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CDれびゅ U〜Z

数字・記号 A〜D E〜H I〜L M〜P Q〜T U〜Z あ〜た な〜わ VA その他(自主制作盤など)


UTOPIA/プログレ

 万能ギタリスト、TODD RUNDGREN率いるアメリカのバンド、UTOPIA。
 UTOPIAは、ビートルズに影響を受けたアメリカンポップスバンドとしても知られるバンドだが、初期にはプログレな曲を出しており、キーボードを多量に使った、複雑な曲をリリースしている。
 ビートルズファンなら、6thアルバム"Deface The Music"を聴いてニヤニヤすることも可能(らしい)が、とりあえず私はビートルズファンではなく、モトネタがわからずニヤニヤできないので、ここではプログレファンを対象に、初期のUTOPIAのアルバムをれびゅしている。

Ra
 1977年発表  型番 ESM CD 757(USA・1999年) 2004年現在、国内盤なし

 UTOPIA3rdアルバム。基本はコーラス、ヴォーカルが多用され、イエスっぽい雰囲気を漂わせた曲が多いのだが、今回は物語仕立ての曲などがあり、バラエティに富んでいる。
 中でもTr6"Sunburst Finish"は、キャッチーでありながらもドラム叩きまくりで、シンセとギターとコーラスが絡み合うように構成されており、出色の出来。
 物語仕立てなのは、Tr3"Magic Dragon Theatre"と、RPG調の物語仕立ての長編Tr8"Singring and The Glass Guitar"。特にTr8はいろいろシンセやドラムなどで疑似SEを作り出していて面白いが、ちょっと悪ノリしすぎかもしれない(笑) できればこういうのはアルバム一枚使って、恥ずかしげもなく盛大にやって欲しいところ。

 異色なのはオリエンタル調のイントロから始まり、重苦しい曲進行が特徴のTr7"Hiroshima"。曲としては微明るめなのだが、ヴォーカルやギターサウンドに痛々しい重みが感じられる。SEなどのギミックも多用しており、実験色の強い曲だがなかなかの出来。
 ところでRaって、ラジウムの元素記号のことなのだろうか? 邦題では「太陽神」と付いている。

Todd Rundgren's Utopia
 1974年発表  型番 ESM CD 755(USA・1999年) 2004年現在、国内盤なし

 UTOPIAの1stアルバム。アメリカンな脳天気サウンドにだまされると聞き流してしまうが、良く聴くとキャッチーな割にかなり複雑な曲構成をしている。普段は一本のメロディーを中心に曲を構成しているが、一斉に全パートが演奏される箇所は、なんとなくYESを彷彿とさせる。YESやRick Wakemanと曲調がどことなく似てるかもしれない。
 キーボーディストが複数いるらしく、かなり厚みのあるサウンドになっている。25年前の曲とは思えないほど、アナログシンセの音が新鮮な印象を与える。ギターも使われているが、一斉に鳴らされると、どれがギターでどれがアナログシンセかわからなくなる(笑)
 Tr1"UTOPIA"はライブとなっているが、その演奏時間は30分超。まさしくプログレらしい長大な作品だが、曲に谷となる部分がなく、とにかくぶっ通しでアグレッシブに攻めているため、プログレ初心者も眠くならずに全編聴けるだろうと思われる(笑)

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VENTURIA/プログレメタル

Hybrid
 2008年発表 型番 LMC242(EU・2008年)

[2012.4.16 初稿]
 2ndアルバム。ボーナスDVD付き。DVDは主にライヴ映像となっている。
 1stアルバムの楽曲はメタル寄りのテクニカルで現代的なサウンドと叙情性重視の構成が奇跡的なバランスを誇っていたが、本作は若干メロディアスさと叙情性が薄れてしまい、テクノ的な要素が増して、アメリカあたりによくあるテクニカルプログレと似たような楽曲になってしまった。
 ZERO HOURあたりが好きな人なら好みのタイプだろうが、1stアルバムの方向を期待すると期待はずれになる。

