数字・記号 A〜D E〜H I〜L M〜P Q〜T U〜Z あ〜た な〜わ VA その他(自主制作盤など)
4thアルバム。発売直前に、このバンド在籍のSabine
Edelsbacher(Vo)がANGRAの新作アルバムでゲスト出演したことで注目されたアルバムでもある。
キーボードによる広がりをギターリフのリズムカッティングが締める、巧みな音作りをしているバンドで、ミドルテンポでじっくりとドラマ性を重視する、かなり高度な表現力を求められるタイプの曲を見事に仕上げている。
一部でシタールを用いたりエキゾチックなメロディを扱っているのが特徴的。間違いなく実力のあるバンドで、曲の完成度も申し分ない。
ただ、このバンドの曲はマイナースケールから始まって、中盤でメジャースケールへ転調するものが多いのだが、その時の感じが個人的にはどうも好きになれない。
Tr1"Shine"はそれの典型で、不協和音ストリングスから始まって、緊張感を高めて中盤までやってきたところで、いきなり明るくしまりのない調子になるのがどうもいただけない。メジャーに移行するにしても、もうちょっとやり方があるような気が。いや、全く好みの問題ではあるが。
メジャーとマイナーをうまく取り扱っているのは、このアルバムでは数少ない疾走曲のTr8"October
Sky"であるが、これは今度は終わり方が気に入らない(笑)
そういうわけで私としては好んで聴かないアルバムになってしまったが、ものとしては決して悪くないので、エキゾチックの入ったミドルテンポの展開重視メタルが聴きたい方は試して損はないだろう。
[2011.6.26 初稿]
Todd Duane(G, B)、Lale Larson(Key)、Peter
Wilder(Ds)によるプロジェクト、Electrocution
250のアルバム。専任ベーシストが存在しないことや、「これから活動を続けていこう」という感じがあまりしない名義、このアルバム以後の活動が見られないことから、一回限りのプロジェクトだと思われる。
海外盤のジャケットは3匹のネズミが歌っている無難なものだが、日本盤のジャケだけ某ネズミ王国のマスコットキャラクターによく似た何かに電極を繋いでいる絵になっている。たぶん恐ろしすぎて北米ではこの絵を使えなかったのだろう。
ギターはメタル系サウンドなのだが、そんなの知ったこっちゃねえとばかりにキーボードはフュージョンをやっており、しかもお互い牽制し合うかのように無駄に装飾音を入れまくって超手数で弾き倒している。ドラムはそれの仲裁をやっている、といった感じ。そんな血みどろの主導権争いをメジャーキー中心のコミカルサウンドでやっているのが本作だと言える。楽器を持って仲良く喧嘩(笑) 前半の曲はキーボード優勢でMATS/MORGANっぽいが、ドラムソロを挟んで後半に行くほどギターが優勢になり、メタルというよりはロックの風味が強くなる。それに合わせてキーボードもロータリーオルガンサウンドを使っていたり。
ギター、ピアノ、ドラムのソロ曲がそれぞれ収録されているのも特徴的だが、注目はなんと言ってもTr1"Fletcher
the Mouse"だろう。「デスメタルがやりてえんだよ」と言わんばかりの高速ギターリフパートと、それを無視してカートゥーンサウンドを弾くキーボードパートが入り乱れ、変態的でありながらコミカルで聴きやすい曲となっている。
Tr4"Brainscraper"ではこの対立はより根深いものになり、メタルなギターリフの上でキーボードのフュージョンサウンドが暴れる、セッション中に音楽性を巡って喧嘩をしているような様相に。そしてついにドラムがキレる(笑)
Tr5"Dr Fluffels"はジャズに近い手法を採っており、テーマ→ソロ→テーマ……といった感じでテーマへ何度も回帰しながら曲を発展させていくようになっている。このテーマがエレクトロな感じのため、テクノっぽい雰囲気も混ざった曲になっている。
プロジェクトものだからこそできるバラエティ豊かな混ぜるな危険サウンドは、どの曲も個性的で面白い。"Fletcher
the Mouse"が強烈すぎてその印象ばかり残りがちだが、後半の骨太ロックサウンドを中心にした曲は、ぶっちぎれた感じは少ないものの、聴き所も多くてなかなか良い。
ジャケ絵でピンと来た人なら買って損はない(笑) 雑食性のリスナーならより楽しめるだろう。
イギリスのスリーピース(3人編成)・プログレバンド。高い演奏技術を持つ三人が集結して作られた、スペシャルバンドである。
三人とは思えないほどアグレッシブな演奏を行い、特にアナログシンセやハモンドオルガンを用いたサウンドは、ディストーションギターとは趣の異なるハードさを演出している。
ジャズ的要素をロックの枠組みの中で行っているのが特徴的なバンドで、ぱっと聴いた感じでは即興演奏とも取れる混沌とした演奏も、試行錯誤の上で練り込まれたものだったりする。クラシックのアレンジ曲が多いのも特徴。
キーボーディストのキース・エマーソンは、当時誕生したばかりのアナログシンセ、モーグを意欲的に使いこなし、独特の音楽性を展開した他、オルガンを飛び越えたり転がしながら弾いたり、果てにはナイフを刺したりと、ギタリストにも劣らないパフォーマンスをやってのけた。
影響を受けたアーティストは数知れず、特に日本ではゲーム音楽に大きく影響を与えている。
とりあえずのおすすめは、主要曲が網羅されているライヴ版"Ladies
& Gentlemen"。気に入った曲があれば、それの収録されているアルバムを聴いていくといいだろう。
5thアルバム。
「展覧会の絵」や4thアルバムの傾向を引き継ぎ、聖歌やクラシックからのアレンジ曲とコンパクトにまとめた曲による構成。
壮大さや野心的な試みという点では1stや2ndに劣るが、明らかに今までの作品よりも聴かせ方が巧くなっている。
ムーグシンセとハモンドオルガンを巧みに駆使した楽曲群は、今聞いても決して色褪せていない。懐かしい音色というよりは、未だに尖って聞こえる。
特に、ジナステーラのピアノ・コンチェルトのアレンジ曲であるTr2"Toccata"のムーグとオルガンの協奏は背筋の寒くなるような圧倒的パワー。もちろんキース・エマーソン1人で演奏しているのだが、ぱっと聴きではキーボーディストが2人いるように聞こえる。
Tr5"Karn Evil 9"は3部構成の曲となっているが、邦題の「悪の教典#9」という字面からは想像できない軽さ。自分たちの演奏をサーカスの出し物に見立てた第一部、キース・エマーソンのピアノメチャ弾きインストの第二部の後、本題であるコンピューターと人間との戦いを描くベタなSF風の展開の第三部へと続く。
「タルカス」のような無駄に壮大なスケールではなく、なぜ三部構成なのかもわからないようなふざけた曲となっているが、そんないい加減なコンセプトとは裏腹に、出来の方は紛れもなく傑作。
ライヴ版で聴くのもいいのだが、"Toccata"や"Karn
Evil 9"はこちらのスタジオ版の方が丁寧に演奏され、細部が聞き取りやすいのでおすすめ。
二枚組ライヴアルバム。収録曲はすべてEL&Pの代表曲であり、これを聴けばEL&Pの方向性が分かるのではないかと思う。そういうわけで、EL&P初心者にもおすすめしたいアルバムである。
「石を取れ」、「トッカータ」、「悪の教典#9」、「タルカス」と、EL&Pの名曲目白押しの贅沢な演目に加え、全体的にスタジオ盤よりもスピード感のある演奏になっており、プレイ自体も鋭くなっている。
また、タルカスの途中でキング・クリムゾンの"Epitaph"の一節が引用されているのも、知っている人はニヤリとするところ。ヴォーカリストのグレッグ・レイクは、EL&Pの前はキング・クリムゾンに在籍していたのである。
演奏者も聴者も休みなしのアグレッシヴで緊張感あるライヴを体験できる一枚。ぜひとも入手して聴いて欲しい。
2ndアルバム。EL&Pの代表作のひとつ。7曲ほど収録されているが、はっきり言ってTr1"TARKUS"こそこのアルバムの全てであり、他の曲はどうでもいい(笑)
