスキルのDigi-Jackがかなり強力なキャラです。自分の周囲に2体の影武者を生成するわけですが、倒されたり、自身がDigi-Jackから離れたりすると、再び自分の周囲に再生成されるのが特徴。つまり、アクションスキルの発動時間内なら無限に2体のおとり兼支援射撃を得られるわけです。特にソロプレイだと、おとりが2体も生成されるのはかなり有り難い。
 ライフ回復手段が多く、防御面では優れている一方、火力はイマイチで、スキルツリーを後半まで延ばせるようになるまでは火力不足に悩まされるところがあります。最終スキルを取れるところまで来ると火力も充実し、攻防共に優れたキャラへと変貌します。
 スキルの多くが武器の種類や属性を限定しないため、なんでも使えるのが利点(特化した強みはないとも言える)。また、グレネードを強化するスキルが多いです。
 Jackが強いのはDigi-Jackあってこそなので、クールダウン時間をどうしのぐかがこのキャラを使う上での最重要課題となります。とはいえ、おそらくソロでは一番使いやすいキャラであり、全キャラの中でもトップクラスの性能を誇ると思います。

 スキルツリーは、ヒーローストーリーとグレーターグッドは主にDigi-Jackの強化。エンタープライズはJack自身の強化となっています。
 ヒーローストーリーはDigi-Jackを長く生存させることで恩恵を得られるツリーで、グレーターグッドは逆に、Digi-Jackを再生成しまくることで恩恵が得られます。効果が相反しているスキルがあるため、両方伸ばす際は相性に注意が必要。もちろん両立も可能で、組み合わせ次第ではものすごいことに。
 エンタープライズは、地味ですがJackの能力を伸ばすスキルが揃っています。ただし、武器の交換やメーカー限定、お金を拾うなどの妙な条件が付いているものが多い。他のツリーが強力なので優先度は低いですが、特にツリー後半になかなか強力なスキルが揃っています。

 1周目はヒーローストーリーかグレーターグッドを伸ばして、最終的にはグレーターグッドの最終スキル、リーダーシップを取るのがいいかと思います。リーダーシップは一見何がなんだかわからないスキルですけど、敵を倒さなくてもキルスキルを発動し続けられる上に、敵がいなくてもセカンドウィンドを取れるようになるので、ものすごく強力です。1周目ではポイントが足りないでしょうけど、2周目以降、これとベストフットフォワードを組み合わせることで、アクションスキル持続時間を延ばしながら戦い、ベストフットフォワードの効果が弱まってきたところでアクションスキルを解除することで、ほぼ常時Digi-Jackを出し続けることができるようになります。ものすごく強い。



 Aureliaは、氷属性による凍結と、スナイパーライフルによる遠距離狙撃を得意とするキャラです。また、ほぼCOOP専用のアリストクラシーツリーを備えていることが特徴で、仲間の一人と主従関係を結ぶことで両者に強力な回復やバフをかけることができるようになります。
 各種スタックが貯めやすいキャラでもあって、長期戦になればなるほど、凍結率やクリティカルダメージを高くしやすくなります。スタックを積み上げたAureliaは、周囲の敵を凍結させてはクリティカルの一撃で砕き、誰も寄せ付けないほど強力です。Claptrapが仲間にいるなら、彼を従者にすると、戦術的にはものすごく噛み合います。
 COOPなら、アリストクラシーツリーで防御や回復系のスキルを使えるのですが、ソロでは、不安定なライフ回復手段しかないことや、ボスが凍結しないこと、ライフやシールドを強化するスキルが無きに等しいことから、攻撃よりも回避を重視して立ち回らなければならないキャラです。シールドチャージディレイだけは劇的に改善可能ですが、シールド容量やライフ最大値を伸ばすことが出来ないために継続ダメージに非常に弱く、また、得意武器がスナイパーライフルということから、ダウン時の立て直しも難しいです(ダウン中はスコープを覗けないため)。ソロでAureliaを使う場合、ピンチになるようなシチュエーションはできるだけ避けたいところ。ザコ戦では遠距離狙撃や凍結攻撃で敵を一方的に葬ることもできますが、ボス戦はどのキャラよりも厳しいです。ただ、ラスボスの最終形態などの、弱点が狙い放題のボスは瞬殺が可能です。