 本作で特に良曲なのはTr3"Running blind"で、この曲は1stアルバムでの彼らの良さを残しつつも、メカニカルなフレーズを取り入れてうまくバランスを取っている。アルバム全体がこのバランスで成立しているのなら、この方向でも問題なかったと思うのだが。

The New Kingdom
 2006年発表 型番 LMC173(EU・2006年)

[2012.4.16 初稿]
 フランスのプログレバンド、Venturiaの1stアルバム。男女ヴォーカリストを擁し、リズムパートがザクザクとはっきりしたリフを弾くのが特徴。
 ギタリストが結構な技術の持ち主のようで、曲の中でときおり変な高速フレーズを織り込むことがあるが、基本的にはテクニックの披露に走るタイプではなく、曲全体のバランスを重視した構成になっている。

 この手のザクザクとしたリフを弾くタイプのバンドは最近のプログレバンドに多いのだが、その多くがただメカニカルで無味乾燥な曲になってしまっているのに対し、Venturiaはキーボードワークや、男女ヴォーカルが入れ替わりながらリードするメロディなどのおかげで適度にしっとりとしている。結果的に、叙情性重視プログレにありがちなダレや、テクニカルプログレにありがちなハイテクなだけで面白みのない感じを打ち消して、良好なバランスで曲が成立している。

 テクニカルだけどテクニックに走らず、構成重視なのに長すぎたりしっとりとしすぎたりしない、こういうバランスで成立しているバンドはありそうで意外となく、よくあるプログレバンドのひとつのようでいて、その実、ちょっと聴いただけでこのバンドの音とわかるくらいに個性的だったりする。

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VIENNA/プログレ

 ジェラルドの藤村幸宏(Vo,G)、アウターリミッツの塚本周正(Key)、ノヴェラの西田竜一(B)、アフレイタスの永井敏巳(Ds)と、日本のプログレバンドからメンバーが集まって結成したスペシャルバンド、VIENNA。
 スペシャルバンドにありがちな末路として、2枚のアルバム(+ライヴ音源1枚)をリリース後は消滅しているが、そのアルバムの出来は両方とも素晴らしい。1992年に復活、1998年に3rdアルバムをリリースしている。
 80年代のポップスっぽい音楽でありながら、プログレ聴きが聞くに堪えるだけの、テクニカルで壮大なスケールの楽曲に仕上げている。

STEP INTO...
 1988年発表  型番 KICS 2895(国内盤・2002年)

 2ndアルバム。
 歌謡曲っぽさはかなり消えていて、シンフォニック度を高め、各楽器パートの音の絡まり具合もさらに複雑化、一気にプログレ度のアップしたアルバムとなっている。
 日本のプログレでは間違いなく最高峰に位置する一枚であり、個人的にはケンソーに対抗できるのはこれしかないだろうと思う。
 日本のプログレらしい、フュージョンっぽい明るめの曲調に、ヴォーカルによるポップなメロディラインをしていながら、屈折した変拍子の嵐とヴォーカルの後ろで演っているリフがとんでもないことになっている。
 ヴォーカル曲の出来ももちろんいいのだが、私としてはインスト曲であるTr2"ギャザリングウェーブ"が特に音の絡み合いがじっくり聴けて好み。

 とりあえずプログレ好きなら抑えておくべき一枚だろう。今なら入手しやすくなっている。

OVERTURE=序章
 1988年発表  型番 KICS 2894(国内盤・2002年)

 ヴィエナの1stアルバム。
 さすがに精鋭を募っただけあって、曲の出来は文句の付けようがない。80年代ポップスっぽい、さわやかで浮遊感のある感じの曲を基盤としているが、音の絡まり方やスケールの大きい展開などはまさしくプログレ。

 日本のプログレはヴィジュアル系寄りのコテコテに作った音のバンドが多くて、それが鼻につくことがあるのだが、ヴィエナは扮装こそヴィジュアル系っぽいが、音に関してはそっち系のにおいを漂わせず、洗練されたものになっている。
 私は日本のプログレを「プログレ」としては聞き込めないことがままあるのだが、このアルバムに関しては、Tr1"Follow You"を最初聴いたときに「ポップスっぽいな」と一瞬思った後は、プログレ特有の引きずり込まれるような展開に妙に納得させられた。思想や音は異なるが、YESにある雰囲気に似ているかもしれない。