"TARKUS"は、全長20分という長編曲。3人で演奏しているとは思えない、厚みを持った曲である。曲の展開に関しても、単にハイテクでバカ弾きしているだけではなく、バカテクキーボードワークも、聴けば意外とメロディアスであることがわかるし、曲間に時折混ざるスローテンポの部分では、泣きの入った旋律を聴かせてくれる。
ライヴ盤の"TARKUS"の方が迫力としては数段上だが、スタジオ版は音がクリアで演奏も丁寧なので、ひとつひとつの音が聞き取りやすい長所がある。また少し違った良さがあるので、「レディース&ジェントルマン」を聴いて気に入ったら、こちらの方も聴いてみると面白い。
1970年代に活動していたアメリカのプログレバンド。1stアルバムはYESのフォロワー的な音楽だったが、2ndアルバムではKing
Crimsonにフュージョン・プログレを混ぜ合わせた、独特の音楽性を披露。しかし、セールス的には失敗して解散する。
アメリカンプログレの例に漏れずETHOSも入手困難で、2枚+未発表曲集1枚のうちCD化しているのは1stアルバムのみ(他はレコード)、しかも絶盤しているという有様だった。しかし、2009年2月に1st、2ndアルバムが『伊藤政則コレクション』として数量限定で登場。特に2ndアルバムは初のCD化となる。
いつなくなるかわからないので、興味のある人は早めに買っておいた方がいいだろう。
[2009.9.16 初稿]
長らくCDが存在せず、レコードで聴くしかなかった2ndアルバム。
前作はYESのようなシンフォニック・ロックベースの楽曲だったが、本作はむしろKing
Crimsonを彷彿とさせる仕掛けが随所に施されている。特にTr1"Pimp
City"はそのまんま"Picture of The
City"のオマージュとなっている。
ただし本作は、ブリティッシュ・プログレのようにしか聞こえなかった前作に比べると随分アメリカン・プログレらしさが出ており、アメリカ特有の明るいフュージョン色とKing
Crimsonの暗さが混ざり合い、独特のカラーを出している。
本来、King Crimsonのダークなフリー・ジャズ色とアメリカン・フュージョン色、YESのシンフォニック色は決して相性の良い物ではなく、実際、YESやフュージョン色のせいで、せっかくのKing
Crimson的な緊張感や狂気が緩められてしまっている印象がある。結局、1stアルバムの方向性を引き継いで、YESっぽいシンフォニック・ロックをやっているTr6"Marathon
II"が一番デキが良かったりして、無理にKing
Crimsonを混ぜる必要はなかったんじゃないかと思わずにはいられない。
一方で、その屈折した愛情が独自性を演出しているのも事実で、この、何をしたいんだかよくわからん感がETHOSなんだ、と言えるのかもしれない。
完成度でいえば、1stアルバムの方が良くできているかもしれない。しかし、相性の良くない物でも無理矢理混ぜ合わせる野蛮な試みは面白く、独自性という点ならこちらの方が勝るだろう。楽曲としてどうかと思うところはあるが(笑) プログレ好きなら、いろいろ聴き所があって興味深い一枚だと思う。
[2008.6.1 初稿]
1stアルバム。アメリカのバンドだが、曲調はむしろブリティッシュプログレといった感じ。アメリカらしさがほとんどない(笑) 強いて言うなら、リバーブを抑えた乾いた音がそれらしいと言えるだろうか。
YESを思わせるシンフォニック・ロックをベースにしており、各所にそれらしい影響を感じさせるものの、根本的には別物。アンサンブルやスケール感よりも技巧的なフレーズの応酬に重点を置いており、猫の目のように変わる展開や複雑で力強いリズムを特徴としている。音もあまりリバーブを効かせておらず、コーラスも控えめ。
特に面白いのは、キーボードやベースはプログレらしさを醸し出しているのに対し、ドラムとギターはかなりロック寄りの音であること。これにアメリカンなヴォーカルが乗るという妙な組み合わせがETHOSの特徴であり、深みの所以である。
KANSASをはじめとするアメリカンプログレとは毛色の異なり、どちらかというとブリティッシュプログレを好む人に受けるであろうアルバムである。
ハンガリーのバンド、EVEN SONGの3rdアルバム。
収録曲は6曲で35分となっているが、Tr1のフレーズがTr5でリフレインされていることなどを考えると、交響曲のようにアルバム全体で1つの曲となっているとみなしてもいいだろう。
オーケストラやコーラス隊などの大がかりな人数や機材は使っていないにも関わらず、怪しげな旋律とピアノにストリングス、ディストーションギター、2人のヴォーカリストを巧みに使い、それに匹敵するだけのスケールや緊張感を作り出している。
もはやメタルとは思えぬほどの緻密な構成は見事としか言いようがない。
メタルをベースにしながらも、明らかにクラシックの技術に裏打ちされたポリフォニックな曲の構成は、まさしくオーケストラ音楽に使われる手法そのものである。
ダークで美しい音楽好きには是非ともおすすめ。ゲーム音楽に親しんでる人なら、けっこうはまりそうなアルバムである。
……ただ、オランダ盤しかないので、入手が結構困難。私はHMVに取り寄せてもらうのに4ヶ月ほどかかった。
ノリのいい、明るくキャッチーなメロディを基調とした音楽性と高度な演奏技術を持ちながら、その持てる技術を尽くして変な曲へと仕立てようとするバンド。いいメロディといいメロディを無理矢理くっつけて、人を馬鹿にしたような変な曲に仕上げる。
ヴォーカルは下手だが、このヴォーカルはギターを弾きながら歌っており、何気にとんでもないことをやっている。他のパートも恐ろしく巧いが、彼らの曲を聴くと「変」という言葉しか思い浮かばない。完全なる技術の無駄遣いであり、その無駄さがこのバンドの持ち味でもある。
残念なことに現在、彼らのアルバムはどれも入手困難となっている。特に代表作である"Brightleaf"は、売っているのを見かけること自体が稀で、私は10年以上探し続けてようやく中古を入手した。
Amazonでライヴ音源の"SHINE IN THE
NEVERENDING SPACE"のみMP3形式で販売している。
[2008.4.18 改稿]
EVIL WINGSのライヴ音源&映像。このバンドを映像で観ることができる日が来るとは思わなかった。CDとDVDではセットリストが異なるので、別のライヴだと思われる。
ライヴCDとライヴDVDをセットで売るという行為自体が意味不明とも言えるのだが、それにも増してDVDは妙な怪しさ全開。
バンドメンバーはみんな普通の服装をしているのだが、なぜかコーラスのMaggie
Giaffreda(リーダーのFranco Giaffredaの妻か家族か?)だけが真っ赤なマントを羽織って浮くほど目立っており、それなのに一番出番が無く、あんまり暇だからそのうち適当に踊り出すという有様(笑)
これだけでも既に充分変なのだが、ギタリストのFranco
Giaffredaは普通の服装のくせに爪だけ黒く塗っていてものすごく違和感を醸し出していたり、背中弾きなどしてみせても見た目が貧相なためイマイチ映えなかったりとヘンテコ感満載。
その上、その辺の近所で撮影しました感出まくりのヘタクソな実写映像や、演出意図のわからない変な絵がほとんど意味もなく挿入されたりする。とにかく、あらゆる面でヘンテコで自己満足的で勘違いで笑いどころ満載のライヴ映像なのである。
そんな怪しさ全開の映像なのだが、演出のこっ恥ずかしさに反して、演奏そのものはタイトで正確。EVIL
WINGSの曲は技術的に高度なだけでなく、構成が複雑で間違えずに演奏するのが大変なはずなのに、アルバムよりもスピードを増した上で、全く演奏が乱れることなくさらりとやってのけている。あまりにも涼しい顔してプレイしているので、かえってすごく見えないのが不憫なところだが。特にFranco
Giaffredaはあのギターフレーズを弾きながら歌っているわけだが、肝心の声が不安定なため、かえってそのすごさを台無しにしてしまっている(笑)
超絶技巧の応酬なのに、なぜかその凄まじさよりも、馬鹿っぽさの方が目立ってしまうという倒錯感。まさにEVIL
WINGSらしい変態的なライヴ映像。「技術の無駄遣い」という言葉がぴったりくる一枚である。
EVIL WINGファンはもちろん、プログレメタル好きなら是非とも押さえておきたい一枚。