 アクションスキルのコールドアズアイスは、自動的に敵に取り憑いて氷属性攻撃を行い、敵を倒すか、ターゲットを変更すると別の敵に取り憑きます。物陰に隠れて適当に発動させるだけでも自動的に敵を倒しますし、敵を凍結させることで狙撃のアシストをしてくれて便利。また、コールドマネーツリーを伸ばすことで使い勝手も向上します。ボスへの効きが悪いことを除けば、かなり強力なアクションスキルと言えます。ボス戦では取り巻きを狙うように指示すると便利。

 序盤のキャラメイクは、ソロではコールドマネーに特化したほうがやりやすいと思います。1周目はスナイパーライフルはスキルで強化しなくても充分強いですし、狙撃出来る状況なら比較的安全ですから、それよりはアクションスキルを強化して、周囲の敵を凍結させて手数を減らす方向で成長させた方が、苦しい状況を切り抜けやすくなるでしょう。コールドマネーツリーのスキルはかなり優秀で、相乗効果でどんどん強くなっていくので、1つのスキルに5ポイント振るよりも、複数のスキルを取った方が有効なことが多いです。
 1階層目のビターリポストは1ポイント振るだけで高確率で敵を凍結させられるので、これはとりあえず1ポイント振っておきたいところ。残り4をアヴァランチに。
 2階層目は、序盤はフリジットタッチの効果が低すぎるので、ショートサマーに5振っても構わないくらいです。ポーラーヴォルテックスとフラグメントレインのコンビが使えるようになったあたりでスキルを振り直して、ショートサマーのポイントを減らし、フリジットタッチに回すくらいでいいでしょう。逆に言うと、4階層目に手が届くくらいまで育てないと、ろくなライフ回復手段がないのがAureliaの辛いところだと言えます。これはハントレスツリーを伸ばしても同じです。マジックブレットは4階層目のスキルですから。
 3階層目のフラグメントレインはもちろん習得。
 4階層目の目玉はポーラーヴォルテックス。フラグメントレインとのコンビで効果絶大。あと、コールドアドバンスには1だけでも振っておくと、連射武器でのクリティカル連打で結構アクションスキル発動時間を引き延ばせます。フロストバイトも強力なスキルで、氷属性のダメージを上げられ、つまりはこのツリーのスキルの効果を全体的に引き上げるわけですが、そろそろフリジットタッチに5ポイント振りたいので、あまりこのスキルにポイントを振る余裕はないでしょう。
 5階層目はウィンターズベールに1振るだけで充分ですので(これも凍結率が高い)、残りはこれまで中途半端に振っていたスキルに分けるといいでしょう。最優先はフリジットタッチへの5振り。あとはショートサマー、フロストバイト、コールドアドバンスに。
 最終スキルのウィンタータイドは、ここまで来たら是非欲しい。ツリー全体の強化になりますし、なによりフリジットタッチの効果を引き上げられるのが大きいです。

 2周目以降は、まずは最終スキルを捨ててでも、フリジットタッチとマジックブレットの両立を目指します。また、ダッチェスには1ポイントだけでも振っておきたいです。マジックブレットを使う場合、腰だめでスナイパーライフルを撃ちたい場合が多々あり、精度が高いと何かと便利です。その上で、好きな方のツリーを伸ばしていくといいでしょう。
 なお、Aureliaに限ったことではないですが、戦闘が厳しいのはBosunまでで、その後のボス戦はかなり楽になっていきます。特に、弱点狙い放題のRK5やラスボスの第二形態は、特に強力な武器がなくても瞬殺できてしまいます。

[2016.5.12 追記 DLC"Claptastic Voyage"]

 実質的にはこれが本作唯一の追加シナリオDLC。Claptrapの電子頭脳の中に入り込み、そもそもなぜ本作ではClaptrapがVaultハンターなのか、なぜあんなに嫌われているのかなどを明らかにしていきます。
 ゲームボリュームは、サブクエストまでこなすと結構長く遊べますが(何度でも受注できるコロシアムクエストもあるので)、メインクエストだけだと4時間程度。
 本編にあった欠点はこのDLCにもあり、欲しいところにファストトラベルがなかったり、たらい回しにされるつまらんクエストの展開などはあります。ただ、なにしろClaptrap絡みのシナリオなので、結構面白いです。前作や無印をプレイしていたら懐かしい場所や人物なども登場。

 難易度は結構高め。ボスが無駄に固く、無意味に長期戦になるのがいただけないですが、まあ、許容範囲ではあります。

 このDLCの見どころは、何と言ってもOverlookでの一連のイベントでしょう。なんであんなにClaptrapが嫌われているかが明らかになる衝撃の展開(笑) このイベントだけでこのDLCは買う価値があるでしょう。