 いい意味で、日本のポップスでも比較的脂ののっていた80年代の音楽をプログレへと転換するのに成功しているアルバムなので、是非とも聴いてみて欲しい。

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WARMEN/ネオ・クラシカル

 Children Of BodomのKey、Janne Wirmanのソロ活動バンド。キーボーディストが頭をやっているバンドは少ないので、そう言う意味でキーボードまにあには貴重な存在である。といっても、ソロ活動の割にはあまり暴走せず、速弾きをやるにしても全体の曲の調和を考えた上でやっている感じが見られ、ちゃんと他のメンバーにも見せ場を作っているあたりは本当にうまい。

 現在のところ企画モノといった雰囲気が強く、ゲストが多数参加して落ち着かないバンドなので、いつかは腰を落ち着けてバンド独自の音楽を創っていって欲しいところ。 

Beyond Abilities
 2002年発表  型番 TFCK-87272(国内盤・2002年)

 キーボーディスト、ヤンネ・ウィルマンのソロ活動2ndアルバム。
 ゲストとして、SINERGYのキンバリー・ゴス(Vo)がTr3、Tr7にて、STRATOVARIUSのTimo Kotipelto(Vo)がTr2、Tr6に参加している。
 基本路線は前作と同じく、キーボード主体でありながら各パートも見せ場を作っていくタイプの曲が大半。スピード感のあるノリのいいメタルが楽しめるが、今回はロータリーオルガンにピアノにハープシコードと、使用している鍵盤楽器の種類が多く、曲の方も、少しけだるい雰囲気を漂わせた曲をやってみせたり、バラード系の曲を披露したり、リックウェイクマンを彷彿させるようなピアノソロにナレーションをかぶせた曲があり、前作に収録されていた曲のフレーズを引用した曲ありと、全体にバラエティに富んでいる印象。

 いろんな鍵盤楽器が聴けて、キーボード好きな奴にはたまらんアルバムであることは間違いない。鍵盤楽器を中心にした楽曲はメタルでは珍しいので、それだけでも新鮮味が味わえるかもしれない。もちろん楽曲そのものも良質の出来である。

UNKNOWN SOLDIER
 2000年発表  型番 TFCK-87228(国内盤・2000年)

 Children Of Bodomのキーボーディスト、ヤンネ・ウィルマンのソロアルバム。
 Tr3"Devil`s Mistress"とTr6"Fire Within"は、SINERGYのヴォーカリスト、Kimberly Gossが参加して唄っているが、他の曲はすべてインスト。
 基本的にキーボード主体でありながら、ギターやドラムとの掛け合いなどもバランス良くこなしているアルバム。
 音楽としては正統派なメタルなのだが、キーボード主体のメタルというのは希少なので、けっこう新鮮な感じがする。

 キーボード好きやCOBでヤンネのプレーに魅せられた人は買って損なし。

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WHITESNAKE/ヘヴィメタル

SERPENS ALBUS
 1987年発表  型番 25DP 5231(国内盤・1988年)

[2007.6.24 改稿]
 もともとはR&Bっぽい音楽性を持っていたWHITE SNAKEだが、John Sykes(g)が加わったことでメタル感が増し、ブルースの哀愁感とメタリックな攻撃的サウンドが融合した独特な感触を漂わせるアルバムとなっている。

 この手の正統派なロックは一本調子のものが多いのだが、本作は緩急のメリハリのある叙情性に満ちており、どの曲も聴き応えがある。単純にキャッチーなだけでないこの持ち味は、洗練されたクールなサウンドを持ち味とするJohn Sykesと、R&Bの泥臭さを背負うDavid Coverdaleという、異色の組み合わせが生み出したものだろう。