[2004.12.12 改稿]
3rdアルバム。1stに比べると各パートのバランスが良くなっており、キーボードやベースが際だってオーラを発しているようなことはなくなった。
曲の構成も洗練されて、聴いていて明らかに違和感のあるような気持ち悪いキメの展開やリズムチェンジなどは少なくなり、全体にきれいにひとつの曲としてまとめるようになった。曲によっては変な展開を排除して、普通のキャッチーな曲に仕上げている。そのくせ肝心なところでは魅力的なフレーズの使い捨てと複雑怪奇な展開は健在であり、以前にも増して聴いていると音の迷宮に引きずり込まれるような、馬鹿にされているような気分になってくる。
特にCDの構成がなかなか人を食っていて、最初と最後に挿入される"Colors
Of The New World"が比較的単純でキャッチーな曲にして安心させておきながら、アルバムの真ん中で唐突に唯一の10分超(18分)の長編曲Tr7"The
Secret"を挿入している。これが何度聞いてもなかなか全体の構成が把握できないほどの複雑怪奇な変態曲で、ひとつひとつのメロディはキャッチーで聴きやすいのだが、そのひとつひとつの欠片の印象が強いだけに、かえってその配置がわからなくなり、全体の構成がちっとも頭に入らないのである。
この曲に圧倒されているうちに、後のTr8〜Tr11はあっさりとした短い曲で占められていて、あっという間に終わってしまう。曲の配列からして馬鹿にしている感が漂うところにEVIL
WINGSらしさがあるといえる。
ぱっと聴いた感じの印象以上に頭を悪くする曲なので、音酔いで気分が悪くなった経験のある方は注意(笑)
[2013.10.22 初稿]
2ndアルバム。Evil Wings最高傑作と呼び声高いが、Evil
Wingsのアルバムの中でも最も入手困難になっている一枚でもある。
基本路線は前作と同じく、ひとつひとつはキャッチーでメロディアスなプログレメタルのフレーズを、とんでもない形でくっつけて変な曲に仕上げているのだが、前作に比べると曲の作りが洗練されていて、かなり上手くなっている。前作ではハイテクなわりにイマイチだったギターが改善され、相変わらずちょっと下手めのヴォーカルも、それはそれで独特の味わいになり、アンサンブルとしてのバランスが取れた形に。
と同時に変態具合もアップしていて、不協和音や前後の脈絡のない展開、もともと下手めのヴォーカルのくせにさらに変な歌い方をするなど、様々な工夫を凝らして変な曲を作り上げている。聴いていると、もともとどういう曲調だったかちっとも思い出せないのだが、忘れたころにテーマに回帰して「そういえばこんな曲だったね」と思い出させてくれるという、人を馬鹿にした展開にも磨きがかかっている。
前作はなんだかんだ言ってDream Theaterの影響下にある猫の目展開バンドのひとつだったのだが、今作の彼らは猫の目展開をやりすぎるところまでやることで独自性を出すことに成功したように思う。曲として完成度が高いわけではなく、むしろやり過ぎて崩壊気味なのだが、高度な技術を駆使しすぎてダメになっている具合を楽しむのがこのバンドの醍醐味というもの。
3rd、4thの彼らも変な曲であることに変わりはないのだが、3rd以降の彼らは上手くなっており、このアルバムのように暴走気味なところはなくなっている。このアルバムがEvil
Wingsの最高傑作と言われる所以はその辺にあるのだろう。やりたいことを詰め込みすぎて完成度を落としているからこその最高傑作なのである。
[2004.12.12 改稿]
EVIL WINGSの1stアルバム。
曲は全編通して、唐突かつやたらと変化し続ける曲調が特徴。
ひとつひとつのフレーズは非常にセンスが良く、キャッチーで、そのためぱっと聴きには単に耳に心地いい普通のプログレメタルなのだが、そんなフレーズを豪快に使い捨てて無理につなぎ合わせている曲ばかりなので、聴いているとだんだん頭が悪くなっていく感じがしてくる。
さらに面白いのは、普通バンドの中では最も映えるはずのヴォーカルはちょっと下手で、ギターも結構な早弾きをやってアピールしているのだが、それよりもむしろ脇役としてバックで曲を支えているベースやキーボードの方が魅力を感じる、逆転現象が生じていることである。
高度な技術を駆使して複雑怪奇な変な曲に仕立てようという変態的な指向と、フロントよりバッキングがオーラを放つアンバランスさが見事にマッチして、マニアックにそそられる一枚になっている。
ノれない曲が嫌いな人には勧められたものではないが、その辺を気にしない人なら割と楽しめるアルバムではないかと思われる。
[2010.7.9 初稿]
アメリカのパンクバンド、Fall Out Boyの2ndアルバム。
エモは曲が単調になりがちで、聴いていると飽きてくることが多い。Fall
Out Boyもその傾向のあるバンドで1stアルバム時には注目していなかったのだが、2ndアルバムになって急速に曲の構成がうまくなり、ちゃんと曲調に変化を付けて、ダレないように構成が工夫されるようになった。
たとえばTr2"The Take Over, The Breaks
Over"は、ダンサブルなギターリフパートとエモコーラスパートが交互に織り混ざった構成で、やっていることはシンプルなのに、凝った曲に聞こえるようになっている。
Tr7"THNKS Fr TH MMRS"もこの類で、コーラスパートだけなら特徴のない曲になるところを、イントロからヴァースにかけてシンセオーケストラを使ったり、コーラスとコーラスの間でアコースティックギターを使用するブリッジパートを挟んだりすることで味わい深い曲に仕上げている。
こういった細かい工夫がアルバム全体を通していちいち絶大な効果をあげており、結果的にものすごく高い完成度を誇るとんでもないアルバムになっているのが本作である。
ポップでキャッチーでシンプルな曲でありながら、耳の肥えた人でも満足できるだけの構成を備えた、奇蹟の一枚である。
スウェーデンの変態ギターヒーローMattias
"IA" Eklundh率いるスウェーデンのバンド。フランク・ザッパの影響を多分に受けており、リバーブの少ない音質や泥臭く無節操な曲調にその特徴がよく現れている。アメリカのバンドかと思うほど音には北欧らしさがないが、ミクスチャの仕方や複雑な構成などにその気が見られる。
マティアスは変なギターサウンドを作ることに力を入れており、どの曲にも個性的な音を使ってくる。普通に指弾きやピック弾きをしてても変だが、さらなる深淵を求めてリモコンやホースのクリップ、果てはバイブや箸など、変わった道具を使用することでも有名。
ど変態のくせにメロディアスでポップな曲を作り、聴きやすいのも特徴。
[2012.3.29 改稿]
7thアルバム。
前作では妙に整った曲を作ってきたFreak Kitchenだったが、本作は前作で培った完成度の高い構成に変態テクニカルっぷりを上乗せしており、ノリが良くて聴きやすく、そのうえ変態度も過去最高という素晴らしいデキになっている。
ちょっと聴く分にはまっとうなテクノやヒップホップ、ハードロックに見せかけて実はド変態というタイプの曲が多い。いかがわしい歌詞、怪しいサウンド、変な方向へ展開していく曲が満載なのに、あまりにも普通に聴けるので、本当にこんな代物を心地よく聴き流してしまって大丈夫なのかと不安になる(笑)
このアルバムの曲の中でとりわけ特徴的なのはTr3"Teargas
Jazz"で、オリエンタル風味の変な弦楽器サウンド(シンセっぽく聞こえるが、インストカードのクレジットからするとヴァイオリンらしい。いずれ、このバンドはシンセを使わなそう)を使用している。少し民族音楽っぽさのある曲で、そのいかがわしいフレーズの期待を裏切らないほど、いつも以上に展開がものすごいことになっている。これだけ無茶苦茶な繋ぎなのに違和感なく聞こえるのが信じられない。
変態テクニカルロックが好きな人なら、このアルバムをFreak
Kitchenのベストとして推す人も多いだろう。マニアックな嗜好を存分に満たすくらい変なのに、同時に聴きやすいという素晴らしいアルバムである。少なくとも私はFreak
Kitchenのアルバムの中で一番好き。