 なお、現在では、DLC配信直後にはなかった、プロローグ、エピローグムービー、会話、展開が追加されています。久々にプレイしたら「あれ、こんな展開あったっけ?」と思うところがいくつかあったり。エピローグで本編でのLilithのダメっぷりにフォローが入っていたりしましたし。……制作サイドも、今作のLilithの酷さに対しては少しくらいフォローしておかないとマズイと思ったらしい。

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2015.1.8 Steam版"DARK SOULS II"

 Steamで"DARK SOULS II"が安くなっていたので購入しました。私はPS3を持っていないこともあって、このシリーズをプレイするのは初めてです。

 このゲーム、プレイして40時間くらいまではものすごく印象が悪くて、何度クソゲーと連呼したかわからないくらいでした。いっそこんなのやめて"Borderlands: The Pre-Sequel"やった方が良くないかと思ったりもしたのですが、我慢してプレイしていたらなぜだかマシになってきて、ひととおりクリアした後の感想としては、問題点もいろいろあるけど、まあまあなんじゃないかな、という感じになりました。

 このゲームの何が問題かというと、操作性です。欲しいときに欲しい動作をしてくれない。ロックオンしないとサイドステップできないですし、ロックオンすると勝手にカメラが固定されたり、ロック対象が切り替わったりして大変プレイしにくいです。そして、ロックオンしているにも関わらず、ローリングで敵の攻撃を躱し、敵の斜め後ろの位置についても、そこですぐに攻撃ボタンを押すと、明後日の方向に突きを繰り出してくれます。ローリング突きの入力時間が終わってからキャラの向きを変更して攻撃ボタンを押さないと、ちゃんと敵の背中を斬ってくれない。何のためのロックオンなのか。
 一対一の時はこれでもなんとかなりますが、敵が複数になると、ロックするとカメラがどこ向くかわからん上に自分で操作できないし、ロックしないと狙った敵を攻撃できないし(特に魔法はロックしないと当たらない)で、悲惨なことになります。そもそも、複数の敵がいるときこそロックオンシステムが必要なんじゃないのか。なんで敵が複数いる時ほど使えないのか。

 難易度が高いのは構わないのですが、操作性の不備で殺すのは難易度の問題ではなく、ただの手落ちです。快適な操作性があった上で、難しいから挑戦しがいがあるゲームになるのです。そういう意味でこのゲームはクソです。

 あと、ノックバックの仕組みが感覚的に理解できません。カウンターを入れても攻撃モーションが止まらないケースが多すぎだったり、よろめかせ易さとダメージが一致していなかったり。
 ネットで調べてみると、どうもこのシリーズ独特の仕様のようですが、こんな酷い仕様がシリーズ間で継承されているのはセンスを疑います。

 と、いろいろ問題はあるのですが(しかもわりと致命的ですが)、だから全くダメというわけではなく、面白味もあるにはあるんですよね。初見だと絶対無理だろと思われたボス戦が、見切ってしまえば意外と楽だったりとか、攻略を組み立てて難関を突破する楽しみはあって、また、その攻略方法が複数用意されているところは面白いです。私は完全な魔法使いでプレイしており、武器はダガー以外持てない有様でしたが、それでもちゃんとクリアできるようになっているのです。

 また、本編がほぼノーヒントな代わりに、プレイヤーが地面にメッセージを残すことができて、後から来たプレイヤーにヒントなりトラップなりを仕掛けられるようになっている仕組みは、なかなか面白いと思いました。
 あと、攻略中のプレイヤーの世界に乱入して邪魔をしたり、助けたりするシステムも、試みとしては面白いと思います。……ただ、現状ではお世辞にも洗練されているとは言い難いですけどね。
 私は他のプレイヤーに支援要請をしたことはなく、侵入される側しか経験していませんが、はっきり言って侵入されてもデメリットしかなく、迷惑なだけでちっとも面白くないのですよ。もう少しこっちにも実入りが欲しい。攻略が済んでいるステージで、暇しているなら相手してもいいのですけど。