 WHITE SNAKEのアルバムの中では異色の作品だが、そのデキは紛れもなく一級品。聴いていて損はない名盤である。 

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X(JAPAN)/ヘヴィメタル

 日本のロックシーンに多大な影響を与えたバンド。クラシカルなアプローチでヘヴィでスピーディで哀愁メロディという、まさしく日本人受けする要素の詰まった曲をリリースしている。哀愁メタル好きの琴線に触れるツボを押さえた曲作りはなかなか良かったりする。
 演奏自体もクラシック寄りのアプローチで、全体の調和を重視した、メタルのくせにワイルドさをほとんど感じさせない曲調が特徴。

 本来のメタルバンドとしてのX(JAPAN)を聴きたいなら、2ndアルバムの"BLUE BLOOD"がおすすめ。これとベスト盤の"X JAPAN BEST FAN'S SELECTION"を聴けばほぼ万全といえる。

(註:このバンドはX→X from JAPAN→X JAPANと名義変更が行われているが、ここではまとめてX(JAPAN)と表記している)

X JAPAN BEST FAN'S SELECTION[ベスト盤]
 2001年発表  型番 UPCH-1137(国内盤・2001年)

 ファンによる投票で選ばれた12曲が収録されたベスト盤。

 X(JAPAN)の音の特徴は、バンドメンバーの変な格好に似合わず、メタルのくせに妙にきっちりとした、整合性のある曲に仕上がっている点である。
 初期の頃はそのクラシック音楽にも通じる几帳面さとHELLOWEENばりのスピード、ヘヴィネスな曲調が融合して奇妙なメタルの触感を作り出していたが、このベスト盤には1st〜2ndアルバムを特徴付ける曲はほとんど収録されておらず、3rdアルバム以降の、歌謡曲としての要素を付加して、ややメタル色を減衰させたピアノパートや哀愁メロディを強調した曲が大半を占めている。
 几帳面な曲調の上に歌謡曲と混血してしまったことで、ちょっとワイルドさの点では物足りないという印象はぬぐえないのだが、この変な混血具合の面白みは独特のものがある。
 たくさんのロックを聴きまくった後にX(JAPAN)に帰ってきて、初めてわかる屈折具合がこのバンドの魅力の一端なのかもしれない。

 そんな甘いメタルが多数占める中、やはり異色なのが"SCARS"と"ART OF LIFE"だろう。
"SCARS"は一発聴いただけでhideが作ったとわかるパンク色の強い曲。X(JAPAN)本来の、カチっとはまった整合性のあるメタルとは異なるワイルドな色を出していて、アクセントとしての役目を果たしている。

"ART OF LIFE"はオーケストラまで動員して作り上げた約29分の大曲。ひとつの曲としての整合性という点ではちょっと難があるような気もするのだが、キラキラと豪快に使い捨てられる(X JAPANとして期待されている)メロディ達の応酬からピアノの乱打へと移行する狂いっぷりは見事。制服を着た不良みたいなイメージのあったX(JAPAN)の曲の中で、(hideの曲を除けば)唯一ブチ切れた瞬間を見せたのがあのピアノ乱打だったような気がする(笑)

BLUE BLOOD
 1989年発表  型番 32DH 5224(国内盤・1989年)

[改稿 2010.8.1]
 2ndアルバム。3rdアルバム以降、メジャーを意識しすぎて歌謡ロックっぽくなってしまうX JAPANだが、この頃はまだしっかりとメタルをやっている。
 HELLOWEENを彷彿とさせるジャーマンメタル風の演奏と、ネオクラシカルのようなクラシック風味のかっちりとした構成美が混ざり合った、面白い作品。

 ジャーマンメタルの影響を感じさせる演奏は結構激しいのだが、同時にクラシックの影響が強いせいか、漢臭さはなくて、妙に神経質で整然とした印象があるのが何とも妙。ジャーマンメタルとネオクラシカルのちょうど中間くらいのバランスになっている。