ただし、本作はいつもよりやや複雑な味付けの曲が多いので、ポップなハードロックとしてFreak
Kitchenを聴いている人にとってはやや重いのかもしれない。
[2012.3.29 初稿]
6thアルバム。
例によって変なギターサウンドをところどころ入れてくるものの、曲そのものの展開は比較的素直で、歌メロとギターリフで聴かせる、普通のハードロックとして聴けるアルバムになっている。
ポリリズムやテクニカルなギミックは控えめになっているため、Freak
Kitchenに変態テクニカルサウンドを求める人にとっては期待はずれの内容かもしれない。とはいえ、ちょっと聴いただけでMattiasの音とわかる個性的なサウンドは健在で、ギターソロは相変わらず変な音を出しており、普通そうに聞こえるギターリフがいちいち妙な和音になっているのもいつも通り。際立って変なことをしていないだけで、充分変ではある。
無茶な展開がなくシンプルな構成のため聴きやすく、Freak
Kitchenの曲に時折感じる冗長さがこのアルバムの曲には全くない。単純に曲として聴く分には、本作がFreak
Kitchenのアルバムでも随一の完成度を誇ると言える。しかし、この優等生ぶりになんとなく物足りなさを感じてしまうのが、このバンドの面白いところではある。
曲のデキとしては申し分ないので、Freak Kitchenサウンドが好きな人なら問題なく楽しめるはず。特に3rdアルバム"Freak
Kitchen"あたりが好きな人なら特に相性が良さそう。
[2011.6.1 初稿]
5thアルバム。
サウンドこそ現代的だが、音楽的にはブルースの血を引く、どこか懐かしいロックサウンド。わかりやすくてキャッチーなメロディラインとポリリズムを多用したリズムの面白味が特徴で、どことなくフランク・ザッパの影響を覗わせる印象がある。
明らかに変態系バンドのくせにテクニック偏重の曲になっておらず、普通に聴けるようになっているのが特徴。曲はメロディアスで非常にわかりやすく、表面的には普通のロックのようなのだが、間奏やソロで挟まれるギターの変なサウンドや瞬間的な超ハイテク演奏、妙なリズムが隠しきれない変態具合を醸し出しており、どことなく落ち着かない気持ちにさせる(笑)
一応ブルース寄りのロックが好きな人なら聴ける部類なので、60〜70年代のロックが好きな人ならまず大丈夫だと思うが、メインターゲットはフランク・ザッパやMATS/MORGANなどの変態系好きや、スティーヴ・ヴァイ、トム・モレロなどの変な音を出したがるギタリストが好きな人だろう。
[2011.6.14 初稿]
Jem Godfrey(key, vo)を中心に、IQのAndy
Edwards(ds)、John Jowitt(b)、ARENAのJohn
Mitchell(g, vo)が集結したイギリスのスーパーバンド、FROSTの1stアルバム。
キーボーディストが中心になっているバンドらしく、多彩な音色を駆使したシンセサウンドが中心となっており、歌モノもあるのものの、どちらかというとインスト寄り。
ベテランによるバンドらしく、もはや貫禄すら漂うほどの安定した楽曲になっているが、サウンドの方はかなり現代的で、アナログ的な丸みのある感じではなく、輪郭のはっきりしたクールな印象の音になっている。また、Jem
Godfreyがポップスを手がけていることもあって、きっちりキャッチーなメロディを聴かせつつ、プログレとしての手の込んだところも見せるという、面白いバランスの曲になっている。その分ちょっとプログレとして聴くと、引っかかりがなくて聴き流せてしまう感が若干あるかもしれない。
ただしTr6"Milliontown"だけは妥協無しの本気プログレサウンドなので、他の曲を聴いてがっかりするようだったら、先にこちらを聴くのをおすすめする。この曲だけ別のバンドのよう(笑)
Tr1"Hyperventilate"はYES風味のインストだが、ギターリフやデジタルシンセのサウンドはソリッドで、壮大なスケールを漂わせながらもどこか冷たい印象を与える。
Tr2"No Me No You"は、現代的なヴォーカルパートとインダストリアルな要素に、いかにもシンフォプログレらしいシンセサウンドが融合した、なんとも不思議な雰囲気の曲。どことなく日本でいうViennaあたりがやっていたことに近い。あれから泥臭さを抜いて現代的にした感じというか。
Tr5"Black Light Machine"は、序盤の印象的で静かなシンセリフ、中盤のギターソロを中心としたパート、後半のキメから始まる派手なデジロック風サウンドと、なかなか面白い起伏を見せる曲。前半と後半を別の曲としてそれぞれ作った方が良いような気もしたが。
Tr6"Milliontown"は、26分超の曲。冷たくも壮大なスケールを感じさせるブリティッシュなシンフォニックプログレサウンドにどことなくDream
Theaterっぽいフレーズが混ざったりして、独特の雰囲気を醸し出している。この一曲だけ「聴く映画」的コンセプチュアルな曲になっており、他の収録曲とは毛色が異なっている。このアルバムの本編はこの一曲だけで、あとはボーナストラックだと言ってもいいほど。
とりあえずタイトル曲の"Milliontown"は必聴。他の曲も悪くはないが、聞き比べると明らかに気合いの入り方が異なっており、そういう意味では面白い(笑)
日本のヘヴィメタルバンド。1st〜3rdの「三部作」の頃はイングヴェイやゲーム音楽の影響が強いネオ・クラシカルだったが、4thアルバム"ONE
FOR ALL - ALL FOR ONE"から、どちらかというとメロスピっぽくなり始める。
5thアルバム完成後、バンドの看板だったYAMA-B(Vo)が抜けてしまい、バンドの存続も危ぶまれたが、後任として小野正利が抜擢され、そのせいか6thアルバム"Resurrection"の楽曲にもどことなくメジャー感が生まれる。
7thアルバム"Phoenix Rising"のデキは神がかっており、メタルファンなら是非とも押さえておくべきだろう。洋楽メタルリスナーも文句の付けようがないはず。
[2015.5.26 初稿]
9thアルバム。冬の大三角の一角、ベテルギウスの名を冠しており(綴りがGALNERYUSに似せて換えられているが)、全体に北欧民族っぽい曲調の、シンフォニックな感じになっている。ただ、ぱっと聴いて思い起こされたのはANGRAのアルバム"Rebirth"だった。北欧ではなくブラジルのバンドなのだが、メロスピバンドと目されながらさほどメロスピではなく、民族音楽調のサウンドをウリにしているあたりに似たものを感じたのかもしれない。
定番のアルバムイントロ曲が短いインストなのに加えて、本作ではタイトル曲のTr7"VETELGYUS"が8分のインスト曲となっており、アルバム最後のTr12"THE VOYAGE"も5分のインスト。インスト好きとしては嬉しいところ。
また、Tr5"ENEMY TO INJUSICE"も、ヴォーカルよりもシンセストリングス、オルガンとギターによる複雑な展開のインストパートが目立つ曲で、聴き応えがある。ヴォーカルが入るところで展開が単調になるので、完全インストで良かったんじゃないかと思わないでもない。
スピードチューンよりも、テンポを抑え気味の曲に佳作が多く、特にインストのTr7"VETELGYUS"からバラード曲Tr8"ATTITUDE TO LIFE"(私はバラード曲があんまり好きでないが、この曲はいいと思う)、昔の歌謡やテクノっぽいメロディやフレーズを織り込みながら現代的な曲に仕上げているTr9"SECRET LOVE"までの流れだけで、このアルバムを買う価値は充分にあったと思わせるものがある。ただ、これらの曲は一般にガルネリウスに期待されている曲調ではないので、その点で賛否はあるかもしれない。
一方で、前半のデキはイマイチで、Tr2"ENDLESS STORY"は、スピードチューンのわりにメロディが甘ったるくて中途半端な印象(私は普段、歌詞はほとんど気にしていないが、この歌詞は聴いててうんざりした)で、続くTr3"THERE'S NO ESCAPE"も若干退屈。この曲のデキ自体はそこまで悪いわけではないのだが、アルバムの流れとしてこれは辛い。後半のリズムの変わるパートはちょっと面白いのだが。