 その他、このゲームをはじめてプレイする人に対して、いろいろ不親切な点も気になりました。まず、レベルアップの仕方がわかりにくい(笑) レベルアップ係の人に何度か話しかけるとレベルアップをするためのメニューが表示されるのですが、私は最後の巨人を倒して、呪縛者にやられまくるまで気付かなかったです。気付いたときには何万ソウルと消失した後。そういう基本的なところくらいはチュートリアルがあってもいいんじゃないかと思うのですが。
 あと、命の加護の指輪が、壊れるだけで消失しないのも、もっとわかりやすく説明が欲しかったです。あれを知ったのは本編をクリアしてDLC2を攻略中で、つまり、それまでずっと死んではソウルを落とし続けてきたわけですよ。……まあ、それはそれである意味このゲームの醍醐味を味わったとも言えますが。命の加護の指輪を使うようになったら、途端に死ぬことが大して怖くなくなりますからね。あと、それに関連して、生者の時にNPCがボス戦に加勢してくれることもずっと知りませんでした。知ってたら初回プレイがどれだけ楽だったか。おかげで二周目は楽勝もいいところです。最初からソウルの槍が使えて、しかもNPCが加勢するわけですから。だいたいNPCの後ろから槍撃ってれば勝てる。

"Borderlands"とかだと、強くなったキャラでより強まった敵と戦う楽しみがあるのですが、『ダークソウル2』にはそういうのがイマイチなくて、周回プレイはさして楽しくないですね。敵が増えたり強化されたりはするけど、単に面倒が増えるだけで面白さに繋がってない。面白くならない原因は、操作性の問題と、あまりにもよろけない敵が多ぎることにあると思いますけど。酷い操作性のゲームは、うまくなっても気持ち良くないですし、せっかく敵の攻撃をかいくぐってカウンターを入れても、ちっとも敵が怯まないアクションゲームは、つまらないです。近づいて戦うのが面倒で、遠くから魔法撃っとけばいいやとなってしまう。

 その他細かい点では、土の塔で風車を燃やしたら毒沼が消える理由がさっぱりわからなかったです。塔内の仕組みと毒沼との関連が、あまりにもなさ過ぎるんですよね。毒沼汲み上げポンプや毒沼製造所があるわけでもなく、土の塔と思いっきり離れたところにある洞窟の毒沼まで消えますし。呪いの像みたいなのがあって、それを壊したら消えるとかの方がまだ理解できる。
 武器の強化ができるのですが、あのシステムは要らないです。強化するには貴重なアイテムが必要で、結果的にいろんな武器を気軽に試せません。アクションゲームでそれはつまらない。変質強化だけでいいです。

 総評としては、文句もいろいろあるし、そもそもアクションゲームとしてはダメなところが多すぎですが、楽しめないわけでもないゲームです。なんだかんだ言って100時間超は遊びましたし、DLCも買ってプレイしました。ただし、初回プレイ中盤までの印象は最悪で、慣れるまでに投げ出すプレイヤーも多そうですが。
 しかし、ひととおりソロプレイをクリアして、さあ、対戦をやってみるかとか、ボス相手に華麗に戦ってみようとか思ったとき、操作性とノックバックの仕様が酷いことを再認識させられて、どうしてものめり込めなかったです。攻略ゲーとして遊んでいる内は、ある程度許容できるのですけど、純粋にアクションゲーとして楽しもうとすると、どうしてもそこがネックになる。他にもいろいろ改善して欲しいところはありますけど、この二点が改善されたら、ずいぶん良くなると思います。

[2015.2.5 追記]

 少し大きめのアップデートがあったので久々にプレイ。

 アップデート内容は、ラスボスの後にわりと弱いボスが1体追加されたのと、オンラインプレイ周りが多少変わっています。闇霊撃退時にしょっぱい報酬が追加されたり、1周目と2周目以降でもマッチングするようになったり、他のプレイヤーをヘルプしに行ったときの時間が延長されたりなど。侵入された時以外はソロでやっている私にとっては、さして意味のないアップデートではあります。

 アップデートとは全く関係ない話ですが、久々にプレイしてみたら、なぜか私の剣の使い方がうまくなっていて、そこそこ快適に接近戦で戦えるようになっていました。DLC3の敵なんか、全然ノックバックしなくてめちゃくちゃ辛かったはずなのに、2対1でも華麗に回避してガリガリ歪んだ直剣で削っていける。久々にやったくせに、今の方がなぜかうまい。"Borderlands: PS"のAthenaで斬りまくっていたからでしょうか(笑) 

 考えられるのは、私はこのゲームを180時間ほど、ずっと魔法使いでプレイしていて、刃物はダガー以外使ったことがなかったのです。だから、その戦い方が染み付き過ぎていて、剣を有効に使えなかったのかもしれません。しばらくプレイしていなかったことで、変なクセが抜けて戦い易くなったのかも。

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