 その中にあって異色なのは、Hide/Taiji作曲によるTr8"Xclamation"とHide作曲のTr10"Celebration"だろう。"Xclamation"は2部構成の民族音楽調のインストで、内容の割に尺が足りないせいで中途半端な作品になっているが、曲のアイデアや完成度が抜群に高くて、倍くらいの尺で作ってくれれば素晴らしい作品になっただろうに、と思わされる。
"Celebration"はジャーマンメタルではなくてストレートなロック作品になっているが、完成度の点ではこの曲が本アルバムで最も優れていると私は思う。ハイトーンヴォーカル&ハイスピードチューンの"Blue Blood"や「紅」よりも、この曲の方がパワフルで音に厚みがあり、ヴォーカルともマッチしていたりする。

"ART OF LIFE"のせいで影が薄くなってしまっているが、このアルバムにもTr11"ROSE OF PAIN"という約12分の大曲がある。名曲とまでは思わないが、時折見せるクラシカルなメロディラインと艶のある中盤のピアノはなかなかのもの。ただし、こういう長い曲を楽しむには、このくらいの尺の曲に慣れた人でないとダメかもしれない。

 ジャーマンメタルが好きだけど、ネオクラシカルの方がより好き、という人がちょうどストライクゾーンかもしれない。

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XENAKIS/前衛管弦楽曲

orchestral works-vol III
 2002年発表  型番 1C1068(フランス・2002年) 国内盤あり

 代表曲「シナファイ」を含む、クセナキスの3rdアルバム。オーケストラを使ったノイズ音楽と言えば、その音楽性がわかってもらえるだろうか。数学理論を用いてコンピューターに即興音楽を作らせて、それを人間が弾いている、と言った感じである。
 Tr1「シナファイ」は、弦楽器の悲鳴や、適当に弾いてるようにしか聞こえないピアノの怪しげな旋律(ちゃんと楽譜がある)が、無機質的な冷たさを醸しだし、言いしれぬ恐怖感を抱かせるヤバげな曲。ピアノのとんでもない演奏や、引きちぎれるような弦楽器の音色は、人間がコンピューターに絶望的な戦いを挑んでいるようにも聞こえる。

 聴いていると気が変になりそうな曲ばかりだが、音楽としてちゃんと聴けるぎりぎりの音楽性は確保されており、無機質で数学的な音の集合を、音楽という有機物として完成させている点はある意味すさまじい。おそらく、コンピューター任せで適当に作っても、ここまでちゃんと聴ける音楽にはならないだろう。どうやって作っているのか非常に気になるところ。
 変態さんな音楽が大好きな方は、一度試してみるといいかもしれない。

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YES/プログレ

 イギリスのシンフォニック・プログレバンド。
 大仰な歌詞、大仰な曲の展開で、吸い込まれるような音楽世界を構築する。特にコーラスの使い方が巧みなのが特徴。後半になるに連れ、各パートが収束し、徐々に壮大なスケールになっていく雪だるま式展開で、聴衆をいつの間にかYESの音楽の虜にしてしまうのである。
 9thアルバム以降は、大作志向は影を潜め、ポップス性を増していくようになるが、音楽性そのものはイエスらしい、微妙なけだるさを残している。

 一般に代表作とされるのは5thアルバム"Close To The Edge(危機)"。10分超の長い曲を聞き慣れていない方は、8thアルバム"GOING FOR THE ONE(究極)"から入った方が馴染みやすいかもしれない。

90125(ロンリーハート)
 1983年発表  型番 AMCY-4042(国内盤・1996年)

 日産バサラのCMで使われていた曲"OWNER OF A LONLY HEART"を含む、11thアルバム。
 私はずっとこのアルバムの名前は"Lonly Heart"だと思っていたのだが、正式名称は"90125"。"Lonly Heart"は日本で勝手に付けた名前だった。

 音楽としてはプログレという感じはないが、John Andersonの独特の歌声を中心に、YESらしい広がりのある音楽を作っており、これはこれで悪くない。
 Tr5"Chinema"は2分程度のインストだが、壮大なスケールで演じられていた、かつてのYESの精神がきちんと今でも引き継がれていることをよく表している。
 Tr1"Owner of a Lonly Heart"は、イントロがディスーションギターから始まって肩すかしを食らうが、Aメロが始まってしまえば、YESらしい広大な空間を感じさせる曲へと変貌する。プログレ風味はないが、中途半端に寂しげで中途半場に盛り上がる、絶妙のさじ加減が面白い。