スピードチューンよりも、インストと、一風変わったタイプの曲に面白味のあるアルバムで、そこをどう捉えるかによって評価は変わるだろう。
[2012.10.10 初稿]
8thアルバム。
いままでGALNERYUSは、アルバムを発売日に買うほどには信頼していなかったのだが、今作は予約して入手した。その期待に違わぬ安定したデキ。
路線としてはほぼ前作と同じ。挑戦的な内容ではないが、7thアルバムでせっかく高いレベルで安定してきたのだから、熟成する方向で仕上げてくるのは間違っていないだろう。
ただ、Tr9"Angel of Salvation"は15分近い曲となっており、これは挑戦的と言えば挑戦的かもしれない。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35のフレーズが引用されている。
全体に前作の方がメロディの惹きが良かったような気はするし、今作の曲はところどころ、リフレインが多くて冗長に感じる部分もあるのだが、このレベルで安定して出してくれるなら文句はない。私としてはTr7"Lament"のなかなかスリリングなメロディラインを聴くだけでもこのアルバムを買う価値は充分にあると思っている。
有名どころのメロスピバンドが軒並みプログレだのなんだのと変な方向に進化してしまった今では、このバンドの直球ぶりは貴重かもしれない。
[2012.4.17 初稿]
7thアルバム。初回限定版と通常版があり、初回版はライヴ映像を収録したDVD付き。私が買ったのは通常版で、こちらにはカヴァー楽曲の音源が収録されているCDが付いてくる。ライヴ映像が見たい人は初回版、カヴァー音源が聴きたい人は通常版を買うといい。カヴァー曲のデキはめちゃくちゃいい。
ヴォーカリストとして小野正利が加入した前作"RESURRECTION"からやたらと巧くなったガルネリウスだが、本作はさらに楽曲の完成度が高くなり、もはや「日本のメタルにしては巧い」のレベルではなく、本当に世界レベルで見ても文句の付けようのない域に達している。日本のメタルにありがちなB級臭さが全くない。その一番の要因はヴォーカルの小野正利の力に依るものと思うが(日本のバンドは演奏が巧くてもヴォーカルが下手ということが多い)、楽曲の完成度そのものも"RESURRECTION"から一段高くなっており、前作にあった綺麗にまとめすぎてパワフルさに欠けていた点が改善されている点も大きい。結果的に、繊細さとパワフルさを兼ね備えた、神がかったデキになっている。プログレメタルバンドがメロパワをやっている、現在のDGMの方向になんとなく近い。
得意のメロスピやシンフォニックメタルはもちろん、12/8拍子のTr4"Spirit
of Steel"やバラードのTr6"The Wind
Blows"など多様な曲を収録しており、それらのデキも一級品。もはやスピードチューンだけがウリではなくなった。
フレーズの端々にHELLOWEENはもちろん、X-JAPANの影響を感じさせるようなものもあって(Tr5"Scars"のヴォーカルメロディなどはモロにそんな感じ)、ある意味X-JAPANが本来やりたかったであろう邦楽メタルの形をガルネリウスが完成させたような気さえする。
このアルバムはメタルファンなら必聴。巧いのにどこか安っぽかった、かつてのガルネリウスの姿はもはやない。
2ndアルバム。このバンドのことは詳しく知らないが、アニメタルのギタリストがリーダーとなって活動しているバンドらしい。
クラシカルなメロディを多用した、スピード感のあるメタル。
内容は過剰なクラシカル哀愁旋律、スピード感、ギター、キーボードの速弾きの応酬と、どれをとっても日本人の感性にぴったりくるもので、そういう意味ではこれぞまさに和製メタルだと言える出来になっている。
実際、様々な洋楽メタルの先輩バンドの影響を見せながらも、すでに独自の音楽性を確立している。なんというか、今まで地道に日本のゲームシーンやアニメシーンで作り上げられてきた路線を、ちゃんとしたメタルとして完成させた、という感じ。
そういう意味では、今まで虐げられてきた音楽が、ついにメタルシーンへと殴り込みをかけたという感慨を与えてくれる音楽である。嬉しい限り。
ゲームやアニメの音楽に聴かれる旋律を聴くと直感的に「チープな音楽」と思いこんでしまう人には勧めないが、素直にこの手の旋律が好きな人はおすすめ。たぶん日本人にはRHAPSODYよりもこっちの方が受ける。
どんな作曲家なのかは全く知らないが、クラシックコーナーに"in
Blue"というあやしげなタイトルが目に付いたので名前買いしたもの。
タイトルから予想される通り、ブルーノートを使用した、クラシックとジャズを混ぜ混ぜした感じの音楽で、どちらかというとクラシック寄り。ドラムやベースなどの楽器は参加していないが、クラシックをベースとした楽曲の中で、ピアノやホーンセクションがジャジーな演奏をする様はなかなかに不思議な感じ。
根っこのところでまず相容れないはずのジャズとクラシックが融合している点は面白く、指揮者や譜面から指示されてジャジーな演奏をしているだけなのか、それともアドリヴなのかはちょっと気になるところである。
いずれにせよ、時に散漫になりがちなジャズと、予定運命的なところがちょっとつまらなく感じたりするクラシックの欠点を相互に補完したような音楽は、現代人の感性にはぴったりはまるような気がする。
ジャズやらクラシックが嫌いな人でも、一度聴いてみるといいかも。
キーボーディスト、永川敏郎を中心とするトリオバンド。
リック・ウェイクマンのファンというだけあって、キーボードが延々と前面に出続ける構成やバロック風味の大仰な感じなどに共通点があるが、ヘヴィネスで力強い曲調に振ってあるのが特徴的。
ギターがなくても歪んだ野太いサウンドを駆使すれば迫力ある曲が作れるんだということを証明してみせる、貴重なバンドである。
情報不足で何作目かは不明。
最近の動向は知らないのだが、一部の曲にヴォーカリストとしてAlessandro
Brunoriという人物が参加しており、少し今まで私が聴いてきたジェラルドとは趣の異なるアルバムになっている。
ギターなしのスリーピースバンドというのは、どうしても少し音が寂しくなりがちなのだが、このアルバムでは前編通して全く隙がなく、3人でやっているとは思えないほど音が厚く、贅沢な編曲に仕上がっている。
曲としては例によって、リック・ウェイクマンやEL&Pを彷彿とさせながらも独特の世界観を作り上げる、キーボード中心のプログレとなっている。シンセは昔懐かしい音も使っているが、基本的には今風になっており、単なる70年プログレの懐古主義的な音楽ではないので、その点は安心していい。
激しい部分は緊張感を漂わせ、落ち着いた箇所ではじっくりと聴かせる、メリハリの効いた構成になっている。
さすがにメンバーがベテラン揃いというだけあって、演奏も曲の構成も円熟の域に達しており、趣味さえ合えば安心して聴けるアルバムになっている。
個人的にはMeridianなどの初期作品よりも、楽曲として完成度の高いこちらの方が好み。というより、初期作品のリメイクなどを聴いて「こんなもんか」と思っていたバンドが、実はかなりレベルアップして、ある意味別物に進化していたことに少し驚いたぐらいである。
キーボード中心のスリーピースバンドで第一線で活躍しているという時点でもうすでに貴重なので、リック・ウェクマンやEL&P、もしくは桜庭統氏あたりが好きな方は是非とも聴いてみよう。
過去に発表したアルバムをリメイクした作品。……私は昔のバージョンを知らないので、こんなもんだと思って聴くしかないが。
ディストーションがかかったりしている太いキーボードサウンドを盛大に使った、大仰なナンバーを収録したアルバムである。
センスのいい曲構成に、きらびやかなキーボードワークが光る、もう日本の音楽とは思えぬアルバムである。
歌もたまに入ってたりするのだが、基本はとにかくキーボードでずっぱりのインスト。
ギターがなくても厚い音は出せるし、ロックだってちゃんと作れるんだーといった気迫の伝わってきそうな一枚である。