 聞きやすいアルバムの割に、YESの魅力は継承されている。捨て曲もあるが、曲の質は安定しており、おすすめできる一枚だろう。

GOING FOR THE ONE(究極)
 1977年発表  型番 AMCY-6283(国内盤・2001年)

 8thアルバム。リック・ウェイクマン再加入で、曲の壮大さが強化されている。わりと短い曲でまとめられており、聴き易い。
 ヴォーカルとパイプオルガンとギターが絡み合うように曲を構成するTr3"Parallels"は、リック・ウェイクマンが再加入したからこそ生まれたナンバーだろう。
 イエスファンの中でも賛否両論のアルバムだが、個人的にはかなり好きである。

 どの曲も、バカが付くほどやたら壮大なスケールを感じさせるものばかりだが、特に1曲目の"Going For The One"は「究極」という大げさなタイトルに、イモっぽいイントロから始まり、バカバカしさ爆発でありながら、だんだんと音がまとまってきて、まさに曲名通り1点へと収束していく様は圧巻。最初が腰砕けであるが故に感じさせる壮大さがある。

Tales from Topographic Oceans(海洋地形学の物語)
 1973年発表  型番 AMCY-6296/7(国内盤・2001年)

[2007.6.24 改稿]
 YESファンはもとより、YESのメンバーからも賛否両論の6thアルバム。2枚組で20分×4曲=80分という、YES史上でも最も壮大なスケールで綴られるロック交響曲。
 長いと感じる人もいるだろうが、そもそも代表曲の"Close To The Edge"が19分という尺なので、YESを聞き慣れている者にとっては、それほど無理せず聴くことが可能である。

 実際、緻密な構成でありながら、即興性を感じさせる音楽であり、聴いていてもあまりダレない。曲全体のテーマなどは何度か再現されるが、それが予定調和の型にはまった感じではなく、「偶然戻ってきた」と感じさせるところが巧みなのである。
 また、各フレーズも結構キャッチーなもので印象的。おいしいフレーズを次々に披露していく様はなかなかに豪勢で、YESの音が好きなら飽きるということはないだろう。
 また、次々と現れては消えていく旋律の中には、たとえばTr1「神の啓示」の17:00あたりでは、ちょっと聴いただけでもリック・ウェイクマンだとわかる、クセのあるキーボードソロプレイが挟まれるなど、面白い趣向が数々なされている。

 とかく長いことだけが強調されるアルバムだが、実際は20分×4曲。YESの音楽としては許容範囲内である。ぜひとも気軽に聴いてみて欲しい。

YES SONGS [ライヴ音源]
 1973年発表  型番 AMCY-4030(国内盤・1996年)

 ライヴ音源、2枚組。イエスの最高のステージを収めたCDで、ライヴそのままではなく、編集されている。
 YESのライヴではおなじみのストラヴィンスキー「火の鳥」から、突如として始まる"Siberian Khatru"。心憎い演出から次々と演奏される曲は、どれもイエスを代表するもので、ベストアルバムとしての機能も有している。イエス初心者はこれを聴くといいかもしれない。
 音質も非常によく、ライヴ独特の雰囲気も味わえる。
 なお、リック・ウェイクマンのソロパートでは、「ヘンリー8世〜」からの抜粋も聴ける。

 荘厳YESの最盛期のライヴを、さらにおいしいテイクだけを集めた音源。
 YESの音楽が好きなら、まず損はしないので、ぜひとも押さえて欲しい。

CLOSE TO THE EDGE(危機)
 1972年発表  型番 AMCY-4029(国内盤・1996年)

[2007.6.24 改稿]
 5thアルバム。YESの最高傑作として名高い。
 収録曲は3曲。Tr1"Close To The Edge"は19分、Tr2"And You And I"は10分の長編曲となっている。最もコンパクトで馴染みやすい曲であるTr3"Siberian Khatru"でも9分近い尺。