曲調はかなりキャッチーで聴きやすいので、プログレファンじゃなくても充分聴くに耐えるものであると思う。
キーボード好きは必須。ネオ・クラシカル好きも聴いて損はないだろう。こんなバンドが日本にあったのかと思わされること必至。
キーボードを中心としたポリフォニックで眩惑的な楽曲と、アメリカらしい明るい旋律が特徴のアメリカン・プログレバンド。基本的にインスト中心だが、アルバムにはいくつかヴォーカル曲も収録している。
プログレ人気の衰えたさなかに活動し、解散したバンドのため、かつてはアルバムが入手困難で幻のプログレバンド扱いだった。しかし、25年ぶりに復活し、2004年に4thアルバムをリリース。それに伴い国内盤も再販され、ずいぶん入手しやすくなった。
また、2007年にFrank Wyatt(Sax, Key)とStan
Whitaker(G, Vo)がOBLIVION SUN名義でアルバムを出している。こちらもHAPPY
THE MANそのもののサウンドなので、ファンの方は要チェック。
どのアルバムも安定したデキだが、おすすめは2ndアルバム"CRAFTY
HANDS"。Tr1"Service With A Smile"は紛れもなくHAPPY
THE MANの代表曲である。
25年ぶりに復活したHAPPY THE MANの4thアルバム。
バンドの中でも重要な位置にいたキーボーディストの片割れが入れ替わっていたりしてはいるものの、吹奏楽器を思わせるようなキーボードの音色、奇数拍子を多用したノリのいいリズム、広がりのある落ち着いた雰囲気など、その音はまさしくあのHAPPY
THE MAN。むしろ当時の良さを残したまま技術の方が向上している感じで、"Service
With A Smile"ほどのキラー曲はないものの、どの曲も全体に質が高い曲に仕上がっている。
特にリズムの切れ味が以前よりも小気味よくなっており、浮遊感のある曲調にもより締まりが出て、さらに聴かせてくれる仕上がりになっている。
収録曲の芸幅も広がっていて、1st系の幻想的なスローテンポ曲、2nd系のノリのいいおどけた感じの曲に加え、しっとりとしたジャズテイストのサックスがメロディを引っ張るTr8"Adrift"、HAPPY
THE MANの中では珍しいヴォーカル曲のTr9"Shadowlite"の他、Tr11"Il
Quinto Mare"では今まで聴かれなかったシンフォニックな味付けをしたプログレを披露している。
25年ものブランクがありながら、かつてのファンが聴いても失望しないであろう、このアルバムの完成度は驚異と言っていい。そのうえ単に当時のままではなく、確実に技術面で向上しているのである。
なお、HAPPY THE MANのアルバムとしては、今のところ一番日本で入手しやすいものなので、この機会に興味のある方は購入するのをおすすめする。
[2007.4.23 初稿]
1974〜76年に録音された未発表音源。音質はやや悪め。
40分近い長編曲"Death's Crown"が収録されているのが最大の特徴で、その他未発表曲1曲と、1st収録"New
York Dream Suite"の別テイクバージョンの計3曲収録。
"Death's Crown"はHTM唯一の長編曲で、曲そのものはHTMらしい地盤の上にあるものの、編曲がややクラシカルな味付けになっており、珍しくダークな曲調から入り、ナレーションを間に挟みながら進行する物語仕立ての作品。デキとしてはまあまあ、といったところだが、なぜか途中(Tr5)に2nd収録の"Open
Book"が、編曲は違えどまるごと一曲挿入されている。この曲だけデキが突出していいので、妙に浮いた印象があるのが特徴といえば特徴。
未発表のTr13"Merlin' Of The High Place"も、ややクラシカルな雰囲気を漂わせた異色の作品。曲としても面白くデキはいい。音質が良ければもっと良かったのだが。
HTMの音の中では、いろんな意味で趣向の異なった作品となっている。是非とも聴かねばならないわけではないが、ファンアイテムとしてはなかなか面白い一枚。
[2007.4.23 初稿]
1978年のライヴ音源。
ライヴハウスで行われた演奏を収録したもののようで、音質は悪い。全体にこもり気味の上、音量が上がるとアナログ特有の歪みまで発生しており、気分はさながら非公式のお宝音源(笑) デジタル隆盛の時代に発売されたCDとはとても思えない。
しかし、これが現在HTM唯一のライヴアルバムであり、おそらく現役時代の演奏はこれ以外には聴けないだろう。これだけの曲を作っていながら、こんなライヴ音源しか残っていないのが、彼らの不遇を物語っているようである。
曲は全て1st、2ndアルバムからで12曲収録。スローテンポな曲は、やはり音質のいいスタジオ音源に譲るところはあるが、Tr6"I
Forgot to Push It"などでは限界を超えて演奏が若干乱れてしまっていたりと、スタジオ音源でのクールぶりとは違ったスリリングな演奏が楽しめるのがライヴならではといったところ。
[2007.4.23 初稿]
1st発表以前の1974年の未発表音源。
さすがに昔のマスターテープからの発掘音源だけあって、けっこう音質がこもっているが、演奏はこの時点ですでにHTMのそれ。1st、2ndの正式アルバムから漏れただけあって、クオリティそのものはあの楽曲群に勝るとはいえないが、収録されていてもおかしくないデキである。HTMの曲はある程度の音質が必要なタイプなので、音がこもっているのが本当に残念。
発売当時なら「幻のプログレバンド」の音源ということで聴く価値はあっただろうが、24bitリマスターで国内盤が発売され、往年を感じさせないどころか磨きのかかった4thアルバムまで発表された今、わざわざこれを入手する必要はないかもしれない。
好きな人なら。
[2007.4.23 初稿]
3rdアルバム。
前半の曲はHTMらしい、ゆったりと落ち着いた曲が揃っているのだが、Tr7"Run
Into The Ground"からの3曲で突然急変。手数の多いテクニカルな演奏と、キメや変拍子を多用したスリリングなアップテンポ曲を連続し、まるで自らがプログレバンドであることを証明するかのように弾きまくっている。
他の曲も安定したデキで、劣るというわけではないのだが、やはり印象に残るのはTr7〜Tr9の3曲。
Tr7"Run Into The Ground"は珍しくロールを多用した手数の多いドラムが目立った曲で、他のパートの演奏の激しさもHTMのナンバーの中で随一。もちろん激しいといっても、どちらかというとジャズテイストのクールな調子なのが彼ららしいところだが。
Tr8"Footwork"は、スローテンポなジャズ調とアップテンポのHTMらしいフュージョンサウンドを急激なチェンジで織り交ぜて展開する忙しい曲。
Tr9"Labyrinth"は、もう曲名からしてHTMの「音の迷宮」を体現している。猫の目のように次々と変わっていくキャッチーなサウンドが、それでいて全く違和感を感じさせずに展開していく。まさしくプログレといった風格の一曲。
なぜかこのアルバムだけ国内盤がないが、デキは過去の二作に決して劣らない。
2ndアルバム。
聞き流すとただのフュージョンに聞こえてしまうかもしれないが、変拍子の多用と高度な演奏技術に支えられた複雑な構成をしており、おしゃれでありながら緊張感によって引き締められた曲となっている。
特に1曲目の"Service With A Smile"は技術がどうこうを言う前に、曲としてこの上なく素晴らしい。たった3分足らずの曲だが、これほど私を驚愕させた曲は他にない。イントロを聴いた瞬間に、このバンドの底知れぬ力に圧倒された。
複雑ながら耳に残るメロディライン、ふわふわさわやかで聴きやすいフュージョンサウンドを支えるめまぐるしい変拍子と高度な演奏技術。あらゆる点で恐るべき完成度を誇るアルバムである。
1stアルバム。アメリカンプログレ。ジャズを基調とした曲構成、幻想的なシンセキーボードの音色と、独特なメロディーが特徴の、おしゃれなフュージョンサウンド。
プログレらしく複雑な構成をしているが、トゲドケしい部分はないので、かなり聴きやすい部類に入るだろう。大音響でBGMとして流して聴き入れば、だんだん曲に引き込まれていく。
雰囲気としては、音楽の手品ショーといった感じで、心地よいサウンドをベースとしながら次々と高度な演奏技術を披露してはフレーズを変化させていく。全編通して眩惑的な音楽である。
激しい音楽を期待しているなら勧められないが、BGMとすれば邪魔にならず、聞き込めばそのハイテクに驚かされる、お得なアルバムである。
ドイツのメタルバンド。「ジャーマンメタル」というと彼らのようなサウンドを指す場合が多く、まさしくドイツを代表するメタルバンドのひとつと言える。
基本路線はスピード感のあるメロディアスな音楽が主体だが、10分超の音楽あり、暗くて重い音楽ありと、割となんでもやる。何年周期かでバンドメンバーと共に音楽性も変わるので、一貫してずっと好きという人より、ある周期は好きだがある周期は嫌いという人の方が多そう。
おすすめアルバムは、とりあえず無難に2nd&3rdアルバム"Keeper
Of The Seven Keys Parts1 & 2(守護神伝・完全版)"。個人的には7thアルバム"THE
TIME OF THE OATH"が好き。
ちなみに、綴りはHALLOWEENではないので注意。HELL(地獄)とHALLOWEENを引っかけてHELLOWEENである。
ハロウィンの9th。8thアルバムからハロウィンの音楽はヘヴィさを増しており、その延長線上にあるアルバムである。
7thの重厚さと9thのヘヴィさは少し趣向が異なっており、7thは音をたくさん重ねることでの重厚さだったが、9thの場合は重低音を重視することでのヘヴィさである。このアプローチはドゥーム・メタルっぽく、実際、ドゥームっぽいスローテンポ曲Tr4"Escalation
666"が存在する。
なお、バカなS.E.を使った曲は今回ないのかなーと思っていたら、最後の最後、Tr12"The
Dark Ride"でやってくれた。クスクスってなんだよ(笑)
曲そのものとしてはTr12はそんなにいいと思わないが、最後の最後でコケるあたりがいかにもハロウィンらしい。そういう意味では絶対必要な一曲である。
6th〜7thアルバムのハロウィンのファンにとっては、ちょっとヘヴィ過ぎる今回のアルバムは受け入れられない可能性があるが、この変化を私は受け入れるものである。
従来のハロウィンの良さである哀愁漂うネガポジメロディはそのままに、とにかく重低音重視で作られた楽曲は、荒削りさと繊細さが入り交じって、なかな面白い曲になっている。
Tr2"Mr. Torture"なんかはいかにもキャッチーで人気がありそうだが、個人的趣向でのイチオシ曲はTr6"If
I Could Fly"。バラード系でここまでヘヴィなのはいかがなものかと思ったりもしつつ、けっこうカッコイイんですわ。ちなみにオマケで付属するミニ・アルバムには、別バージョンが含まれている。
[2008.7.18 改稿]
ハロウィンの7th。ハロウィンのアルバムの中でも、おそらく最も音が重厚で、最も悲しみに溢れた痛切な一枚。
Tr3"Wake up the Mountain"やTr4"POWER"などに代表されるように、タイトルからして漢くささが溢れ、歌詞も単純でポジティブで力強く、分厚いギターリフでゴリゴリと弾きまくる曲ばかりなのに、なぜかその旋律はやたらと悲しげ。さらに厚い男声コーラスによる、悲しみに満ちた雄叫び(?)が多用されていることが、一段と哀愁感を引き立てている。大雨の中で泣きながら絶叫しているような、劇的な悲しみである。今で言うエモロックに近いテイストがある。
アルバム自体がヘタクソな口笛から始まるというスカした構成であり、Tr8"Anything
my Mama don`t Like"などの変な曲も挟まってはいるのだが、そういう道化を装った曲やギミックが挟まっている分、アルバム全体から醸し出される切なさは余計に倍増している。
どうしたらこんなにも悲しいメタルばかり作れるんだかわからないが、ともかくえらくネガティブな雰囲気の漂う一枚である。哀愁系メロスピが好きなら押さえておきたい。
なお、Tr3"Wake up the Mountain"には、編集ミスか何かで変な音の空白が入っていたり、ギターソロの後半部分で若干演奏が乱れ気味だったりする(おそらく意図的なギミックではないはず)。個人的にこのアルバムで最も好きな曲なだけに悲しい限り。波形編集ソフトをお持ちの方は、自分で直してみるのも一興(笑)
ハロウィンの6th。ヴォーカリスト、ドラマーの脱退を経て、心機一転して繰り出されたアルバムである。ちなみに、ちょっと暗いハロウィンへと方向転換したのが、このアルバムからである。
オープニングが"Irritation"(いらいらさせる)という名のオーケストラ曲から始まり、チープなゲームサウンドを使いまくった変な曲、Tr7"The
Game Is On"、力強いギターサウンドに哀愁漂うヴォーカルを配したTr2"Sole
Survivor"、バカ明るいTr9"Take Me
Home"、バラード曲Tr10"In The Middle
Of A Heartbeat"と、バラエティに富んだ内容になっている。
ちなみに、日本盤のみのボーナストラックには、タイトルからしてイングヴェイの真似と思われる"Grapow
Ski`s Malmsuite 1001"が収録されている。ネオ・クラシカル大好き民族のために、わざわざ収録したのだろう(笑)
Helloween最強の問題作として君臨する、5thアルバム。
守護神伝Part2の、えらいハイクオリティの楽曲に比べると、飛び抜けた名作はないが、それぞれの曲の質は高い。ここはひとつ、守護神伝のことはすっかり忘れて聴いてみよう。
曲としては第二期ハロウィンらしく、バカに明るくてキャッチー。Tr4"Crazy
Cat"のように、変なS.E.を多用したふざけた曲あり、かと思えば、哀愁を微塵も感じさせないポジポジバラードのTr6"Windmill"など、曲のキャラクターは多様。
どこにでもありそうな音楽でありながら、なぜか耳に残る印象の強さは、ハロウィンのただならぬセンスの良さを感じさせる。
ちなみに、Tr11"I believe"とTr12"Longing"は、このアルバムだけでなく、第二期ハロウィンの楽曲群の中でも珍しい種類の哀愁系。6th以降の暗いハロウィンのアルバムに入っていても違和感のないタイプである。
ハロウィンの2nd、3rdの合併版。ハロウィンの出世作である。Part1とPart2は事情により別々に発売されたのだが、後に当初の予定通り、完全版として2枚組みになって再発売された。
クラシカルな曲調かつヘヴィなギターリフで突っ走っていく爽快な曲が多数占める。
DISK1のPart1の方は、バンドとしてはまだ熟成されていない感じで、楽曲の構成もやや荒削り。
私の大好きなTr6"Future World"は、このアルバムの中で最も構成が巧み、かつ音楽にカイ・ハンセンのハイトーンヴォーカルがバッチリ決まってカッコイイ曲になっている(が、途中の謎のS.E.はなんなんだろう)と思うが、他の曲は、クラシカルな割に構成の詰めが甘いので、あまり心に響かないというのが正直なところである。
DISK2のPart2になると、バンドとしてかなり成長していることが伺える。これがPart1と同じバンドなのか?(笑) 守護神伝=名アルバムの公式は、Part2の功績が大きいと思われる……と思ったら、解説書によると、欧州ではPart1の方が評価高いのね。
楽曲どうこうよりも、とにかくドラムワークが大変なことになっているTr2"Eagle
Fly Free"がジャブをかました後は、ハネたリズムのサビの爽快感に加え、楽曲構成も巧いTr3"You
Always Walk Alone"、お得意の謎のS.E.から始まり、ダークな曲……と思わせてめちゃ明るいTr5"Dr.Stain"。
そして私が第二期ハロウィンの曲で最も好きな、単純疾走かつカッコイイ名曲Tr8"I
Want Out"(これ嫌いな人は、単にキャッチーな曲に反感があるだけだと思う)。この曲って、もっともカイ・ハンセンのハイトーンヴォーカルがハマっていると思うのですけど、いかがです?