 どの曲でもそれぞれのパートが激しく主張しつつぎりぎりのところで調和するという緊張感を漂わせている。
 各パートが次々と印象的なリフを奏で、それが多重に積み重なっていくインストパートと重厚なコーラスが織りなす楽曲は過剰なほどに壮大なスケールで、何とも言えない陶酔感がある。
 大編成オーケストラを使った曲とはまた違う、宗教的ですらある静謐さと大仰さを兼ね備えた独特の音楽世界がここには存在している。この感触は未だに独特なもの。

 ただ、静かな展開の多いTr1"Close To The Edge"は、現代のメタルの音に慣れた人がいきなり聴いても良さが分からないかもしれない。Tr3"Siberian Khatru"から入って、YESの音を馴染ませてから聞き込んだ方がスムーズに入れるように思う。

FRAGILE(こわれもの)
 1971年発表  型番 AMCY-4028(国内盤・1996年)

 4thアルバム。YESのメンバーが全員1曲は一人で曲を書き、見せ場を作っている。
 才能あるバンドマン達がしのぎを削る様は、まさに「こわれもの」というタイトルに象徴されている。
 Tr2"Cans and Brahms"ではKeyのRick Wakemanがブラームスの交響曲第4番からの抜粋を全パート鍵盤楽器で作成、Tr3"We Have Heaven"ではVoのJohn Andersonがソロとコーラスの絡み合いを、Tr5"Five Per Cent For Nothing"ではDsのBill Brufordが、断続的なフレーズによって構成される小品を、Tr7"The Fish"ではBのChris Squireが、独特の音響とベースサウンドで、深海をイメージさせるような曲を、Tr8"Mood For Day"ではGのSteve Howeが、スパニッシュなアコギのソロを披露。
 そして最後のTr9"Heart Of The Sunrise"では、全てのパートが絡み合うように曲が展開されていく、まさにこのアルバムのラストにふさわしい趣向となっている。

 バンドメンバー全員が曲を書いているのも珍しく、そのためよく「統一感がない」といわれるアルバムだが、この面白いコンセプトは、すべてのパートがぎりぎりにせめぎ合う、YESの音楽の性質をよく表しているといえる。
 曲はそれなりに短く、YES初心者にもおすすめの一枚。

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YNGWIE MALMSTEEN/ネオ・クラシカル

「光速のギタリスト」の異名を持つ元祖速弾きギタリスト、Yngwie Malmsteenの率いるバンド。Rising Forceというバンド名があるようなのだが、あってなきがごとし。
 クラシック寄りの曲でありながら、プログレのように複雑な曲にせず、キャッチーなヘヴィメタルとして創り上げる、ネオ・クラシカルの王道を行く曲を安定してリリースし続けている。

 おすすめはとりあえず1stアルバム"RISING FORCE"だろう。最もインギーが独特な音楽性を持っていた頃の音である。

ODYSSEY
 1988年発表  型番 POCP-2312(国内盤・1994年)

 4thアルバム。
 イングヴェイのいい曲はたくさんあるのだが、当たり曲は各アルバムに1,2曲ずつ散らばっていることが多い。つまりインギーは曲のデキにかなりムラのあるアーティストだと思うのだが、その中でも奇跡的にアルバム全体として良いと私が個人的に思うのが、この「オデッセイ」である。

 ヴォーカル、キーボード、ギターが非常にバランス良く構成されており、緊張感と重厚な完成度を思わせる。
 曲調もただ元気がいいだけでなく、北欧系お得意の哀愁サウンドに、とげとげしい技術先行のソロも少なく、落ち着いたデキとなっている。

RISING FORCE
 1984年発表  型番 POCP-2309(国内盤・1984年)

 イングヴェイの1stアルバム。インストが多く、キーボーディストのJens Johanssonと共に速弾き合戦しまくりな一枚。

 このアルバムの聴きどころは、Tr1"Black Star"とTr2"Far Beyond The Sun"。まず一番に聴いて衝撃を受けるのがギターの音色の方だろう。
 ヴァイオリンと聞き間違えるような艶やかな音色は一聴の価値あり。私は速弾きよりもこれに驚いた。
 この艶やかな音色は初期の頃しか聴くことのできないもので、今となっては貴重な音源となっている。

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