Tr9"Keeper Of The Seven Keys"は、プログレを聴きまくっている身としてはそれほど巧いとは思わないが、それでもなかなかドラマティックな展開で、聴いていて面白い。
[2005.5.3 初稿]
1stアルバム。キーボードを使わない(ヴァイオリンの音を少しだけ使っている曲もあるが)乾いた音質に、哀愁メロディと重厚なメタルサウンドを掛け合わせた、泣きながら突っ走っているような感じの、まさしくエモロックな曲が揃っている。曲によってはアコースティックギターを併用しており、アコギとエレギのリフが重なる部分の音の厚みはものすごいものがある。
特徴的なのは疾走感とブレイクを多用した切れ味のいいリズムで、だらだらとなりがちなこの手の曲をブッた斬ることで緊張感を演出している。
知っている限り近い音なのはHoobastankだが、Hoobastankはブレイクではなく変拍子からのアプローチなので、曲の感じは結構異なる。
エモロック、特にHoobastankが好きならまず買って損なし。結構疾走感もあったりするので、疾走曲が好きな方、あとはキーボードを使わないメタルサウンドが好きな方、切れ味鋭い変なリズムが好きな人におすすめ。
アメリカのエモロックバンド。
初期の頃はキレ味鋭い変拍子を用いたテクニカルな曲をいくつか演奏していたのだが、だんだんとポップロックな方向へと行ってしまい、個人的には残念だった。
"Same Direction"、"Crawling
in the Dark"、"Out Of Control"の3曲は、Holsteinや9mm Parabellum
Bulletなど、キレ味鋭い哀愁エモロックバンドが好きな人は要チェック。
2ndアルバム。スピード感のあるハードな曲が前作よりやや多くなっている。しかしそれよりも重要な変化は、ドラムが前作より芸が細かくなり、ギターリフの作り出すリズムに絡んで、より深みのある曲に仕上げていること。
曲全体のリズムもかなり巧くなっていて、たとえば分かり易いのがTr1"Same
Direction"のBメロ(?)。さりげなく4/4×2小節を12/8+2/4で分け、緊張感のある切れ味の鋭いリズムを作り出している。
その他の曲でもこの手の変則リズムをこっそり多用しており、単なる耳に心地いいだけの曲に見せかけて、かなり緊張感のある曲づくりをしている。
表面的には前作の方が多彩な味付けの曲が多く、今作は特に似たような曲が多くてつまらないと感じる人もあるかもしれないが、私は曲ごとに趣向を変えたリズムのおかけで、今回は通して聴けた。
実は結構プログレ好きに受けるアルバムかもしれない。
1stアルバム。哀愁系メロディに、単純にして繊細なギターリフ、コーラスを絡めた楽曲が特徴。この手の音楽にしてはギターリフがハードで切れ味が良く、聴いていてダレないのがいいところ。
メロディに対するリフの絡みが巧みで、盛り上がる一瞬前のリフが最高。2〜3分の短い時間の中で、しっかりと起伏に富んだ展開を作り出している。そのくせ聴いた感じはキャッチーで全然複雑でない。
それなりに曲ごとに味付けは異なるのだが、結局は似たような曲が並んでいるので、安定している反面、通して聴くにはちょっと後半飽きるという問題がある。だが、曲そのものはどれも質の高いものになっている。
反則なのがTr1"Crawling in the Dark"で、さりげなく必殺の7/8拍子をピンポイントで使っている(笑) もう、この一曲だけで私としては買う価値ありなアルバムとなってしまった。
スウェーデン(フィンランド)のチェンバー(室内)ロックバッド。2ndアルバム発表後、99年に解散。元メンバーの数人がAlamaailman
Vasaratを結成する。
1stアルバムと2ndアルバムでは味付けが異なり、1stアルバムはひたすら気持ち悪い音を明るいノリで聴かせるもので、2ndアルバムはノリがさらに良くなり、真面目にふざけている感じの音になっている。
似たようなバンドがシリアス路線で行く中、ホイリー・コーンはややコミカルな、明るいノリの良さを持ち合わせており、特にギターリフの軽快さとヴォーカルの怪しさが特徴的である。
「偽理髪師」はわりあい広くおすすめできるアルバムだが、「昆虫偏愛」はタイトル通り、多少ゲテモノになっている。
ヴァイオリン、フルート、チェロにツインギターという怪しげな編成のバンド、ホイリーコーンの2ndアルバム。
クラシカルな雰囲気を持っており、一応真面目に音楽をやっているはずなのだが、そのクラシカルな要素がことごとくいかがわしい雰囲気を漂わせている変なバンドである。特にオペラ調で唄うヴォーカルの歌声のいかがわしさは一級品。何か詐欺集団のような音楽である。
歌詞がフィンランド語で、対訳が載っていないので内容が不明なのが残念だが(このレビューを書いた当時はできなかったが、今ではgoogle翻訳などでフィンランド語もある程度翻訳できるようになった)、特にタイトル曲である「偽理髪師」のいかがわしさは一級品(?)
ドラムで髪を切るハサミの音を出したりと、技術的に感心する部分は多いのだが、そういった高度な技術を、全て間違った方向につぎ込んでいるというかなんというか。
とりあえず一度聴いてみて欲しいアルバムである。
1stアルバム。
気持ち悪い和声、気持ち悪い展開、気持ち悪い音をふんだんに使い、それでいて妙にノリだけはいいという変な曲が目白押し。
音の作りはかなり不気味で、特に嫌悪感を引き出すSE、不快な旋律を奏でる弦楽器軍団には寒気すら覚える。しかし、同時にマヌケっぽいギターサウンドとノリのいいリズムが明るい雰囲気を醸し出しており、その恐怖を覆い隠している。
単に前衛音楽をやってしまうと、本当に限られた好き者しか聴けない、本来の音楽としての娯楽性の失われたものになりがちなのだが、このアルバムでは前衛音楽としての妥協はせずに、ノリのいいロックとしての味付けをして聴きやすくしており、この辺のバランスは絶妙である。
気持ち悪いが小気味よく聴かせる。これがこのアルバムの特色だろう。まさしくゲテモノ好きに受けそうなアルバムである。
数字・記号 A〜D E〜H I〜L M〜P Q〜T U〜Z あ〜た な〜わ VA その他(自主制作盤など)